スティルワイン|リカーバード【醸造酒】

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スティルワイン

概要

 

ワインとは、「ぶどうから作られる醸造酒」を指しますが、これは狭義の意味での定義で、広義の意味ではぶどう以外の果実などから作られる醸造酒全般もワインと呼び表します。

ですから、ぶどうから作られる醸造酒とそれ以外の果実から作られる醸造酒を区別して呼ぶ際には、後者をより正確に「フルーツ・ワイン」と呼ぶ場合もあります。

ぶどう以外のフルーツ・ワインとしては、りんごから作られる醸造酒「シードル」が有名ですね。

これらの区分の仕方は、ブランデーと同様です。

ワインの発祥は、紀元前6000年ころのコーカサス地方(黒海とカスピ海に挟まれた地域)とされ、新石器時代のジョージア(旧呼称グルジア)でワインが飲まれた痕跡が残っています。

このため、ワインは「人類が出会った最も古い酒」とも言われており、旧約聖書の「ノアの方舟」のくだりや、あの有名な「ハムラビ法典」の文献にも記されているとされます。

ちなみに日本に最初に伝来したのは16世紀、キリスト教布教のために日本に訪れたフランシスコ・ザビエルが大名に献上したワインだそうです。

※「人類最古のお酒」については、より正確に言えば「ミード(蜂蜜と水から作った醸造酒」だとする説が有力で(これは当時のミードが、自然発生的に生じる原始的発酵飲料だったことを考えれば自然なことなのですが)、その起源は14000年前にまで遡るとも言われます。

その意味ではワインよりはるかに古い歴史があるのですが、ミードも作り方がワインと似ていることから、カテゴリ的にはワインの一種とされることが多く(ハニーワインと呼ばれることもあります)、ここでは上記のように表現させていただきました。

この地からワインの生産は世界に広がっていき、現在では世界各国で愛飲されるお酒となりました。

他のお酒同様、ワインの世界でも醸造技術の向上がめざましく、ワインの品質もますます上がっています。

現在では、デイリーワインのような安価なワインであっても、もはや「まずいワイン」を見つけるほうが難しくなってきています。


 

製造方法による区分

 

ワインは、その製造方法により大きく4つに区分されます。

上述のぶどう以外の原料から作る「フルーツ・ワイン」を1つのカテゴリとして、5分類とすることもありますが、ここでは4つにさせていただきました。

区分としては以下のようになります。

1.スティル・ワイン(非発泡性ワイン)

一般的に「ワイン」と呼ぶ場合は、この「スティル・ワイン」を指すことが多いです。

逆に発泡性ワインを呼ぶ場合には、後述のように「スパークリング・ワイン」と言い表します。

これらのワインは、その色調により赤・白・ロゼワインに分けられます。(赤・白・ロゼについては後述します。)

度数は国によりそれぞれ差がありますが、概ね10度から14度未満に収まります。

度数として一般的なラインは、12度から13度前後のワインが多いですね。

また、瓶詰めの時期を非常に早くすると、瓶の中で緩慢な発酵を続けて(これを後発酵と言います)、炭酸ガスがワインに溶け込むことがあります。

これを「弱発泡性ワイン(クラックリング・ワイン、3気圧以下)」と呼びます。

ワインは全ての酒類の中で、最も原始的なメカニズムで造られるお酒です。

これは、原料となるブドウに糖分(ぶどう糖=グルコース、果糖=フルクトースなど)を多く含んでいるためで、ある程度の条件を満たせば、自然とアルコール発酵を行います。

だからこそ原料となるぶどうの品質が重要で、ワイン作りの8割はぶどうで決まるとも言われる所以です。

 

■赤ワイン

原料となるぶどうは、濃色系(黒色系)のぶどうを使用します。

このぶどうのうち、苦みの強い茎の部分を取り除き(除梗)、そのあと果肉、果皮、果汁や種子などと一緒にタンクに入れて、酵母を使って発酵させます。

発酵が進むとアルコールが生成し、果皮からは赤ワインの色となる赤色色素が生じ、また種子からは渋みの成分となる「タンニン」が抽出されます。

高級な赤ワインは、長期間の樽熟成を経ることが多いです。

 

(赤ワインの主な造り方)

●グリーンハーベスト

まだぶどうの実が青い時期に、余分な房を取り除く作業のことを「グリーンハーベスト」といいます。

この作業を行うことにより収穫量は当然減りますが、残された房に栄養が十分いきわたって、糖分が凝縮されたぶどうとなります。

 

①除梗(じょこう)

・破砕原料となる濃色系(黒色系)のぶどうのうち、苦みの強い茎(果梗)の部分を取り除きます。

この作業を「除梗(じょこう)」と言います。

 

●全房発酵と完全除梗

上記のように、果梗を完全に取り除いて発酵させる手法を「完全除梗」とも呼びます。

1950年代に入って除梗機の性能が向上するようになってから、除梗を行う作り手が増えてきて、現在ではほとんどの生産者がこの手法を取り入れています。

一方で、こういった除梗を行わず、そのままのぶどうを使って発酵させる手法を「全房発酵」といい、クラッシックなやり方と言われています。

かつては、クリアなワイン造りのためには除梗は不可欠と考えられていましたが、近年ではワインに複雑性を与えるために敢て「全房発酵」を行う生産者も増えてきています。

通常、赤ワインの醸造においては、収穫した黒色系ぶどうを破砕機に入れて果実 を破砕し、同時に上記の除梗を行います。

 

②アルコール発酵(主発酵)

破砕された果実は、果肉・果皮・果汁や種子などと一緒に発酵タンクに入れられます。

この液体のことを「ムスト」あるいは「マスト」と呼び、果皮や種子などの固形部分は、「ポマース(ポミス)」といいます。

この際に、ワイン専用の酵母を添加して、アルコール発酵を開始します。

このように、果皮や種子を一緒に仕込む醸造方法を「マセラシオン・ペリキュレール(かもし発酵)」あるいは「スキンコンタクト」と言い、これが赤ワイン醸造における特徴だと言われています。

ペリキュレールとは「果皮の」と言う意味で、単に「マセラシオン」と呼ぶこともあります。

また多くの赤ワイン製造において、破砕された果実に加えて「二酸化硫黄(別名亜硫酸)」が添加されます。

これは、微生物の働きを抑制し、合わせてワインの酸化を防ぐ目的で入れられるものです(酸化防止剤)。

通常二酸化硫黄は、その効果を失わないために、何回かに分けて投入されます。

 

●マセラシオン・カルボニック

収穫したぶどうを潰さずに、丸ごとタンクに入れて、その中を炭酸ガスで満たします。

この状態で数日間置いておくと、果皮の色素が出やすくなり、鮮やかなルビー色でフレッシュな果実味の味わいを持った赤ワインになります。

この手法を「マセラシオン・カルボニック」と呼び、これは「ボージョレー・ヌーヴォ-」などで使用される特殊な製法です。

このアルコール発酵中に、果皮からは赤い色素(アントシアニン)が、また種子からは苦味を与えるタンニンが出てきます。

赤ワインが果肉や果汁以外に、種子や果皮も一緒に発酵タンクに入れて仕込むのはこのためです。

 

●ピジャージュ

発酵がすすむにつれて、果皮や種子などの固形物は二酸化炭素(炭酸ガス)により押し上げられ、発酵タンクの上面に浮き上がってきます。

これをこのまま放置しておくと、固形物が液面を覆ってしまいワインが空気に触れられず、十分な発酵ができません。

これを防ぎ、上記のマセラシオンを効果的に行って成分を抽出するために、液中に浮いた種子や果皮を、櫂(かい)で突いて沈めて、発酵タンクの上部と下部をよく攪拌する必要があります。

このように人の手で櫂を使ってかき混ぜる手法を「ピジャージュ」と呼び、ブルゴーニュのピノ・ノワールなどでよく用いられます。

 

●ルモンタージュ

ピジャージュと同じく効果的に成分を抽出するために行う作業で、こちらはポンプなど機械を用いて発酵タンク内のワインを循環させる方法です。

ピジャージュが人の手や目視などにより、より丁寧にムラをなくせるのに対し、ルモンタージュは機械で自動的に攪拌を行うため、液体上部に固形物が残る場合もあります。

アルコール発酵は、約10日から20日ほどで終了します。発酵温度は約25度から30度です。

 

③圧搾

発酵の終わった醪について、果汁部分である若いワインと、固形部分である種子や果皮などを分離します。

その際、固形部分の中にもワインは残っているので、これを圧搾機にかけてワインを搾り取ります。

この果醪(果実)に圧力をかけて絞る過程を「圧搾」と言います。

この際、圧力をかけずに自然と流れ出た液体を「フリーランワイン」「フリーランマスト」と呼び、高級ワインの原料として使用されます。

一方、残った固形部分に圧力を加えて得られた液体が「プレスワイン」「プレスマスト」で、こちらは主としてブレンド用のワインの原料として使われたり、フリーランワインと混ぜられたりして使われることもあります。

この圧搾のタイミングですが、赤ワインが発酵後に圧搾を行うのに対し、白ワインでは発酵前に行います。

この点が、赤ワインと白ワインの製法上の大きな違いとなります。

 

④マロラクティック発酵(MLF)

マロラクティック発酵とは、主発酵(アルコール発酵)の後に行われるもので、赤ワインにおいてはほとんどのワインでこの発酵を行っています。

ちょっとおさらいになりますが、主発酵(一次発酵とも言います)とは、ぶどうの中に含まれる糖分をワイン酵母によって「アルコール(エタノール)」と「二酸化炭素」に分解する化学反応です。

この主発酵の後、果汁やワインに含まれるリンゴ酸を乳酸菌によって「乳酸」と「炭酸ガス」に分解させる発酵を「マロラクティック発酵」と呼びます。

リンゴ酸(Malicacid)と乳酸菌(Lacticacid)による発酵(Fermentation)であることから、Malo-LacticFermentationの頭文字をとって、「MLF」と略されることもあります。

「二次発酵」や「後発酵」と呼ばれることもあります。

マロラクティック発酵を行う目的ですが、リンゴ酸は乳酸に比べると酸味が強く、そのため鋭い酸味を感じさせます。

この発酵を経ることによってリンゴ酸は乳酸に変わり、味わいは酸味の角が取れてまろやかになります。

また、マロラクティック発酵の過程において様々な化合物が作られるため、味わいに複雑性が増します。

更に、リンゴ酸に比べると乳酸は微生物に食べられにくい特徴があり、これによりワインの品質が安定し、長く熟成が可能になります。

●ボージョレー・ヌーヴォー

その年の新酒であるホージョレー・ヌーヴォーは、複雑性よりもフレッシュさが求められることが多く、このマロラクティック発酵を行わない場合が多いです。

ただ、作り手やその年のワインの出来如何、あるいは熟成を目的として作られたボージョレーについては、この工程を行う生産者もいます。

 

⑤樽・タンク熟成

発酵終了後の赤ワインは、木樽あるいはステンレスタンクなどに移されて、熟成させられます。熟成期間は、数日間から数年に及ぶものまで様々です。

できたばかりの赤ワインは、酸味や渋みが強いことが多々有り、これを木樽やステンレスタンクで貯蔵することにより風味を整えます。

木樽で貯蔵するほうがワインに複雑な香味や味わいが生じることが多いですが、近年では味わいのコントロールがしやすいステンレスタンクを使う生産者も多くなってきています。

熟成前には鮮やかな赤紫色だった液体が、熟成を経ることで落ち着いた色調になり、芳醇な熟成香(ブーケ)が出てきます。

 

・ブーケとアロマの違い

ブーケ、アロマともにワインのテイスティングで盛んに使われる言葉ですが、厳密に言えば違いがあります。

「アロマ」とは果実香のことで、ぶどう本来が持つ香りや、発酵過程で生じた果実の香りを指します。

一方、「ブーケ」とは上記のように熟成香のことで、ワインの熟成過程で生じた香りを指します。

更に、アロマは「第一アロマ」と「第二アロマ」に区分され、「第一アロマ」は、ぶどうそのものの持つ香りのことを言い、「第二アロマ」は発酵・醸造に由来する香りのことを言います。

この流れで、ブーケは「第三アロマ」とも言われることもあります。

もっと具体的なテイスティング方法で言いますと、第一・第二アロマは、ワインをグラスに注いだ段階で感じ取られる香りだと言われます。

これに対し、ブーケ(第三アロマ)は、グラスにワインを注いだ後、グラスを回して空気に触れさせることで立ち上がってくる香りです。

このグラスを回す行為(これを「スワリング」といいます)、年代物のワインの場合、やり過ぎると繊細な香りが消えてしまうリスクがあり、要注意です。

発酵を終えて熟成を経たワインには、果実由来の浮遊固形物(酒石※やたんぱく質など)が残っている場合があります。

このワインを静置して、固形物が沈殿した段階で上澄みを別の容器に移し替えて、固形物と液体を分離します。

この作業を「滓引き(おりびき)」と呼びます。(フランス語では「スーティラージュ」と言います。)

 

※「酒石」

ぶどう特有の酒石酸が、ワインの中に含まれるカリウムと結合して固形化する場合があります。

これを「酒石」と言います。

 

⑥清澄・濾過

滓引きを終えたワインは、沈殿物とは分離されていますが、まだ濁りを生じているケースがあります。

これをクリアにするために、清澄剤(赤ワインの場合は卵白やタンニン、ゼラチンなど)を加えて2ヶ月ほど静置し、更に細かい浮遊物を清澄剤に付着させた後に沈殿させます。

この作業を「清澄」あるいは「清澄化」と言います。

フランス語ではこれを「コラージュ」と呼びます。日本酒造りではこの作業を「オリ下げ」※と呼びます。

 

