日本酒について|リカーバード【醸造酒】

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日本酒について

概要

 

焼酎と並んで、日本を代表する「國酒(くにざけ)」、それが日本酒です。

お米を原料としたお酒がいつごろから作られるようになったのか、はっきりと分らない部分もあるのですが、概ね西暦700年代、奈良時代には麹菌を使って酒を作る技法が出来ていたと言われます。

その後時代を経て、江戸時代には清く澄んだお酒、すなわち「清酒」が当たり前になり、現代の日本酒と同じような製法に至りました。

日本酒の消費量のピークは1970年代で、その後だんだん消費量は減っていきます。

一方で日本酒を取り巻く環境は激変し、若い杜氏(後述します)さんの活躍やAI(人工知能)を駆使したお酒造りなど、年々日本酒自体の品質は向上し、日本酒が誕生して以来、今が一番美味しい日本酒を飲める時代になったとも言われています。

それを示すかのように、日本酒の海外への輸出量は増加の一途を辿っていて、和食ブームとも相まって、今海外では日本酒ブームを迎えています。

現在でも1000以上の蔵元が、それぞれ個性あふれる日本酒を造っていて、今日では百花繚乱の日本酒を自由に楽しめる時代になったと言えそうです。

 


 

日本酒の作り方

 

日本酒はお米を原料とする醸造酒です。より正確に言えば、お米・水・米麹を原料とします。

米麹とは、蒸したお米に麹菌というカビの一種を繁殖させたもので、これによりお米に含まれるデンプンを糖分に変えます。

そして糖分は酵母によってアルコール発酵され、日本酒ができあがります。

麹菌はカビの一種であると前述しましたが、これは安全な微生物であり、日本においては、古くから日本酒・焼酎・味噌・しょうゆ・甘酒造りなどに用いてきました。

麹には多くの種類があり、それぞれの特長に応じて使い分けられています。麹には色があるのですが、これは胞子の色に由来します。

日本酒に使われる麹菌は、主に「黄麹菌」が使われていますが、味噌やしょうゆ造りに使われることも多いです。

麹菌が作る糖分(旨みや甘み)は、後述する乳酸菌や酵母などの大好物であり、また麹には他の発酵菌を呼んでくるという特長もあります。

日本酒だけでなく、味噌やしょうゆといった調味料を使って作られる発酵食品が複雑な旨みを持っているのは、こういった麹菌の利点によるところが大きいです。「麹」を使った発酵技術というのは東アジア圏内で独特のものですね。


①精米

玄米の状態のお米から不要な部分を削り取り、酒造りに適した純粋なデンプン質に近い中心部(心白)を残します。

この心白のしっかりしたお米を「酒造好適米※(酒米)」と呼びます。

※酒造好適米については後述します。


②洗米・浸漬(しんせき)

精米されたお米の表面についた大量の糠を水で洗い落とすことを洗米といいます。

そして洗米されたお米を水に漬けて、お米に水分を吸収させることを浸漬と言います。

吸水率は30%弱ぐらいですが、お米や天候などによっても変ってきます。

 

(浸漬の読み方について)

上記のように、浸漬の読み方として「しんせき」と書いていますが、もともとは「しんし」という読み方が正しいそうです。

誤読から「しんせき」が広まっていき、現在では「しんせき」と読む人のほうが多くなっています。

ですので、どちらの読み方でも間違いではないということですね。


③蒸し

浸漬を終えたお米は、巨大なせいろ(甑・こしき)や蒸米機の中に入れられて、強い蒸気で蒸されます。

これにより原料となる「蒸米」ができますが、理想の蒸米は「外硬内軟」と呼ばれ、外側は硬く内側はしっとりと柔らかい状態です。

蒸米には、麹用(麹米)と酒母用※(酛米)ともろみ用(掛米)の3つの用途があります。

※酒母については後述します。


④製麹(せいきく)

蒸米に麹菌を繁殖させ、麹の中に糖化酵素を生産する工程を製麹と呼びます。

昔から「1麹、2酛、3造り」と言われ、日本酒造りの中でも最も重要とされてきました。

お米をいきなりアルコールにすることはできないので、まずはお米の中のデンプンを糖分に変える訳ですが、この工程が「麹造り」ということですね。

 

・種麹(たねこうじ)

玄米に麹菌の胞子が付着したものです。別名「もやし」と言います。

 

・麹室(こうじしつ)

麹造りを行う場所です。麹菌を繁殖させるため、室温は35度に保たれています。

 

・種切り(たねきり)

冷ました蒸米は麹室に運ばれ、作業台(床)の上にほぐして均一に広げられます。

そこに「種麹」を均一に振りかけるのですが、この作業を「種切り」と言います。

「種切り」が終わると、蒸米を一カ所に集めて布などをかぶせて保温し、麹菌を定着させます。

その後、麹菌の菌糸がうまく蒸米に食い込んで増殖するよう、何度も蒸米を混ぜ合わせたり集めたり、またその山を崩したりといった作業が約2日間続いて、麹が作られます。

 

・破精(はぜ)

麹菌の菌糸が蒸米に食い込むことを「破精(はぜ)」と言います。この破精の状態によって、以下のように麹の性質は変わってきます。

 

総破精麹(そうはぜこうじ)

蒸米の表面全体が麹菌の菌糸に覆われて、蒸米内部にも菌糸が深く入り込んでいる状態の麹を「総破精麹(そうはぜこうじ)」と言います。

濃厚・芳醇な酒質のタイプの酒造りに向くと言われます。

 

突き破精麹(つきはぜこうじ)

蒸米の表面に斑点状に菌糸が見えていて、それでいて菌糸が蒸米の内部にまでしっかりと深く入り込んでいる状態の麹を「突き破精麹(つきはぜこうじ)」と言います。

ゆっくりと酵素を供給するため、吟醸酒タイプのお酒造りに向くと言われています。

また、麹は「老麹(ひねこうじ)」「若麹」という区分をすることがあります。

「老麹」とは文字の表すように、麹室の温度を高温に設定し、製麹の時間を長くして、麹菌を過度に繁殖させた麹のことで、酵素力が高く老熟しています。

逆に「若麹」とは、麹室の温度を低温に設定し、製麹の時間を短く麹菌の繁殖を遅れ目に作った麹で、一般的に香りが高いと言われます。

一般的に、「老麹」は「総破精麹」型、「若麹」は「突き破精麹」型です。

灘※での酒造りにおいては、酒母造りには「老麹