※「オリ下げ」の詳細については、日本酒のページをご参照ください。)

 

また、除菌を目的として、ワインを細かいフィルターや遠心分離機などで濾過して、微生物を取り除くことがあります。

更に、日本酒の「火入れ」※同様、ワインに含まれる酵母や乳酸菌を加熱して殺菌する手法もあり、この工程は「パスツーリゼーション」と呼ばれます。

これはフランスの細菌学者のパスツールが考案したことからつけられた名前で、広く「低温殺菌」を意味します。

しかしながらこの方法は、ワインの持つ繊細な味わい損ねてしまうデメリットもあり、現在ではほとんどのワイナリーで濾過による除菌の手法をとっています。

 

※「火入れ」の詳細については、「日本酒」のページをご参照ください。

 

・生ワイン

上記の工程、加熱も濾過も施されていないワインを「生ワイン」と呼んでいますが、「生ワイン」に厳密な定義がある訳ではありません。

多少の濁りが生じていることもありますが、ぶどう本来の果実味やフレッシュなワインの味わいが楽しめます。

逆に、加熱や濾過がされていないことから品質の劣化も早く、基本的には栓を開けたら飲みきってしまうほうがいいと思います。

 

⑦瓶詰め

上記のような工程を経たワインは、多くはガラス瓶などの容器に詰められて、コルク等で栓をしてから出荷されます。

廉価なワインに多く見られることですが、最近ではガラス瓶だけではなく、ペットボトルや真空パックに入れられたワインを箱に詰めて販売されているケースもあります。

この形態で売られているワインを「バッグ・イン・ボックス(BIB)」と言います。

また、ガラス瓶で出荷されているワインについても、やはりデイリーワインの多くは、コルク栓ではなくスクリューキャップのタイプが多くなってきています。

 

⑧瓶熟成(瓶内熟成)

ワインは、醸造酒の中でも瓶内で熟成して味わいが向上するお酒の代表格です。

最近では蒸留酒もボトルの中で熟成して美味しくなるというのが定説ですが、やはり寝かせること(熟成させる)で美味しくなるというのは醸造酒が中心ですね。

ただ、どんなワインでも熟成させたほうがいいのかというとそういう訳でもなく、やはり熟成を前提とした「熟成タイプのワイン」と、なるべく新鮮な状態で飲んだほうが美味しい「早飲みタイプのワイン」に分かれます。

「熟成タイプのワイン」は高級ワインに多く、きちんとした環境で正しく熟成させたならば、味わいのピーク(完熟)を迎えるまでに数十年を要するようなワインもあります。

逆に「早飲みタイプ」のワインは、いわゆる「デイリーワイン」に分類されるようなワインで、文字通り「毎日飲でも家計に差し支えない」ような安価なものです。

このタイプのワインはなるべく早く飲みきってしまったほうが美味しく飲めるワインで、ほとんどのワインはこちらにあたります。

また、赤ワインは白ワインに比べると長期熟成(長熟)タイプのワインが多いと言われますが、これはその製法の違いに理由があります。

赤ワインは、上述のように一次発酵の際に仕込む醪の中に、果汁や果肉に加えて果皮や種子も一緒に入れて発酵を行います。

その際、種子からは苦味成分となるタンニンが作られる訳ですが、このタンニンが熟成を続けるための栄養素となるため、赤ワインに長期熟成タイプが多いと言われています。

 

・ワインセラー

高級なワインを手元において熟成させ、飲み頃になった時点で楽しみたいというワインラバーも多いかと思います。

上記のように長期間丁寧に熟成させるためには、きちんとした環境下に置く必要があり、温度や湿度、光や振動などを適切にコントロールする必要があります。

そのための最適なツールがワインセラーで、もちろんワインを横に倒して、コルクに常にワインが触れているという環境も確保されています。

少々値段ははりますが、せっかく買った貴重なワインを美味しくいただくためには必要なアイテムですね。

 

(ポリフェノールとは?)

赤ワインの話をする際、必ずと言っていいほど話題になるのが、「赤ワインにはポリフェノールが豊富に含まれていて身体にいい」という話ですね。

ではポリフェノールとはそもそも何なのか、ということですが、具体的には「植物が光合成によって作る色素や苦味成分」のことです。

つまりは植物であれば基本的には備えている成分だということです。

このポリフェノールは、ぶどうの果皮や種子に多く含まれているます。

これら全てを使って醸造される赤ワインにはポリフェノールには、白ワインや他のお酒と比べてもその含有量は圧倒的に多いという訳ですね。

より具体的には、種子に多く含まれるタンニンや、主に果皮に多く含まれるアントシアニンやカテキン等が主な種類ですが、それ以外にも何種類ものポリフェノールが赤ワインに含まれています。

また強力な抗酸化作用を発揮するため、老化防止(アンチエイジング効果)や、美肌効果、冷え対策、あるいは悪玉コレステロールの酸化を防ぐため、動脈硬化を予防する効果も期待できると言われています。

いいことだらけのようにも聞こえますが、やはり飲み過ぎは健康を害する要因にもなります。

通常の成人の場合は1日赤ワイン2杯から3杯、二人で飲んでワイン一本程度が適量だと言われています。

何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということですね。

 

(ボディとは?)

赤ワインのテイスティングの際によく使われる「ボディ」という言葉ですが、文字通り「味わいの骨格」を意味する用語です。

もともと、赤ワインには一部のワインを除いて「甘い」ものがなく、そのため甘口・辛口という切り口では味わいの表現をしにくいという特徴があります。

そのため、「ボディ」という言葉で味わいを表現するのですが、ボディには大きく下記の3種類に分けられます。

 

・フルボディ

赤ワインの中でも香りが豊かで渋みも強く、味わいも濃厚でしっかりとした骨格を持つ赤ワインです。

渋みのもととなるのはポリフェノールのなかでも種子に多く含まれる「タンニン」です。

このタンニンの量が多いワインは、一般的にフルボディのタイプに仕上ることが多いようです。

また、アルコール度数の高い赤ワインも、味わいにボリューム感が生まれてフルボディに感じられることがあります。

一概に言えるものではありませんが、タンニンを多く含むぶどう品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーズ※等、また長期熟成を経た赤ワインもフルボディタイプとなる傾向があるようです。

 

※ぶどう品種については別途記述します。

 

・ライトボディ

フルボディとは対照的に、味わいは軽やかで渋みも最も少ないタイプの赤ワインです。

熟成期間は短く、フレッシュでフルーティな軽快な味わいを身上とする赤ワインが多いです。

このタイプで最も有名な赤ワインは、フランスの「ボージョレー・ヌーヴォー」でしょう。

一般的に新酒ワインは、ライトボディタイプになる傾向があります。

赤ワインの渋みや重厚さが苦手、という向きには、このタイプの赤ワインから慣れてみる、というのも手かもしれませんね。

 

・ミディアムボディ

フルボディとライトボディの中間の味わいで、軽すぎず渋すぎずというタイプの赤ワインです。

フルボディの赤ワインは、ワインそのものを味わうときにはそれほど気をつかう必要はないのですが、料理とのマリアージュということになると、難しいことも多々あります。

その点、このミディアムボディやライトボディの赤ワインは、料理に合わせやすいというメリットもあります。

ミディアムボディタイプの赤ワインは、一般的に万人受けしやすい、お勧めしやすいワインが多いのかもしれません。

ぶどう品種としては、メルローやピノ・ノワールなどが代表的ですね。

 

■白ワイン

原料となるぶどうは、淡色系(緑色系あるいは黄色系)のぶどうを使用します。

白ワインの場合は、除梗したあとすぐに搾汁をして、無色に近い果汁のみを発酵させます。

 

(白ワインの主な造り方)

①除梗(じょこう)・破砕

原料となる淡色系(緑色系、黄色系)のぶどうのうち、苦みの強い茎(果梗)の部分を取り除きます。

この作業を「除梗(じょこう)」と言います。

白ワインにおいては、淡色系のぶどうが原料として使用されることが一般的ですが、まれに黒ぶどうの果汁を用いて作られることもあります。

収穫した淡色系のぶどうを破砕機に入れて果実を破砕し、同時に上記の除梗を行うという点では、赤ワインの工程と変わるところはありません。

 

②圧搾

赤ワインの項でも述べたように、赤ワインと白ワインの製造工程で大きく異なる点が、白ワインにおいては発酵前にこの圧搾作業を行うことです。

破砕されたぶどうは搾汁機に入れられ、搾汁機の下部から自然に流れ出てくる果汁を容器に受けます(「フリーランワイン」です)。

果汁の出が悪くなった段階で、空気圧などで圧力をかけて更に果汁を搾り出す(「プレスワイン」です)こともあります。

この作業を行う際、圧力をかけすぎると渋みや苦味が出てくることがあるので、注意が必要です。

 

●ホールバンチプレス

上述したように、通常圧搾前には除梗作業を実施するのですが、収穫したブドウを除梗せずに丸ごと圧搾することを「ホールバンチプレス」と言います。

梗がついたままで圧搾をすると、マストの品質管理が難しいというデメリットがあるものの、梗が果汁の中の不純物を吸着するため、クリーンな果汁が得られるというメリットもあります。

主にニュージーランドなどの白ワイン生産者が用いる手法で、高級な白ワインを醸造する際に適用されます。

今ではこの圧搾作業は搾汁機を使って行うのが主流ですが、かつての古い時代のワイン造りではこれを人の手によって行っていました。

よく映画で見られるような古いワイン造りのシーンなどで、人が足でワインを潰して果汁を搾っている場面を見かけますね。まさにあれがかつての圧搾作業になります。

 

③デブルバージュ

圧搾で得られた果汁は濁っていることが多く、この果汁を低温の状態に置いて数時間静置し、不純物を沈殿させます。

この作業を「デブルバージュ」と言います。

更にクリアな果汁を得るために、清澄剤を加えて浮遊物を沈殿させる場合もあります。

白ワインにおいては、この清澄剤として土の一種であるベントナイト※やゼラチンなどが使用されます。

※「ベントナイト」物質に吸着する性質が強い粘土の一種で、白ワインの清澄剤として使われます。

濁った状態のままでアルコール発酵を行うと、発酵そのものがスムーズに進まなかったり、香りがうまく出なかったり、色調が濃くなりすぎたりと、何かと問題が出てくるリスクが高まります。

白ワインの製造工程において、アルコール発酵前にこの「デブルバージュ」を行うことが、とても大事な意味を持っているということですね。

※デブルバージュとスーティラージュ・コラージュとの違い

その中身を見てみると、デブルバージュはスーティラージュ(滓引き)とコラージュ(オリ下げ)を足し合わせたような作業ですが、白ワインの製造工程において、かつ発酵前に行う作業、「沈殿させる行為そのもの」のことを敢えて区別するために「デブルバージュ」と呼んでいるようです。

 

④アルコール発酵

上記のデブルバージュにより得られた果汁を発酵タンクに移し、これにワイン専用の酵母を加えてアルコール発酵を開始します。

赤ワインにおいては一般的な「マセラシオン」※ですが、白ワインでは基本的に行いません。

ただ、一部例外的に果皮に含まれる香味成分を抽出するために行う場合があります。

この場合、低温で数時間と、赤ワインに比べると簡易です。

 

※「マセラシオン」については、赤ワインの項目をご参照ください。

 

赤ワインの発酵温度が25度から30度なのに対し、白ワインは15度から20度と低温に抑えています。

これは、酵母にフレッシュな香りを作らせ、また香り成分の揮発を最小限に抑えるためです。

発酵温度が低温であることから、発酵期間もこれに伴い幅が広くなり、10日間から30日間となります。

また、赤ワインがぶどうに含まれる糖分のほぼ全てをアルコールに変えるのに対し、白ワインではその糖分を数パーセント残して発酵を止めて、甘口・辛口のタイプに応じてこれを調整します。

赤ワインにおいては一般的な「マロラクティック発酵」ですが、白ワインでは一部例外的に、まろやかな味わいを出すためにこれを行うことがあります。

ぶどう品種としてはシャルドネ種※を使う場合、マロラクティック発酵を行うことがあります。

 

※「シャルドネ種」については、別途記述します。

 

⑤樽・タンク熟成

基本的に赤ワインにおける熟成と同様ですが、白ワインの熟成過程においては、熟成中にワインとオリを攪拌して、オリの中に含まれる酵母や微生物から旨み成分を抽出することがあります。

この作業を「バトナージュ」と言います。これによりワインの味わいが複雑でまろやかになります。

 

⑥オリ引き

発酵を終えて熟成を経たワインには、果実由来の浮遊固形物(酒石やたんぱく質など)が残っている場合があります。

このワインを静置して、固形物が沈殿した段階で上澄みを別の容器に移し替えて、固形物と液体を分離します。

この作業を「滓引き(おりびき)」と呼びます。(フランス語では「スーティラージュ」と言います。)

 

※「シュール・リー」とは?

一般的なワインの製法としては、発酵終了後に上記の「オリ引き」を行って、この酵母の残骸成分を取り除きます。

この「オリ引き」を敢えて行わず、オリを含んだ状態のまま越冬し、翌年の4月から5月ころまでオリとワインを接触・熟成させることで、ワインにイーストやパン酵母などのニュアンスを与えて、複雑性や旨みを持たせる工程を「シュール・リー」と呼びます。

「シュール・リー」とはフランス語で「オリの上」という意味です。

この「シュール・リー」の製法は、フランスのロワール地方でミュスカデ品種(マスカット)の白ワインを造る際に昔から用いられてきた製法になります。

通常は白ワインにおいて使われる技法ですが、一部赤ワインにおいても用いられることがあります。

ミュスカデ品種で造られたワインは、あまりにもさっぱりとしていてコクがなく個性に乏しかったことから、「オリと一緒に置いて個性を出そう」という発想から始まったという説が有力です。

日本においても、甲州ワインなどで使われる手法として知られていますね。

 

⑦清澄・濾過

滓引きを終えたワインは、沈殿物とは分離されていますが、まだ濁りを生じているケースがあります。

これをクリアにするために、清澄剤(白ワインの場合は、ゼラチンやベントナイトなど)を加えて静置し、更に細かい浮遊物を清澄剤に付着させた後に沈殿させます。

この作業を「清澄」あるいは「清澄化」と言います。

フランス語ではこれを「コラージュ」と呼びます。日本酒造りで言う「オリ下げ」と同様です。

 

⑧瓶詰め

赤ワイン同様です。赤ワインの「瓶詰め」の項目をご覧ください。

 

⑨瓶熟成(瓶内熟成)

白ワインは赤ワインに比べると、長期熟成(長熟)タイプのワインが少ないのは事実です。

これはその製法の違いに理由があります。

赤ワインは、一次発酵の際に仕込むマストの中に果汁や果肉に加えて果皮や種子も一緒に入れて発酵を行います。

その際、種子からは苦味成分となるタンニンが作られる訳ですが、このタンニンが熟成を続けるための栄養素となるため、赤ワインに長期熟成タイプが多いと言われています。

とは言っても熟成に向いた白ワインがない訳ではなく、貴腐ワイン※に代表されるように、素晴らしい品質を誇る熟成白ワインも数多く存在します。

一般的に熟成を経た白ワインは、無色透明からだんだんと色が濃くなっていき、やがて黄金色に輝くようになります。

こうした白ワインは、トロピカルフルーツのような甘さや杏のような香り、ナッツ系の匂いやオイリーな味わいといった、複雑な要素が絡み合って、なんとも言えない至福の味わいが楽しめます。一度は飲んでみたい一本ですね。

 

※「貴腐ワイン」については、別途記述します。

 

(白ワインの味わい表現)

赤ワインの場合、その液体中に糖分がほとんど含まれていないため、甘い・辛いの表現ができず、「ボディ」という用語を使って味わいを表現しました。

一方、白ワインの場合は、糖分を数パーセント残して発酵を止めるため、その糖分の含有量に応じて甘い・辛いの表現が可能になります。

逆に言えば、糖分の残量をコントロールすることで、生産者が狙った味わいを作り出すことが可能だということです。

ですので、白ワインの味わいの表現には「甘口」「辛口」「中辛口」「中甘口」「中口」などと表されます。

ただし、カレーなどのような「辛口」という訳ではなく、基本的には「甘口でないワイン=辛口」という、ざっくりとした表現になっています。

ちなみにロゼワインも同様に甘辛で味わいを表します。

また、メーカーによっては、この「甘辛」の基準に加えて、「酸味の強弱」・「味の濃さ」などのカテゴリでも味わいの分類を示しているところもあります。

またシャンパンの場合は、独自の味わいの表現として「エクストラ・ブリュット=極辛口」※などと言いますが、基本的には白ワイン同様、甘辛を基準に味わいを表しています。

 

※「エクストラ・ブリュット」の詳細については、シャンパンのページをご参照ください。

 

・フィネスとは?

こちらは白ワインだけでなく、赤ワインにおいてもその味わいを表現するときに使われる言葉ですが、フランス語の「Finesse」、英語の「Fine」に由来しています。

つまり、「洗練された味わい」「上質な味わい」といった意味合いを持つ言葉で、エレガントでバランスのいいワインを表現をする際によく使われます。

「フィネス」はワイン全体の印象を表す際に使われることが多いのですが、更に細かく、ワインを飲んだときの口当たりや質感を表す際には「テクスチャー」、ワインそのもの持つ骨格や体躯を表す際には「ストラクチャー」という単語を使うこともあります。

 

■貴腐ワイン

貴腐ワインとは、貴腐菌(ボトリティス・シネレア)と呼ばれる特殊な微生物(カビの一種)の働きにより、非常に糖度の高くなったぶどうを用いて作られる特別なワインです。

通常、この貴腐菌がぶどうに付着すると、灰色カビ病を発生させてぶどうを腐らせてしまうのですが、特殊な気候条件が重なった環境下でのみ、この貴腐ぶどうとなります。

付近に川が有り、低い水温と温かい気候の温度差により朝霧が発生しやすく、貴腐菌が成長するのに適した温度や湿度であること、日中は晴天が続き、空気が乾燥してぶどうから水分が蒸発しやすい環境であること、などが挙げられます。

この貴腐菌は、ぶどうの果皮を溶かしてぶどうの果実内の水分を蒸発させるため糖分濃度が高くなり、またこの菌が糖分や酸を分解することにより、独特の香りや味わいを持つ成分を作り出します。

このため、できあがった貴腐ワインは、独特の芳香と、凝縮された濃厚で上品な甘みを持ちます。

貴腐ワインの製造方法は白ワインと同様に行われますが、貴腐ぶどうには、貴腐菌以外にも様々な微生物が付着しているため、これらの活動を抑制するために亜硫酸の添加は多めになされます。

また、貴腐ぶどうには水分が少ないため、圧搾には時間がかかるという特徴があります。

貴腐ワインは極甘口であることから、他のデザートワイン※同様、食後酒※※として楽しまれることが多いです。

 

※「デザートワイン」については後述します。

 

※※「食後酒」

文字通り、消化促進のために食後に飲まれるお酒です。

フランス語で「ディジェスティフ」と言います。これに対し、食前に食欲増進のために飲むお酒を「アペリティフ」、日本語では「食前酒」と言います。

 

●世界三大貴腐ワイン

貴腐ワインは、上述のように限られた気候条件下でのみ作られるので、非常に貴重なワインであることは間違いないのですが、その中でもその品質と味わいで傑出した貴腐ワインを「世界三大貴腐ワイン」と呼びます。

以下、その3つの貴腐ワインをご紹介します。

・ソーテルヌ(フランス)

フランスはボルドー南部、ソーテルヌ地区及びバルサック地区で作られる極甘口の貴腐ワインです。

この両地区は、グラーヴ地区に囲まれていて、ガロンヌ川の左岸に位置しています。

この両地区の間にはシロン川が流れていて、その流れはガロンヌ川に合流します。

秋になるとこのシロン川から朝もやが発生し、畑を覆い尽くします。また日中になると太陽が出てきてぶどうを温るという、まさに貴腐菌が繁殖しやすい環境が整っています。

使われるぶどう品種は、主にセミヨン種・ソーヴィニヨン・ブラン種・ミュスカデル種などで、貴腐菌が果皮の薄いセミヨン種につきやすいため、セミヨン種を主体として、ソーヴィニヨン・ブラン種などをブレンドして作られることが多いです。

これらの地区では、1855年のワインの格付けで3ランクに分けられました。

それが「特別1級」「第1級」「第2級」で、このうち「特別1級」に名を連ねているのは「シャトー・ディケム」のみとなっています。

まさにフランスを代表する、貴腐ワインのトップブランドです。

 

・トカイ(ハンガリー)

ハンガリーの東北部、トカイ地方及びその周辺地域で作られる貴腐ワインです。

2010年からEUの規定がかわったため、ハンガリーと国境を共有するスロヴァキアのトカイ地方で作られるワインも、「トカイ」を名乗れるようになりました。

原料となるぶどう品種は「フルミント種」が主流で、世界で唯一貴腐ぶどう100%で作られた貴腐ワインが存在します。

特に上質のトカイワインは、「東欧のプリンス」とも評され、ヨーロッパの王宮でこぞって愛飲されたことから「皇帝の酒」とも言われています。

フランスではあのルイ14世が「王様のワインにしてワインの王様」と絶賛したことでも有名ですね。

そのあまりの人気の高さから、トカイワインを自国でも飲みたいと考えた各国の皇帝が、同じフルミント種のぶどうを持ち帰ったり、あるいはハンガリーの技術者をわざわざ呼び寄せてトカイワインを再現しようとしましたが、叶わなかったというエピソードが残っています。

また、他の貴腐ワインとの製造工程の違いとして、三大貴腐ワインの中でもトカイワインの最高級クラスは圧搾機を使わず、ぶどうの自重のみで果汁を搾ることでも知られています。

そのふくよかな香りと芳醇な味わいはもちろん素晴らしいのですが、トカイワインを飲むと「望郷の念」にかられるという言い伝えもあります。

ちょっと面白いエピソードとしては、もともとトカイワインは薬として服用されていた経緯から、人気ゲーム「ファイナルファンタジー」の疲労回復アイテム、「エリクサー」のモデルになったとも言われていますね。

 

■トカイワインの分類について

トカイワインの分類については、近年になってその規準が変わりました。

詳細は後ほど述べますが、まずは従来の区分から説明いたします。また、その区分の説明の際、参考になる用語を予め記述いたします。

 

・トカイ・アスー

「アスー」とは、ハンガリー語で「乾燥した」とか「干からびた」という意味で、これは貴腐ぶどうの形状から連想された言葉であると思われます。

製造工程における定義は、「貴腐ぶどうと貴腐化していないぶどうをそれぞれ一次発酵させ、これをブレンドした貴腐ワイン」を「アスー」と呼んでいます。

 

・トカイ・サモロドニ

ハンガリー語で「あるがまま」を意味する言葉だそうです。

「アスー」に対する対義的な定義で、ワイン製造工程において、「貴腐ぶどうと貴腐化していないぶどうを選別せずにそのまま発酵させるワイン」のことを指します。

発酵を人工的に止めることも行わず、酵母が自然に活動を終えるまで放置するという伝統的な製法です。

ですので、貴腐ぶどうの多寡によっては、出来上がったワインは甘口にも辛口にもなります。

 

・プットニュ

ワインに含まれる残糖度を表す単位です。

もともと、この地方で使われていたぶどう籠の意味で、これに貴腐ぶどうを一杯入れると約25キログラムで、これをワインの新樽136リットルの中に入れれば「1プットニュ」となります。

従って、この数字が上がっていくほどにより甘く、またより高価なワインになるということですね。

因みに「プットニョシュ」は「プットニュ」の複数形だそうで、「プットニョシュ」は3のクラスから始まります。

 

以下、トカイワインの分類をみていきます。

①トカイ・エッセンシア

前述したように、貴腐ぶどう100%を原料として、圧搾機を使わずにぶどうの自重だけで自然に絞られたトカイワインで、世界でも唯一の製法により作られたトカイワインの最高傑作です。

残糖度が非常に高く、1リットル中に500から700グラムの糖分を含むと言われ、あまりにも甘いことからお匙で一口舐める程度の飲み方が推奨されています。

後述する「トカイ・アスー・エッセンシア」との混同を避けるために、「ナチュラル・エッセンシア」と呼ばれることもあります。

4年以上の熟成が義務づけられています。

 

②トカイ・アスー・エッセンシア※)注

ぶどうの当たり年などの際、後述する6プットニョシュを超える糖分を含むワインができることがあり、このために設けられたカテゴリです。

糖分は1リットルあたり180グラム前後、樽による熟成3年、瓶内での熟成を2年、合計5年以上の熟成を経てから市場に出るよう定められています。

 

③トカイ・アスー・6プットニョシュ

1リットルあたりの糖分は150グラム前後、樽による熟成2年、瓶内熟成1年、合計3年以上の熟成期間を経てリリースされるトカイワインです。

通常、トカイワインと言えば、この6プットニョシュから3プットニョシュのクラスを指します。

 

④トカイ・アスー・5プットニョシュ

1リットルあたりの糖分は120グラム前後、樽による熟成2年、瓶内熟成1年、合計3年以上の熟成期間を経てリリースされるトカイワインです。

 

⑤トカイ・アスー・4プットニョシュ※)注

1リットルあたりの糖分は90グラム前後、樽による熟成2年、瓶内熟成1年、合計3年以上の熟成期間を経てリリースされるトカイワインです。

 

⑥トカイ・アスー・3プットニョシュ※)注

1リットルあたりの糖分は60グラム前後、樽による熟成2年、瓶内熟成1年、合計3年以上の熟成期間を経てリリースされるトカイワインです。

 

上述したように、「トカイ・エッセンシア」と「トカイ・アスー・エッセンシア」の分類は混同されるという弊害があり、「トカイ・アスー・エッセンシア」のカテゴリは、2010年のトカイワイン生産者会議において廃止が決定されました。

従って、この表記のあるトカイワインは、基本的に2009年以前に生産されたワインということになります。

また、2013年のトカイワイン生産者会議においては、「1リットルあたりに残糖分120グラム以上」と規定が改定されました。

上記に記述したように、残糖分120グラムといえば、5プットニョシュ以上のランクということになります。

2013年以降、実質的には3・4プットニョシュのカテゴリが廃止されたということになります。

これは、安物のアスーを市場から排除し、トカイワインの評価を更に高めるための措置だと言われています。

 

・トロッケンベーレンアウスレーゼ(ドイツ)TBA

ドイツのモーゼル地方やライン地方で主に作られる貴腐ワインが「トロッケンベーレンアウスレーゼ」(略してTBAと表記されることもあります。)で、ドイツワインの中でも最高ランクに位置づけられます。

主なぶどう品種はリースリング種、オルテガ種などです。

ドイツワインの格付けとしては、EUの規定に基づく「地域指定優良ワイン」として「Q.m.P」「Q.b.A」の2カテゴリがあって、Q.m.P」が最上位の格付けとされます。

以下、簡単に用語をみておきます。

「Q.m.P」=肩書付き上質ワイン→「クヴァリテーツヴァイン・ミット・プレディカート」

「Q.b.A」=特定産地上質ワイン→「クヴァリテーツヴァイン・ベシュティムテン・アンバウゲビーテス」

「モスト」=未発酵ぶどう搾汁(果汁)

「モスト量」=モストの糖度

「Q.b.A」以下の格付けワインにおいては、このモストに糖分を補填することが認められていますが、「Q.m.P」においては十分に天然糖分を含んでいることから、糖分補填※は認められません。

 

※これを「ズースレゼルブ」と言います。詳細は後述します。

 

近年でこそドイツにおいても、良質の辛口ワインが出てきましたが、もともとドイツでは甘いワインほど高級とされていて、それが格付けにも反映され、ドイツ独特の糖度を規準とした格付けができました。

「Q.m.P」の格付けにおいて、果汁の段階で糖分が低い(ランクが低い)順番から、以下のようなランキングになっています。

「カビネット」

「シュペトレーゼ」

「アウスレーゼ」

「ベーレンアウスレーゼ」

「アイスヴァイン」

「トロッケンベーレンアウスレーゼ」

従って、トロッケンベーレンアウスレーゼは、ドイツワイン格付けの最上位の「Q.m.P」の中でも、最も糖度が甘く最もランクの高い最高級ワインという訳ですね。

ちなみに、トロッケンベーレンアウスレーゼとは「乾いた果粒を選んで収穫した」と言う意味になります。

3大貴腐ワインは上記のとおりですが、他にもフランス南西部の「モンバジャック」やアルザス地方の「セレクション・グラン・ノーブル」、ルーマニアの「グラサ・デ・コトナリ」、オーストリアのノイジードラーゼー地区の貴腐ワインなどは銘醸ワインとして有名ですね。

また、ニューワールド各国や日本でも、気候条件などが揃った年には、貴腐ワインが作られることがあります。

 

■その他の主なデザートワイン

上述した貴腐ワインは、デザートワインの代表的なものですが、基本的に甘口で食後に飲むのに適したワインは、デザートワインに分類されます。

アメリカなど一部の国では、デザートワインの定義が定められているところもありますが、日本においては法的な定義はありません。

貴腐ワイン以外の主なデザートワインについて、以下に列挙します。

 

・酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)

詳細は「酒精強化ワイン」のページをご参照ください。

 

・ストローワイン

収穫されたワインを藁の上に敷いて乾かし、水分を飛ばして糖度を高めたぶどうから作られる甘口ワインです。

古くからこの製法で作られていたワインがあったようですが、現代では必ずしも藁に並べて乾燥させているとは限らず、木に吊るしたり棚に並べて乾燥させたりと様々です。

この手法で作られるワインとして有名なものは、以下のようなワインです。

 

・シェリーのペドロ・ヒメネス

スペインの酒精強化ワインとして知られているシェリーですが、その中でも「ペドロ・ヒメネス」はぶどうを天日干しすることで知られています。

 

・アマローネ(レチョート)・デッラ・ヴァルポリチェッラ

イタリア北部のヴェネト州、ヴェローナ北部で作られるストローワインです。

「アマローネ」とは「苦い」という意味ですが、甘みの中にも感じられる心地よい苦味が身上とされています。

糖分が非常に高いことから、度数も16度前後のものもあります。

非常に手間暇をかけて作られる高級ワインです。

イタリア全土で、「ヴァン・ド・パイユ」と同様の手法で造られるストローワインは、一般的に「パッシート」と呼ばれます。

辛口タイプは「アマローネ」、甘口タイプが「レチョート」というように区分されます。

 

・ヴァン・ド・パイユ

フランス語でずばり「藁のワイン」を表す「ヴァン・ド・パイユ」です。

主に、フランスのジュラ県やローヌ県、アルザス周辺地域で作られるこの「ヴァン・ド・パイユ」ですが、収穫したぶどうを屋根裏の藁の上に敷いて陰干しして作られるため、アルコール度数の高い濃厚な甘口ワインとなります。

 

・コマンダリア

トルコの南の東地中海上に浮かぶキプロス島、そのキプロス共和国で作られるストローワインは「コマンダリア」として知られています。

キプロス島の南部、リマソルの丘陵地帯で産出されるこの「コマンダリア」は、褐色を帯びた良質の甘口ワインとして、人気を博しています。

 

・シルフワイン

生産量はそれほど多くありませんが、オーストリアでもストローワインは作られていて、「シルフワイン」と呼ばれることがあります。

 

・アイスワイン

ぶどうの実を木につけたまま冬まで待って、果実が凍結したぶどうを使って作られるワインを「アイスワイン」と言います。

ぶどうの実の中では、酸や糖分よりも水が先に凍るため、糖度の高い果汁を使って得られるこのワインは極甘口になることで知られています。

主にアイスワインを作っている地域では、ぶどうの収穫の際の気温を-7度以下に設定していて、これはこの温度を下回るときには、水分は凍結するものの糖分を含んだ果汁は凝縮されるためです。

こうして作られたアイスワインは、貴腐ワイン同様非常に甘美な甘口となりますが、貴腐ワインと比べると、その味わいはさっぱりとしているといわれます。

また、その希少性から「貴族のワイン」とも称されています。

世界各国で同様の手法で作られるワインはありますが、「アイスワイン」という呼称は国際登録商標であり、ドイツ・オーストリア・カナダの3カ国で生産されたものでないと「アイスワイン」は名乗れません。

より厳密には、ドイツで生産されたアイスワインは「アイス・ヴァイン」と呼ばれます。

人工的にぶどうを凍結させて、アイスワイン同様の甘みを引き出す製造方法もあり、この手法は「クリオ・エクストラクション法」と呼ばれます。

「クリオ=冷凍の」「エクストラクション=抽出」ということですね。

 

・ズースレゼルブ

主としてドイツで行われている甘口ワインの製造方法の1つで、発酵前に果汁の一部を別途保存しておいて、発酵が終わった段階でその果汁をワインに添加する手法です。

ドイツ語で「甘みの保存」=「補糖」という意味です。

これにより、アルコール度数を引き下げるとともに、逆に糖度は引き上げることが可能になります。

ドイツにおいては、この手法は「Q.m.P」格付けのワインに行うことは許されていません。

 

・自然の甘みのデザートワイン

上記にご紹介してきたデザートワインは、ぶどうに貴腐菌が付着するのを待ったり、自然条件下での凍結を期待したり、あるいは人為的にアルコールを添加して甘みを調整したりと、作為的に糖度を上げてきたものがほとんどでした。

しかしながら、ぶどうそのものの持つ高い糖度で発酵させたり、あるいは摘果や剪定などを丁寧に行うことによって、自然に得られた甘口デザートワインも少数ながら存在します。

それを下記にご紹介します。

 

・ヴァンダンジュ・タルディヴ(フランス)

フランスのアルザス地方で作られる甘口ワインで、フランス語でその意味は「遅摘み=レイトハーベスト」を意味します。

「ヴァンダンジュ・タルティヴ」を名乗るには、いくつかの厳しい基準を満たさなければならず、これにより高品質が保証されています。

規準の一つ目はぶどう品種ですが、「ゲビュルツトラミネール」「リースリング」「ピノグリ」「ミュスカ」のいずれかである必要があります。

またぶどうの収穫には、機械ではなく人の手での収穫が求められます。

3つめは、糖分の最低含有量の規定です。

1リットルあたりの糖分含有量は、リースリングとミュスカ種であれば最低235グラム、ゲビュルツトラミネールとピノグリ種ならば最低257グラムの糖分が必要となります。

こういった厳格な基準に基づいて生産されたヴァンダンジュ・タルティヴは、上質な甘さを備えた素晴らしいデザートワインとなります。

 

・ヴァン・ド・コンスタンス(南アフリカ)

かつてヨーロッパで一世を風靡したこのデザートワイン、あのナポレオンが終生愛飲し、文豪のディケンズやボードレールがその著作の中で言及するほど有名でした。

しかし、その後の南アフリカワインの衰退によりその存在は長く「幻のワイン」とされていて、その復活には1980年代まで待たなければなりませんでした。

現オーナーが様々な調査を行った結果、ミュスカ・ド・フロンティニャンというぶどう品種にたどり着き、18世紀のワインと厳密に同じワインとは言えないものの、その復刻版としてリリースされたのがこの「ヴァン・ド・コンスタンス」です。

日本に入ってくるものは極く少数で、お目にかかる機会があればぜひ味わってみてください!

 

■ロゼワイン

近年、とみに人気が高まっているのがロゼワインです。日本でももちろんですが、ヨーロッパでも年々その消費量は拡大していて、フランスでは今や4人に一人はロゼワインを飲んでいると言われています。

その魅力は、赤ワインと白ワインの双方の特徴を合わせもっていて、かなりドライなものから甘口のものまで、幅広い味わいのロゼワインが存在するというバリエーションの多さにあります。

そのため、料理とのマリアージュも合わせやすいという点も魅力ですね。ロゼワインの作り方は大きく4つに分かれます。

1つは赤ワイン同様の作り方で、赤ワインでの醸し期間を短縮し、適当な色合い(ピンク色)になった時点の果汁を再度発酵させる方法。

もう1つは黒ぶどうと白ぶどうを混ぜ合せた状態で発酵させる方法。

3つめは黒ぶどうを圧搾して少し色がついた状態の果汁のみを発酵させる方法。

4つめは赤ワインと白ワイン混ぜ合わせてロゼワインにする方法です。

ただ4つめの方法は、ワインの主要生産国では禁止されているところが多いです。

 

以下、それぞれの方法を詳しく見ていきます。

 

(ロゼワインの主な造り方)

1.セニエ法

①除梗(じょこう)・破砕

原料となる濃色系(黒色系)のぶどうのうち、苦みの強い茎(果梗)の部分を取り除く「除梗(じょこう)」を行います。

 

②マセラシオン

赤ワイン同様、破砕された果実は、果肉・果皮・果汁や種子などと一緒に発酵タンクに入れられます(マセラシオン)。

 

③セニエ

赤ワインの製造方法と異なる点は、このままマストを発酵させるのではなく、醸している最中に淡く果汁が色づいた段階で上澄みの果汁を取り出し、別のタンクに移し替えて、この上澄み果汁を再度発酵させる点です。

この手法を「セニエ法」と呼びます。「セニエ」とはフランス語で「瀉血(しゃけつ)」という意味で、中世ヨーロッパで血液を外に出して健康を回復させたという治療法に由来しています。

また、このセニエ法は、赤ワインの濃縮度を高める(色を濃くする)ためにも使われます。

つまり、ロゼワインを作るために取り出した上澄み果汁、これが取り出された後の果汁は更に濃厚な赤い果汁になっていて、これを継続して発酵させるということですね。

もともと昔は、このセニエ法によりボルドーでロゼワインが作られていたそうですが、今ではボルドーでも様々な方法でロゼワインが作られています。一番ポピュラーなロゼワインの製造方法と言われています。

④アルコール発酵

⑤タンク熟成

⑥滓引き

⑦清澄・濾過

⑧瓶詰め

⑨瓶熟成

④~⑨の工程は赤ワイン、白ワインと同様です。

 

2.直接圧搾法

①除梗(じょこう)・破砕

原料となる濃色系(黒色系)のぶどうのうち、苦みの強い茎(果梗)の部分を取り除く「除梗(じょこう)」を行います。

 

②圧搾

白ワインと同様に、アルコール発酵を行う前に圧搾作業を実施します。

白ワインのほとんどが淡色系(緑色系あるいは黄色系)のぶどうを原料とするのに対し、この手法で作るロゼワインは、黒色系のぶどうを使用します。

黒色系ぶどうをそのまま(あるいは、ごく短時間のマセラシオンを実施した後に)圧搾し、果皮の色が抽出されてうっすらとピンク色に色づいた果汁をのみを発酵させます。

この手法を「直接圧搾法」と呼びます。プロヴァンス地方などで作られる高品質で美しい色合いのロゼワインは、主にこの「直接圧搾法」で作られています。

 

③デブルバージュ

圧搾で得られた果汁は濁っていることが多く、この果汁を低温の状態に置いて数時間静置し、不純物を沈殿させます(デブルバージュ)。

この工程も、白ワインの製造工程と同様です。

④アルコール発酵

⑤タンク熟成

⑥滓引き

⑦清澄・濾過

⑧瓶詰め

⑨瓶熟成

④~⑨の工程は赤ワイン、白ワインと同様です。

 

3.混醸法

①除梗(じょこう)・破砕

原料となるぶどうのうち、苦みの強い茎(果梗)の部分を取り除く「除梗(じょこう)」を行います。

この手法においては、原料となるぶどうに黒ぶどうと白ぶどうの双方を使用して、これらをブレンドした状態で発酵を行います。

この手法は「混醸法」と呼ばれていて、主にドイツで見られるロゼワインの製造方法です。

混醸法では、黒ぶどうから濃い色素が抽出されるため、黒ぶどうは極く少量のみ混ぜられることが多いです。

 

②アルコール発酵・マセラシオン

破砕された果実は、果肉・果皮・果汁や種子などと一緒に発酵タンクに入れられ、ここにワイン専用の酵母を添加して、アルコール発酵を開始します。

混醸法においては、赤ワインと同様、このマセラシオンとアルコール発酵を同時に進行させてロゼワインを造ります。

③圧搾

④タンク熟成

⑤滓引き

⑥清澄・濾過

⑦瓶詰め

⑧瓶熟成

④~⑨の工程は赤ワイン、白ワインと同様です。

 

4.ブレンド法

一番分かりやすいロゼワインの造り方で、「出来上がった赤ワインと白ワインをブレンドする」という単純な方法です。

その名もずばり「ブレンド法」。

簡単な手法で、素人でも造れてしまいそうですが、逆に伝統的なロゼワインの製造方法が危機にさらされるリスクがある、ということでEU内ではこの製法が禁止されています。

例外的に、シャンパーニュに限りこの製法が許されています。

 

■黄ワイン

白ワイン、赤ワインのようにぶどう品種によって黄色ぶどうがある訳ではありませんが、フランスのジュラ地方で造られる白ワインを「ヴァン・ジョーヌ」と呼びます。

「ヴァン・ジョーヌ」とはフランス語でずばり「黄色ワイン」という意味です。

フランス東部、スイスとの国境近くに位置するジュラ地方は、ジュラ紀の石灰質の土壌にぶどうが植えられています。

ぶどう品種は完熟したサヴァニャン種が使われますが、もともとは白ぶどうから造られる白ワインに区分されます。

「ヴァン・ジョーヌ」はジュラ地方の特産ワインとして有名で、中には100年以上の保存が可能な長寿ワインもあると言われています。

その製法ですが、アルコール発酵後白ワインを木樽に移し、最低でも6年間熟成させます。

この間、目減り分を継ぎ足すことも、酒精を強化することも行いません。

すると、ワインの液面に酵母の膜が生まれて(これを「産膜酵母」と言います)、これがシェリーのフロールのようにワインを覆います。

これがこのワインに独特の風味を与えていて、シェリーの味わいにも似ていますがシェリーとも異なり、それよりもやや柔らかいニュアンスで、ヘーゼルナッツのような味わいを持つと言われます。

ちょっと独特なこのワインの味わいは、他の白ワインと比べると一風変わっていてクセがあり、好きな人は熱狂的に好きになるけれども、最初に飲む人はびっくりして難しい味わいだと感じる人が多いと言われます。

スコッチでいうところの「アイラモルト」のような存在なのかもしれませんね。

「ヴァン・ジョーヌ」と合わせる料理には、ジュラ地方特産のコンテ・チーズやトリュフなどが相性が良く、中にはカレー風味の料理にも合うという人もいるようです

。伝統的に620ミリリットルの専用ボトル(「クラヴラン」と言います)に瓶詰めされていて、AOC(原産地統制呼称)ワインは「シャトー・シャロン」です。

■オレンジワイン

近年、耳にすることが多くなってきたこの「オレンジワイン」という言葉ですが、オレンジを原料としたワイン、という訳ではありません。

一言で言えば、「赤ワインの製法で造られる白ワイン」が「オレンジワイン」です。

従って、白ぶどう品種を使っているので、区分上は白ワインに分類されます。

もう少し詳しく製法を見ますと(これまでのおさらいのようになってきますが)、通常、白ワインを造る際には、白ぶどうの果皮や種子などは取り除いて果汁のみを発酵させます。

一方、赤ワインを造る際には黒ぶどう品種を使って、果皮や種子などと一緒に果汁を発酵させます(「マセラシオン」や「スキンコンタクト」と言われる手法ですね)。

つまり、オレンジワインは「白ぶどう品種のぶどうを原料として、果皮や種子などと果汁を一緒に発酵させる」製法で造られたワインということですね。

この手法で造られたオレンジワインは、白ワインでありながら白ぶどうの果皮や種子などの成分が溶け込み、赤ワインのようなコクと複雑さがあります。

またオレンジビターのような味わいと蜂蜜のような甘さを同時に味わえるという、赤ワインと白ワインの双方の特徴を兼ね備えたワインとなります。

色合いもまさに「オレンジワイン」の名称を表していて、白ワインよりも琥珀色がかったオレンジ色をしていて、その味わいを連想させるような色味を出しています。

オレンジワインの起源ですが、ワイン発祥の地と言われるジョージア※で、約8000年前から造られていたと言われており、ジョージアでは今でもその伝統的な製造方法によりワインが生産されています。

※黒海の東岸、トルコとロシアに囲まれた細長い陸地の小国がジョージアで、かつては「グルジア」と呼ばれていました。

「アンフォラ」(現地では「クヴェヴリ」と呼ばれています)という素焼きの巨大な甕にぶどうを房ごと入れて土中に埋め込み(「全房発酵」ですね)、これを発酵・熟成させるという昔ながらの伝統的製法で、究極の自然派ワインとも言われています。

一説によれば、楊貴妃やクレオパトラ、また元イギリス首相のチャーチルもこのオレンジワインを愛飲していたと伝えられています。

そのため、別名「クレオパトラの涙」とも呼ばれています。

 

■レッツィーナ

ここでご紹介するのが妥当かどうか、という話はありますが、ギリシャ特有の白ワイン、それが「レッツイーナ」です。

ギリシャは世界でも最も古いワイン生産国の1つで、古代ギリシャの世界でも盛んにワイン醸造が行われていました。

この「レッツイーナ」もそのうちの一種で、もともとは、ワインを貯蔵する甕(「アンフォラ」といいます)の壺口に接着剤として松ヤニを塗っていたことが始まりだと言われていて、その成分がワインに溶け込んだ状態を好んで飲んでいたとされています。

「レッツイーナ」は今でもギリシャ国民に愛飲されていて、ギリシャのワイン生産量の4割近くを占めているとも言われます。

またこの松ヤニ入りワインはロゼタイプでも生産されていて、こちらは「コッキネリ」と呼ばれています。


 

自然派ワイン(ヴァン・ナチュール、ビオワイン)

 

近年、日本でも注目度が高まっている「自然派ワイン」ですが、一言で言えば、なるべく農薬や人工肥料を使わずに育てたぶどうを使って造られるワインのことで、「ビオワイン」や「ヴァン・ナチュール」とも呼ばれています。

その厳格さによりいくつかの農法があり、下のカテゴリにいくほどより自然派のワインということになります。

 

1.一般的なぶどう栽培方法

効率を重視した一般的なぶどうの栽培方法です。

農薬を使ったり人工肥料を使用することも普通で、大規模ワイン畑や、デイリーワイン用の比較的安価なワイン造りにおいて、一般的に行われている栽培方法です。

 

2.リュット・レゾネ

「減農薬栽培」のことです。完全な無農薬ではありませんが、不必要な農薬はできる限り使わない農法で、現在では多くのワイナリーがこの考え方でぶどうを栽培しています。

 

3.ビオロジック農法

「オーガニック農法」「有機農法」とも言われます。

化学物質などにより自然の生態系を壊さないように配慮された農法で、化学肥料や除草剤などは基本的に使用されません。

いくつかのぶどうの病気を防ぐために、例外的に使用が許されている薬剤があります。

酸化防止のための亜硫酸の使用は認められていますが、多くのワイナリーではこれを使用していません。

 

4.ビオディナミ農法

オーストリアの神秘思想家、ルドルフ・シュタイナーが提唱した農法で、ビオロジック農法を基本としながら、太陽や月などの天体の動きも考慮しながらぶどうを栽培します。

その土地の持つエネルギーを最大限に活かすことを重視した農法で、微生物との共存などを意識し、肥料も牛糞や鶏糞といった有機肥料を使用するという徹底ぶりです。

このようにして造られるビオワインですが、自然派であればあるほど味わいもよくなるという訳ではなく、やはり好き嫌いは好みの問題になります。

ただ、微生物のいろいろな影響を受けて、個性的で複雑な味わいのワインが多いということ、また亜硫酸を使用しないことから酸化が早く進みやすい、ということは、ビオワインの特徴だと言うことができます。


 

ぶどうの品種

 

ワイン用のぶどう品種ですが、フルーツとして食べられるぶどうに比べて、甘みがとても強く酸味も十分にあり、また果皮が食用ぶどうよりも厚めのものが多いです。

ですので、醸造用のぶどうをそのまま食べても十分に美味しくいただけるのですが、なぜかあまり美味しくないという風に思われがちです。

理由はよく分からないのですが、日本酒の原料となる酒蔵好適米※が、中心に「心白」をより多く含む方が酒造りに向いているとされて、ここに空気を多く含んでいるため食べるとパサパサしていて美味しくない、と言われていることと結びつけて連想されたのかもしれないですね。

 

※「酒蔵好適米」の詳細については、日本酒のページをご参照ください。

 

もちろん、同じ醸造酒でもワインと日本酒では原料も製法も違うのですが、なんとなく醸造用の原料は、食べると美味しくないという固定観念が染みついてしまったのかもしれません。

 

以下、主なぶどう品種を見ていきます。

 

(赤ワインの主なぶどう品種)

・カベルネ・ソーヴィニヨン

「黒ぶどうの王」とも呼ばれるぶどう品種で、最も有名な赤ワインの原料ぶどうの1つです。

代表産地はフランスのボルドーですが、今ではカリフォルニアやチリ、オーストラリアなど、世界各地で栽培されています。

この品種で造られる赤ワインは、若いうちにはカシスやブルーベリーなどの果実由来の力強い香りを持っていますが、完熟していくと樽から出てくるカカオなどの複雑性も加わり、すばらしい芳香のワインとなります。

 

・ピノ・ノワール

冷涼で乾燥した気候に適したこのぶどう品種は、ブルゴーニュ地方やニュージーランド、アメリカなどが主な産地になります。

一般的に、カベルネ・ソーヴィニヨンと比べると色調は淡く、渋みは少ないと言われます。

香りにはイチゴやチェリー、バラなどのエレガントな風味が感じられ、熟成を経ると紅茶のようなニュアンスが現れることもあります。

「黒ぶどうの女王」とも呼ばれ、他の品種とのブレンドは希な品種です。

 

・メルロー

カベルネ・ソーヴィニヨンと同様、フランスはボルドー地方が主要産地ですが、今では世界各地で広く栽培されています。

まろやかでフルーティ、ラズベリーなどの果実の香りがあり、比較的早飲みが可能なぶどう品種です。

熟成するとトリュフや土のニュアンスが現れて、ボルドー右岸のポムロール地区ではメルロー品種を100%使った高級ワイン、シャトー・ペトリュスやシャトー・ル・パンなどが有名です。

しばしば、カベルネ・ソーヴィニヨンの力強さを緩和するためにブレンドされることがあります。

 

・シラー(シラーズ)

フランスのローヌ地方やオーストラリアなどが主要産地ですが、近年、このぶどうの栽培が世界中で拡大している人気品種です。

南アフリカでも盛んに栽培されていますが、オーストラリアや南アフリカでは、この品種を「シラーズ」と呼んでいます。

色調は濃く、渋みも強め、しっかりとしたボディで黒こしょうのようなスパイシーさが特徴です。

熟成するとムスクのような香りが加わると言われています。

 

・カベルネ・フラン

カベルネ・ソーヴィニヨンの親にあたる品種で、ボルドーやロワール地方で栽培されています。

カベルネ・ソーヴィニヨン同様、メルロー種とのブレンドに使われることもあります。

スミレのような香りを持ち、繊細な味わいのワインになります。

 

・テンプラニーリョ

スペインを代表する黒ぶどう品種で、標高の高いリオハ地方などで盛んに栽培されています。

樽熟成との相性が良い品種だと言われます。

 

・ネッビオーロ

イタリアを代表する黒ぶどう品種ですが、ピエモンテ州以外での栽培は難しいと言われています。

渋みとしっかりとしたコク(ボディ)を持ち、ブラックチェリーのような香りと、長期熟成を経ることでトリュフのような風味を生じるといいます。

 

・グルナッシュ

スペイン原産の黒ぶどう品種で、南フランスやローヌ地方でも栽培されています。

スペインでは「ガルナッチャ」と呼ばれています。

ブラックベリーやチェリーなどの果実味を持ちます。

 

・ジンファンデル

アメリカはカリフォルニア州を代表する黒ぶどう品種で、イタリアでは同種のぶどうを「プリミティーヴォ」と呼んでいます。

クランベリーや梅のような風味を持つと言われています。

 

・マルベック

ボルドーやフランス南西部で盛んに栽培されていますが、アルゼンチンでも広く栽培される品種です。

このマルベック種は、タンニンを非常に多く含んでいるため、できあがったワインの色調がとても濃くなり、そのため「黒ワイン(ヴァン・ノワール)」と呼ばれることもあります。

有名なものでは、フランス南西部のカオール地方のワインですね。

カシスのような香りと、渋みが強く力強い味わいのワインになります。

 

・サンジョベーゼ

イタリアはトスカーナ地方が主要生産地で、一部カリフォルニア州でも栽培されています。

トスカーナ州の土着品種であるこのサンジョベーゼは、やはりトスカーナの有名ワイン「キャンティ」の原料ぶどうとしても知られています。

イチゴやプラムのような味わいがすると言われます。

 

・ガメイ

ブルゴーニュ地方南部やロワール地方が主要生産地のガメイ種ですが、なんと言ってもこの地方で造られる「ボージョレー」の原料ぶどうとして知られていますね。

イチゴやフレッシュなスミレのような香りが感じられる味わいで、ヌーヴォーで知られているように、比較的早飲みが可能です。

 

(白ワインの主なぶどう品種)

・シャルドネ

主要生産地はフランス・ブルゴーニュ地方やオーストラリア、アメリカなどですが、世界各国で栽培されている人気品種で、「白ぶどう品種の女王」とも称されています。

品種自体の個性はさほどではありませんが、栽培される土壌や醸造方法により多彩な表情を見せます。

更に、長期熟成させることで、ナッツやバターなどの複雑な香りが現れることがあります。

 

・リースリング

ドイツ原産の白ぶどう品種でドイツを代表するぶどう品種です。

涼しい気候でよく生育することでも知られていて、オーストリアやフランスのアルザス地方、またオーストラリアなどでも盛んに栽培されています。

味わいは辛口から甘口まで様々で、桃や花の華やかな香りと生き生きとした酸味が感じられるワインを多く産出します。

熟成するとハチミツのような香りが現れます。

 

・ソーヴィニヨン・ブラン

主要生産地はフランスのロワールやボルドー、またニュージーランドやカリフォルニアなどですが、世界中で栽培されているぶどう品種です。

グレープフルーツなどの柑橘系やハーブ系のアロマに特徴があり、フランス人はこの香りを「ネコのおしっこ」と表現することもあるそうです。

ソーヴィニヨン・ブランは単一品種でワインが造られることが多く、比較的早飲みタイプのワインが多いです。

 

・セミヨン

ボルドーやオーストラリアが主要産地です。

果皮が薄く、貴腐菌が付着しやすいことから、貴腐ワインの原料ぶどうとしてもよく使われます。

ハチミツのような香りと穏やかな酸味を持つワインになります。

 

・シュナン・ブラン

フランスのロワール地方原産のぶどう品種です。

ロワール地方以外では南アフリカなどで盛んに栽培されていて、このシュナン・ブランで造られるワインは辛口から極甘口(貴腐ワインの原料に用いられることもあります)まで、多岐にわたります。

 

・ゲビュルツトラミネール

フランスのアルザス地方、オーストラリアやドイツなどが主要生産地です。

香りはライチを連想させるような甘い香りで、桃やアプリコットなどのニュアンスも感じられます。

酸を多く含むぶどう品種で、収穫時期を遅くして、ぶどうの糖度を高めてからワインにすることも多い品種です。

 

・ミュスカデ

フランスのロワール地方で栽培される白ぶどう品種です。

青リンゴなどの柑橘系の香りが感じられるものの、総じて穏やかで個性に乏しい品種であるため、オリと一緒にワインを熟成させる「シュール・リー」※という手法をとって、コクを出すことが多くあります。

 

※「シュール・リー」については、白ワインの製法のページをご参照ください。

 

・ピノ・グリ

ピノ・ノワールの突然変異種で、「グリ」とは灰色の意味で、果皮が灰色を帯びた色調であることに由来します。

アルザスやイタリアが主要生産地で、イタリアでは「ピノ・グリージョ」と呼ばれています。

味わいには丸みが感じられ、酸味もマイルドです。

 

・ピノ・ブラン

ピノ・グリの突然変異種で、アルザスなど比較的涼しい地域で多く栽培されています。

酸味が多く、軽いタイプの辛口ワインとなります。

 

・ユニ・ブラン

ブランデーの原料ぶどうとして知られるこの「ユニ・ブラン」ですが、他の品種とブレンドして、白ワインとしても造られます。

主な生産地は南フランスやイタリアで、イタリアでは「トレッビアーノ」と呼ばれています。

酸味や香りは穏やかで、すっきりとした辛口の白ワインに仕上ります。


 

ワインの新酒について

 

秋は「収穫の秋」であり、ワインの新酒が出回る時期でもあります。

新酒ワインと言えば、フランスの「ボージョレー・ヌーヴォー」があまりにも有名ですが、世界各国でも新酒ワインを造っています。

(日本酒でいうところの「ひやおろし」※ですね。)

以下、有名な新酒ワインをご紹介します。

 

※「ひやおろし」については、日本酒のページをご参照ください。

 

●ボージョレー・ヌーヴォー(フランス)

世界で最も有名な新酒ワインと言っても過言ではないでしょう。

ブルゴーニュの最南部にある「ボージョレー地区」は、軽快でフルーティな赤ワインを産出する地区として有名ですが、この地区でフランスで最も早くできあがる新酒ワインが「ボージョレー・ヌーヴォー」です。

もともとは地元での「収穫祭」の意味合いが強かったのですが、収穫後わずか2ヶ月後に飲める新酒であることから、世界中でこのワインが飲まれるようになりました。

解禁日は11月の第3木曜日で、日本は地理的に日付変更線に近いことから、世界で最も早くこの「ボージョレー・ヌーヴォー」が飲めるということで、毎年この時期には盛り上がりますね(一時の狂騒的な騒ぎはなくなりましたが・・・)。

ぶどう品種は「ガメイ種」※、また「ボージョレー・ヌーヴォー」では「マセラシオン・カルボニック」※※という特殊な製法で造られることでも知られています。

 

※「ガメイ種」については、ぶどう品種の項目をご参照ください。

 

※※「マセラシオン・カルボニック」については、赤ワインの製法の項目をご参照ください。

 

●ホイリゲ(オーストリア)

オーストリアの新酒ワインは「ホイリゲ」と呼ばれます。解禁日は11月の11日で、この日はオーストリアでは「聖マーティンの日」として知られています。

「聖マーティンの日」は収穫祭の日にあたり、この日を境にして1年間、「ホイリゲ」が飲まれることになります。

「ホイリゲ」には「新酒ワイン」を意味する以外にもう一つ意味があり、「ホイリゲワインを出す居酒屋」ということでも使われます。

ウィーン郊外には数多くの「ホイリゲ」が点在し、そこで「ホイリゲワイン」が楽しめるということですね。

ちなみに現地ウィーンでは、自家製ワインと冷たいオードブルのみを提供する簡易酒場を「ブッシェンシャンク」と呼んで区別するそうです。

こちらは主として、地元の人達の「憩いの場」的な存在の酒場として人気があります。

また現地では、ホイリゲをそのまま飲むことももちろんですが、これを炭酸で割って飲むことも多いようです(いわゆるカクテルの「スプリッツアー」ですね)。

更に、ホイリゲが出来たことの合図として、自分の店の前に「松の枝」を吊るして知らせる風習があるそうです。

日本でも日本酒の新酒ができたことのサインとして軒先に「酒林」※を吊るす風習がありますが、遠い異国で同じような習慣があるのは面白いですね。

※「酒林」の詳細については、日本酒のページをご参照ください。

 

●ヴィーノ・ノヴェッロ(イタリア)

イタリアの新酒ワインは、「ヴィーノ・ノヴェッロ」と呼ばれます。

「ヴィーノ」がイタリア語で「ワイン」、「ノヴェッロ」が「新しい」という意味なので、まさに「新酒ワイン」ということですね。

厳密には「ヴィーノ・ノヴェッロ」を名乗るには、イタリア国内法でいくつかの縛りがあるのですが、ここでは詳細は割愛させていただきます。

解禁日は10月30日で(2011年までは11月6日が解禁日でした)、ボージョレー・ヌーヴォーよりも1ヶ月近く早く新酒が楽しめるということで、より先取り感が味わえますね。

また、この「ヴィーノ・ノヴェッロ」は、イタリアのほぼ全土で生産されていて、ぶどう品種も多岐にわたっていることから、多種多様な新酒ワインを味わえるということも魅力の1つです。

 

●デア・ノイエ(ドイツ)

ドイツの新酒ワインで、「デア・ノイエ」と呼ばれます。

解禁日は11月1日で、ドイツワインらしく、白ワインのほうが充実していて、味わいも辛口から甘口まで様々です。日本に入荷されてくる「デア・ノイエ」は、あまり多くはありません。

「ヴィーノ・ノヴェッロ」同様、新酒ワインができあがると、街道沿いにぶどうの葉を掲げて知らせるという風習もあったようです。

 

●山梨ヌーヴォー(日本)

日本で解禁日が指定されている新酒ワイン、それが「山梨ヌーヴォー」です。

2008年に「山梨県ワイン酒造組合」により定められた山梨県産の新酒ワインのことを指し、解禁日は11月3日です。

より厳密に言いますと、「山梨ヌーヴォー」を名乗るには、山梨県内で収穫・醸造されたワインで、ぶどう品種は白ぶどう品種は「甲州」、黒ぶどう品種は「マスカット・べーリー・A」のみで造る必要があります。

ともに日本固有のぶどう品種であり、山梨県内で最も多く栽培・醸造されているぶどう品種であることを重視して、県産ワインのブランド化を図るべく定められたと言われています。

上記のような世界各国の新酒ワインに比べて、国内ワインであることから入手しやすい点も魅力ですね。

 

●モスト(スペイン)

シェリーの生産地期では、果汁がアルコール発酵を終えて、酒精強化される前のワインを「モスト」と呼びます。

厳密には新酒ワインとは言えないのかもしれませんが、気温が下がる11月ころになると、この地域の飲み屋さんでは赤い旗を掲げるお店が増えてくるそうです。

その意味は「モストあります」の目印で、この時期ヘレス周辺のモスト屋さんは、多くの人で賑わうそうです。

何か、日本の夏の季節の「冷やし中華始めました」みたいで、面白いですね。

他の国の新酒ワインと同じような風物詩を感じるので、この項目で紹介させてもらいました。


 

ワインのボトルタイプについて

 

ガラス瓶のボトルが発明されたのは17世紀のことで、それまでワインは素焼の甕(アンフォラ)に入れて貯蔵されていたそうです。

ワインのボトルの形状にもいろんなタイプがありますが、それぞれの国によって特徴的な形があり、ある程度ワインの産地を予測することが可能です。

 

■ボルドータイプ

ボルドー地方のワインに代表される、「いかり肩で細長い形」のワインのボトルです。

現在では、ボルドー産のワインにとどまらず、世界各国で広く使用されています。

特徴としては、ボトル上部のこのいかり肩の部分と、ボトルの底で凸状に盛り上がっている部分です。

ボルドー産ワインは長期熟成により大量のオリを生じることが多く、このオリがグラスに入ってしまうのをいかり肩の部分で食い止めるためにこの形になったと言われています。

底の凸部分も、オリが舞い上がりにくくするための工夫です。

 

■ブルゴーニュタイプ

ボルドータイプのボトルと並んで、世界中で使われているボトルで、「なで肩で底面積が広い」形状が特徴です。

ブルゴーニュやローヌ地方で用いられるこのボトルですが、ブルゴーニュワインは、ボルドーワインに比べてオリが少なく細かいことからいかり肩である必要はなく、卓上においたときにより優美に見せるよう、なで肩になったと言われています。

 

■プロヴァンスタイプ

南フランスのプロヴァンス地方で主に使われているボトルで、コーラの瓶のようにボトルの中央部分がくびれています。

また、ブルゴーニュタイプのようになで肩をしていて、女性的なフォルムと言えます。

 

■ル・クラヴランタイプ

フランス東部、スイスとの国境近くにあるジュラ地方で造られる白ワイン、ヴァン・ジョーヌに使用される伝統的なボトルです。

肩がはってずんぐりした形をしていて、容量も620ミリリットルと小さめです。

 

■フリュートタイプ

ドイツのライン・モーゼル地方や、フランスのアルザス地方で主に使われているボトルで、ほとんど肩がない細長いボトルです。

底面の凸部はほとんどなく、ほぼ平らな形状です。

 

■ボックスボイテルタイプ

ドイツのフランケン地方で伝統的に使われているボトルで、丸くて扁平な形をしています。

ポルトガルの「マテウス」などでも使われています。

 

■フィアスコタイプ

イタリアのトスカーナ地方で伝統的に使われているボトルで、「キャンティ」などで採用されています。

丸味を帯びてフラスコのような形状をしていて、「藁づと」(藁を編んだもの)が巻かれているのが特徴です。

 

■ペッシェタイプ

イタリアのマルケ州産のワインに使われるボトルで魚の形をしています。

マルケ州は海に面した地域で、そのためボトルも魚(ペッシェ)の形になったと言われています。

 

・パント(キック・アップ)

ボトルの底面の凹み(凸部分)のことを「パント」あるいは「キック・アップ」と呼びます。

一般的には、ワインのオリを底面にとどめてグラスに入るのを防ぐために作られていると言われていますが、注ぎ手がこの部分に親指を入れて、安定してワインを入れるために使われることもあります。


 

ワインのボトルサイズについて

 

ワインのフルボトルサイズは通常750ミリリットルが多いですね。

なぜ750ミリリットルになったのかということですが、これにはフランスとイギリスの両国がが大きく関わっていると言われています。

イギリスは古くからワイン消費国としても有名で、フランス産のワイン、特にボルドーワインの輸入国としても知られていました。

かつてのイギリスの容量を表す単位は「ガロン」で、現在のリットルに換算すると1ガロン=4.5リットル(4,500ミリリットル)になります。

フルボトルサイズを750ミリリットルにすると、1ダース(12本)×750=9リットル(9,000ミリリットル)=2ガロンということで、輸出上も計算しやすく便利だったということですね。

さらにフランスのボルドーでも、1樽の容量は225リットル(22,5000ミリリットル)で、これもフルボトル750ミリットルで計算すると1樽=225リットル=ボトル300本ということになり、こちらも区切りがよく計算しやすい容量です。

こうした両国の歴史的背景や利便性からフルボトルは750ミリリットルになり、これがグローバルスタンダードのボトルサイズとして全世界に広がっていきました。

 

●日本のボトルサイズ

上記のように日本においてもワインボトルのサイズは750ミリリットルが国際標準ですが、デイリーワインなどの低価格帯の国産ワインは720ミリリットルのやや小さめのボトルもよく見かけます。

これは、日本の容量に関する度量衡の影響を受けているもので、1合=180ミリリットルからきています。

つまり720ミリリットル=4合瓶ということですね。

日本酒の世界をみてもらえれば分かりやすいかと思いますが、日本酒は4合瓶や一升瓶(1,800ミリリットル)が一般的に今でも流通しています。

これをそのままワインのボトルに使用したのが」720ミリリットルのワインボトルという訳です。

しかしながら近年、日本産のワインの品質向上が目覚ましく、国際的なワイン品評会で入賞するようなワインも続々と誕生しています。

こうしたトレンドも踏まえて、世界を見据えた高級国産ワインについては、国際標準である750ミリリットルのボトルを使用するワインメーカーも増えてきています。

 

●フランスのボトルサイズ

フランスのワインボトルには様々な容量のものが存在していて、かつその呼び方や容量も地方によって微妙に異なっています。

最も有名なフランスのワイン産地、シャンパーニュ・ボルドー・ブルゴーニュ地方のそれぞれの違いを下記に見ていきます。

 

※ボトルサイズ表


 

ワインのコルク(キャップ)について

 

一口にワインのコルク栓といっても様々な種類があります。

コルクは「コルク樫」という木の皮から造られている天然素材で、弾力性に富み、また完全密閉ではなくわずかに空気を通すためワインの熟成に適しているという特性があります。

しかしながら天然素材であるが故に品質のバラツキは避けられず、抜栓する際には必ず液漏れやカビ、コルク臭などのチェックが必要になります。

コルク(キャップ)には以下のような種類があります。

 

●長期熟成用オークコルク

コルク樫の樹皮のコルクの層の部分を円筒形にくりぬいて作られるコルクです。

高級ワインのコルクとして用いられることが多く、一般的に長いコルクが多いです。

天然素材であるため、品質にバラツキが出ることがあります。

長期の熟成中に、コルクが劣化したりする場合があり、コルクを取り替えることがありますがこれを「リコルク」と呼んでいます。

 

●圧縮(圧搾)コルク

コルク樫のコルク層を採取して粒状に砕き、これに食品用の接着剤を加えて圧縮してコルクの形に成形します。

上記の長期熟成用コルクがそのままの天然素材であるのに対して、こちらは素材そのものは天然であるものの、いったんコルクを粒状に砕いてから再びコルクの形状に仕立てている点が異なります。

長期熟成用オークコルクに比べると安価であり、長期熟成させないワイン用のコルクとして用いられることが多いです。

 

●プラスチック(樹脂製)コルク

天然素材のコルクの場合、コルクに含まれる天然成分がワインに移り、時にキノコやカビや薬品といった不快な匂い(オフフレーバー※)が生じることがあります。

このコルク臭が生じる割合は3%程度だと言われていますが、プラスチックコルクの場合はその心配はありません。

樹脂を原料として作られるコルクだからですが、一般的にコルクがやや固いことが多く、抜栓しにくいという欠点もあります。

比較的カジュアルでモダンなタイプのワインに使われることが多いです。

 

※「オフフレーバー」の詳細については、「お酒基本」のページをご参照ください。

 

●シャンパン用コルク

シャンパンなどのスパークリングワインは、一般のスティルワイン※に比べて瓶の中のガス圧が強いためかなり強い力でコルクが打ち込まれます。

コルクの太さもボトルよりも太く、ボトルに打ち込む前には円柱状であった形が抜栓後にはキノコ形に変形しています。

このためコルクの打ち込みは機械で行われ、加えて針金でミュズレ※を留めてガスを閉じ込めます。

 

※「スティルワイン」については、「製造方法によるワインの区分」の項目をご参照ください。

※「ミュズレ」については、「シャンパン」のページをご参照ください。

 

なお、シャンパン用オークコルクの代用品として「王冠」が使われることがあります。

瓶ビールの蓋としても使われている王冠ですが、安価でありコルク臭の心配もなく、また作業が簡略化されるという利点があります。

シャンパンなどの高級なスパークリング・ワインに使われることはほとんどなく、一般的には軽い味わいのスパークリング・ワインに使われることが多いです。

 

●スクリューキャップ

デイリーワインなどで急速に普及しているスクリューキャップです。

コルク臭の心配がないのも利点の一つですが、何よりも何の器具もいらずに抜栓ができる手軽さが人気を呼んでいます。

高級ワインなどの抜栓の際にはやはりコルクを抜くという一種の儀式に気持ちも高まりますが、普段使いのワインを楽しむにはスクリューキャップのワインはありがたいですね。

アウトドア派の人にとっても、手軽に栓が開けられるスクリューキャップのワインはとても有難い存在ですね!

 

(番外編:ウィスキーのコルクについて)

最近のウィスキーではほとんど見かけなくなりましたが、かなり古いオールドボトルのウィスキーの栓にはコルクが使われていることがありました。

高級ワインなどを保存しておく場合には、多くはワインを寝かせてワインセラーなどで保管します。

一方、ウィスキーの保管は通常ボトルを立てたままで行なうことが一般的で、ワインに比べるとコルクが空気に触れる比率が高くなるという違いがあります。

このこともあって、ウィスキーのオールドボトルは抜栓しようとしてもコルクがぐずぐずになってしまっていて、コルクがボトルの中に落ちてしまうようなケースも珍しくありません。

ワインとウィスキーの保存の仕方の違いが、コルクをボロボロに劣化させる原因なのかと思っていましたが、ある人に聞いたところ「ワインのコルクに比べると、ウィスキーのコルクは相当質が悪い」のだそうです。

それもそのはずと言いますか、グランヴァンクラスのワインは生産当初から数十年という熟成を前提としていて、それに耐えうる品質のコルクを選んで熟成されます。

一方、ウィスキーはもともとボトリングされたらそれほど日にちをあけずに消費されるのが一般的です。

そもそもボトルの中で品質が向上するという発想自体がなかったことから、ごくごく普通のコルクを使っていたためにコルクの劣化が早まったそうです。

一口にコルクといってもいろいろあるんですね。


 

その他のワイン用語について

 

ワインの製造方法に関するテクニカルタームや、その他の基本項目については上述してきたとおりですが、その他のワインに関する用語やアイテムについて、下記にご紹介します。

 

●フィロキセラ

「フィロキセラ」とは日本語で「ブドウ根アブラムシ」のことで、ぶどうの根について、ぶどうを枯らす害虫です。

19世紀なかば、研究用に持ち込まれたアメリカ系のぶどうにこの「フィロキセラ」が寄生していて、これがあっという間にヨーロッパ中に広まり、ヨーロッパのぶどう畑は壊滅的な打撃を受けました。

この被害を「フィロキセラ禍」と呼びます。(「ぶどうのペスト」と言われたこともあるそうです。)

この「フィロキセラ禍」の対策としてとられたのが、アメリカのぶどうを台木(接ぎ木の台にする木)にすることで、アメリカのぶどうの木はフィロキセラの免疫を持っていたため、これによりヨーロッパのぶどうは絶滅を免れました。

一部の畑やぶどうの樹は、このフィロキセラ禍を免れましたが、国としてこのフィロキセラを水際で食い止めた唯一の国がチリだと言われています。

自根のぶどうの木と比べると、この接ぎ木の苗は寿命が短く、約70年から80年で実がつかなくなると言われています。

フィロキセラの被害を免れたぶどうの樹は、「プレ・フィロキセラ」と言われて珍重されます。

ちなみに、フィロキセラに耐性のないヨーロッパ系のぶどうは、現在世界中のワイン造りのほとんどの原料となっていて、ヨーロッパ系ぶどうの学名を「ヴィティス・ヴィニフェラ」と言います。

これに対して、アメリカ系ぶどうを「ヴィティス・ラブルスカ」と呼びます。

 

●ヴィエイユ・ヴィーニュ

日本語に訳すると「古木」あるいは「老木」という意味です。

ぶどうの樹は、樹齢が高くなればなるほど実が小さく、皮は厚くなって凝縮味に富んだ味わいになると言われていて、世界には100年以上の樹齢のぶどうの木もあるそうです。

このように、樹齢の高いぶどうの木から造ったワインであることを強調するため、ラベルに「ヴィエイユ・ヴィーニュ」と表示することもあります。

 

●デキャンタージュ

「デキャンタ」と呼ばれる専用のガラス容器にボトルのワインを移し替えることです。

ワインを空気に触れさせて酸化させます。

酸化させることにより急激にワインを目覚めさせてワインの本来の香りやポテンシャルを引き出すことを目的としています。

この状態のワインを「開いている」と表現します。

長期熟成を前提とした赤ワインなどは、本来はその熟成のピークを迎えるまで待つことが、美味しくワインをいただくことにつながります。

しかしながら、そこまで何十年も待てなかったり、あるいは頃合いだと思って抜栓したワインが思いのほか固かったりした場合に使用する手段です。(このような状態のワインを「閉じている」と表現します)、

この「デキャンタージュ」には、上記の目的以外にも、ボトルに沈殿しているオリを取り除くという目的もあります。

なお、白ワインやスパークリングワインについては、基本的に「デキャンタージュ」を行うことはありませんが、十分に香りが出ていないようなときに希に行うことがあります。

 

●ソムリエ

何となく、ソムリエと聞くと、ワインの銘柄をテイスティングで当てたり、上述のデキャンタージュを格好良くやったりというイメージが強いかと思います。

しかし、それはソムリエの仕事のごく一部でしかなく、お酒の仕入れからその管理、料理とのマリアージュのアドバイスから接客まで、レストランでのサービス全般を統括するのが「ソムリエ」の仕事です。

ちなみに、ソムリエがワインの抜栓の際に使用する道具が「ソムリエナイフ」で、フランスの「シャトー・ラギオール」などが有名ですね。

ちなみに、女性のソムリエは通常「ソムリエール」と呼びます。

フランスではこの「ソムリエ」の資格は国家資格ですが、日本では「呼称資格」です。

「日本ソムリエ協会」のソムリエの資格は、一定期間以上の飲料サービス業経験が求められますが、「全日本ソムリエ連盟」のソムリエ資格は、飲食業経験は不問です。

「日本ソムリエ協会」では飲料サービス業経験がない者はソムリエ資格を取得することはできませんが、その際には「ワインエキスパート」という資格があり、こちらは一般の方でも受験可能です。

また「日本ソムリエ協会」のソムリエ資格には、「シニアソムリエ」「マスターソムリエ」という上位資格があります。

ソムリエとは性格が異なりますが、ワイン選びのプロが要する資格として、フランス食品振興会が行っているもので「コンセイユ」という資格があります。

これは、ワイン販売を実際に行っていることが受験の条件になります。

 

●コラヴァン

ワインは、一度コルクをあけてしまうと、なるべく早く飲みきらなければなりません。

空気に触れることでワインの劣化が進んでしまう訳ですが、高級ワインになってくると飲み頃の判断が難しく、途中で一度熟成度合いをテイスティングしてみたいと思うか方も多いのではないかと思います。

とは言っても、上記のような理由から簡単には抜栓方法できないのがこれまででしたが、これを可能にした道具が「コラヴァン」です。

「コラヴァン」は、細い針をコルクに差し込み、そこからワインを抽出できるので、コルクを開けずまたシールを剥がす必要もありません。

また、ワインを抜いた分だけ高圧アルゴンガスがボトル内に注入されるので、ワインが酸化することもありません。

近年、日本にも輸入されるようになったこの「コラヴァン」、お値段は少々張りますが、ワインラバーにとっては夢のような商品ですね。

ただし、使用は天然コルクに限られているそうです。

 

●テロワール

ぶどうの生育やワインの醸造に関わる全ての自然環境を指して「テロワール」と言います。

具体的にはその土地の土壌、気候、生態系や日照量や風向きなど、これらの様々な要素が絡み合って、ワインの特徴を生み出します。

 

●ワインベルト

「~ベルト」という言い方は、いろんな農産物で使われることがありますが、ワインでも「ワインベルト」という表現があります。

具体的には、赤道を挟んで南緯20°から40°、北緯30°から50°の地域で、ここはワインの原料となるぶどうの栽培や、ワイン醸造に適した地帯だと言われています。

さらに、このエリアの中でも年間平均気温や年間降雨量、年間平均日照時間などさまざまな条件をそなえた地域がワイン造りに適した土地となります。

具体的な国をみていきますと、北緯エリアならフランス・イタリア・ドイツ・スペイン・アメリカなど、名だたる銘醸ワインを生み出す国が名前を連ねていて、もちろん日本もこのエリアに含まれています。

一方、南緯エリアをみてみると、オーストラリアやニュージーランド、チリ・アルゼンチン・南アフリカなど、どちらかと言えばニューワールドのワイン名産地が多いですね。

一言でワインベルトといっても、できあがったワインはそれぞれのエリアの特徴をそなえていて、ワインベルトそのものも大きな意味での「テロワール」と言えるのかもしれません。

近年ではワインの醸造技術が向上し、本来はワイン造りに不向きであった土地や、ごく狭いエリアで局地的にワインを造ることも可能になってきています。

ごく狭い範囲内での局所気候のことを「ミクロクリマ」と呼びます。

ちなみにフランス語で「クリマ」とは「気候」の意味で、ブルゴーニュでは「畑の区画」のことを指します。

これからも、われわれが予想もしなかったエリアでのワイン造りが見られるかもしれませんね。

 

・ワイン造りに適している4つの気候

上記の「ワインベルト」に則するような形で、世界のワイン造りに相応しい気候を主に4つに区分しています。

それぞれのエリアや気温、降水量や湿度や気温差などにより、「大陸性気候」「高山性気候」「海洋性気候」「地中海性気候」の4つに分かれています。

 

●ホストテイスティング

少し格式の高いレストランなどでワインを1本注文した場合、そのワインのラベルを確認して味見をすることがあります。

その際、味見をする役割は、その会の主催者(招待者)が行うのが通常で、これを「ホストテイスティング」と言います。

きちんとしたお店の場合、味が劣化しているようなケースはあまりないのですが、それなりのクラスのワインを頼むと、結構な料金となることがあり、こちらにも注意が必要です。

一般的に、こういったレストランでワインを1本オーダーする場合、だいたい小売り価格の2~3倍の料金となることが多いです。

 

●BYO

「BringYourOwn(Wine)」の頭文字をとった言葉で、「ワインの持ち込みが可能」なお店という意味です。

オーストラリアなどで盛んなシステムですが、日本でも比較的規模の小さいレストランなどでは取り入れているお店もあります。

オーストラリアでは、酒類を扱うライセンスの取得が厳しかったことから、このようなシステムが生れたと言われています。

逆に、酒類取り扱いのライセンスを取得しているお店は、比較的高級レストランが多く、こういったお店の看板には「 Licenced」という表示が出ていることがあり、このようなお店は「BYO不可」であることが多いです。

また、高級店であっても、「LIC/BYO」という表示があるところは、ワイン持ち込みが可能なお店です。

BYOをする際の注意点ですが、ほとんどのお店では「ワイン持ち込み料」を取ることが多く、いくらになるのかは事前に確認が必要です。

また、持込み料を払って持ち込む以上は、ある程度の高級ワインであることが多く、高級ワインであればあるほどボトル内にオリが生じている可能性が高くなります。

いきなり当日、ワインを持ち込んで飲もうとすると、このオリがワインと混ざった状態のまま飲まなければならなくなります。

予約の数日前にワインを持ち込んで、オリがボトルの底に沈んだ状態でワインを飲むようにしたほうが無難ですね。

最後に、やはり高級なワインを持ち込む場合、最後に少しワインを残してお店を出るのがマナーだとされています。

これは「残ったワインをお店のみなさんで試飲してください」という意味で、お店と良好な関係を築こうとする、素敵な配慮ですね。

 

●リーファーコンテナ

世界各国で生産されているワインですが、海外で造られているワインを大量に日本に輸入しようとすると、貨物船などにワインを積んで長い日数をかけて運んでこなければなりません。

国にもよりますが、赤道近辺など暑いエリアを通過することもあり、きちんとした温度管理がなされていないと、せっかく運んできたワインが劣化してしまうという恐れもあります。

特に「グラン・ヴァン」などと呼ばれるような高級ワインは、繊細な温度管理が求められるため、輸入業者によっては夏場の輸入を禁止しているようなところもあるくらいです。

こういった温度管理に威力を発揮するのが「リーファーコンテナ」で、冷却装置が取り付けられた特殊なコンテナです。

ワインにとっても強力な味方となるコンテナですが、生鮮食品や生花などの輸送の他、いろんなシーンで活用されていて、医薬品や美術品などの移動の際にも使われるそうです。

ちなみにですが、リーファー機能を持たない一般的なコンテナを「ドライコンテナ」と呼んでいます。

 

●タートヴァン

「タートヴァン」とはワインの利き酒に使用する容器のことで、古くからフランスなどで使われてきました。

「タストヴァン」とも言います。

素材あるいは表面は銀でできていることが多く、一般的には底は浅くその内側には凹凸があります。

これは、ワインを注いだ容器に光を当てると、光が反射してワインの色調がよく観察できるようにする工夫で、通常ソムリエが胸からぶら下げているものです。

かつてはこの「タートヴァン」による試飲が一般的でしたが、最近はあまり専門店でも見かけなくなりました。

因みに「タートヴァン」にもブルゴーニュタイプ、ボルドータイプがあり、その形状が違うそうです。

あまり見かけなくなったと書きましたが、山梨県の勝沼にある「ぶどうの丘」のワインカーヴでは、この「タートヴァン」を使って勝沼ぶどう郷の全てのワインの試飲ができます。興味のある方はぜひ足を運んでみてください!

 

●エチケット

フランスワインのボトルに貼られているラベルのことをフランスでは「エチケット」と呼びます。

日本人は「エチケット」と聞くとすぐに「マナー」を想像してしまいますが、それもこの「エチケット」の成り立ちと深く関係しています。

この「エチケット」の由来にもいくつかの説があるのですが、宮廷内の手入れの行き届いた庭に無作法にずかずかと入り込んで庭を荒らす人が続出したため、これを防ぐために庭師が看板を立てて立ち入り禁止を呼びかけたそうです。

こうした礼儀作法を記した看板=札のことを「エチケット」と呼び、やがてワインのボトルに貼られた札=ラベルのことも「エチケット」と呼ぶようになったという説が一つ。

また、かつてワインを他国に輸送する際に箱に貼られてある「荷札」のとおりに正しく中身を入れているか、この「荷札」を使ってもチェックをしていたそうです。

つまり「荷札」を通してワイン輸送の係員の働きぶりを判断していて、これがマナー=エチケットとなりそこから転じてワインのラベルのことを「エチケット」と呼ぶようになったという説がもう一つ。

いずれにしても現在私たちが使う「マナー」という意味とも通じる部分があるということですね。

「エチケット」にも各国の規定があり、フランスのように厳格に表示が定められている国もあれば、緩やかな規制の下でワインが生産されている国もあります。

その中身を正確に読み解くことは容易ではありませんが、この知識をきちんと身につければ、ワインの名前はもとより、ぶどうの収穫年(ヴィンテージ)やぶどう品種、(フランスなどの)原産地統制呼称のランク、生産国・地区名・村名や畑の名前や等級、瓶詰め元や容量、アルコール度数まで、このエチケットの規制が厳しい国であればあるほど、そのワインに関するあらゆるデータを入手できます。

ワインラバーやコレクターの方であれば、ご自身が飲まれたワインのエチケットを剥がしてきれいに保管している人もいますね。

ワインのラベルをきれいに剥がす道具のことを「ワイン・レコーダー」、ワインのラベルを保管する台帳のことを「ワインラベルバインダー(コレクション)」と呼んでいます。

自分が飲んだらワインを記録(記憶)しておくにはいい方法ですね。

 

●ワインの涙

狭義の意味では、グラスに入ったワインを一口飲むとグラスの内側をワインが糸を引くように滴り落ちていく様を「ワインの涙」と呼んでいます。

「ワインの脚」や「カーテン」、「教会の窓」などと表現されることもあります。かつてはこの「ワインの涙」が多いほど糖度が高いワイン、あるいは品質良好なワインと言われていたことがありました。

しかしながらこれには科学的な根拠はなく、現代ではアルコール度数の高いワインほどこの「涙」が多くなると言われています。

更に広義の意味では、アルコール分を含んだワインが起こす「毛細管現象」により、ワインがグラスの内側を上昇して自重によりまた滴り落ちていく、この神秘的な現象の繰り返しのことを「ワインの涙」と呼ぶことがあります。

いずれにしてもちょっと不思議な現象ですね。

 

●ワインのキャップシール

ワインを抜栓する際、最初の関門となるのが「キャップシール」の開け方ですね。

スクリューキャップのものは除きますが、通常のコルクの栓の場合はコルクを覆うようにして「キャップシール」が貼られています。

このキャップシールの剥がし方を見れば、その人がワインに普段から慣れているのかどうかが判断できます。

最近はスクリューキャップタイプのワインも増えてきましたので、デイリーワインばかり飲んでいる人にはハードルが高いかもしれませんが・・・。

このキャップシールの開け方でまず議論になるのが、キャップの上部を切るのか瓶のくびれた部分を切るのかという話です。

どちらが正解というものではないようですが、日本のソムリエ協会では後者を推奨しているので日本人ソムリエは下部のくびれの部分を切る人が多いそうです。

例えば下部のくびれ部分を切る場合ですが、ソムリエナイフを当てる角度が大事で、ボトルに垂直に刃を当ててしまうとキャップがギザギザになってしまうことがあります。

ソムリエナイフはボトルに対して角度をつけて入れるときれいに切れると言われています。いずれにしてもやや力を入れてないとキャップが切れにくく、多少力強いナイフさばきが求められます。

きれいにキャップシールが剥がれると、見た目にもワインが美味しそうに感じられますね。

レストランでソムリエなどの所作を見て、上手なキャップシールの剥がし方を覚えるのもいいかもしれませんね。


 

ワインのトピックス

 

●赤ワインは常温で飲むのが美味しい?

一般的によく聞くコメント、「赤ワインは常温で、白ワインは冷やして飲むのが美味しい」と言いますが、これには異を唱えるワイン専門家も多くいらっしゃいます。

実際のところどうなのでしょうか?フランスを含むワインの一大生産地ヨーロッパは、もともと冷涼な気候の土地が多く、日中と夜間の気温差が著しいことがいいぶどうを栽培する一つの条件となっていました。

従ってこれらの地域では、真夏といってもそれほど気温は上がらず、室内の温度が20度前後であることが普通です。

日本で赤ワインを飲む場合、季節にもよりますが少なくとも真夏の40度近い気温を「常温」とするには無理があります。

クーラーをかけた室内という状況もあり得ますが、やはりこういう場合は少し冷蔵庫で赤ワインを冷やしたほうが美味しくワインをいただけます。

赤ワインの種類によっても適温は違ってきて、日頃からガブガブ飲むようなテーブルワインなら上記のように冷やしたほうが美味しく飲めることが多いですが、グラン・ヴァンのような高級ワインになると、なんでもかんでも冷やせばいいというものではありません。

そのワインの飲み頃、飲むべき「ピーク」のタイミングがあるのと同様、上質なワインにはそれぞれ最も飲むのに適した温度というものがあります。

そういったワインの適温も含めて、高級ワインの飲み頃や温度を管理・アドバイスしてくれるのが上述の「ソムリエ」だということですね。

ちなみに白ワインですが、こちらは一般的に冷やして飲むことを推奨されています。

やはり赤ワイン同様、高級ワインになってくるとなんでもかんでも冷やせばいいというものではないので、ソムリエやワイン専門店のスタッフにその白ワインの適温を聞くのが無難です。

最近ではデイリーワインでも品質の向上が著しいので、「まずいワイン」を探すほうが難しい、とよく言われます。

あるワインの専門家が曰く、「どんな安物の白ワインでも冷蔵庫でキンキンに冷やせば美味しく飲める!」と言っていたとか。

実際にどうなのか、みなさんご自身の舌で確かめてみてください!

 

●ワインの澱(オリ)について

ワインのボトルの底の方に、カスのような沈殿物をみかけたことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。

これらの沈殿物が「ワインの澱(オリ)」と呼ばれるもので、ボトルを大きく動かしたりすると、ワインの中でフワフワと漂うような場合もあります(あまりいいことではありませんが)。

一般的にはこの澱(オリ)は赤ワインで見られることが多く、ワイン以外ではウィスキーのオールドボトルなどでも希に見かけることがあります。

この澱の正体ですが、赤ワインの渋み成分であるタンニンやポリフェノール、酒石などが熟成の途中で結晶化・沈殿したものです。

この澱ですが、ワインが若いうちに生じることはあまりありません。

長期熟成タイプの赤ワインは、年数を経て熟成が進むうちに上記のような成分が澱となって固まっていきます。

「長く熟成された上質な赤ワインほど澱が多い」と言われるのはこのためで、上質な赤ワインに多く含まれるタンニンやポリフェノールが豊富であることの証明にもなっています。

したがって正常に熟成が進んだグランヴァンなどは、長い年月の間に澱に余分な渋み成分が蓄積されていって、その上澄みのワインは素晴らしい味わいに変化しているという訳です。

一方で澱があるワインの全てが素晴らしい味わいかというとそうではなく、中には熟成がうまく進まず途中で空気が入り込んで酸化してしまうケースもあります。

保存状態如何によるということですね。

また上質な白ワインにおいても澱が見られるケースがあります。

ただし、赤ワインと違って白ワインには色素成分がありませんので、白ワインにおける澱は酒石酸やカリウムなどのミネラル成分が結合、沈殿したものです。

ちなみにこの澱ですが、ワインと一緒に飲んでしまっても健康上の問題はありません。

ただ、その舌触りや見た目からワインを美味しく飲むには相応しくないと言われていて、通常はボトルのパント※と呼ばれる凹みの部分に澱を集めて静かにワインを注ぐか、デキャンタージュ※をして澱を取り除いてからワインを飲むのが一般的です。

 

※「パント」「デキャンタージュ」については、「ワインボトル」及び「ワイン用語」の項目をご参照ください。

 

上述したように、澱は全てのワインに生じるものではなくて、長期熟成を経ることでその真価を発揮するような高級ワインにおいて見られる現象です。

フランスの超高級グランヴァンクラスになると、ボトリングしてから飲み頃のピークを迎えるまでに50年以上も待たなければならないものまであります。

澱とワインの関係について、よく「絶世の美女」に例えられることがあります。

その成り立ちや容貌から、いずれ絶世の美女になることは間違いないと言われる少女がいても、幼い頃には幼女体型であったりプロポーションのバランスが整っていない事は当たり前です。

しかし年数を経て大人になっていくと、やがて素晴らしいバランスやプロポーションを備えていきます。

この過程で生じるものが「澱」であって、大人の女性に変身するために必要な「贅肉=澱(オリ)」だとする比喩です。

今の時代、女性をこういった例え話にすること自体あまりいい比喩ではないかもしれませんが、(個人的には)分かりやすい例えだと思います。

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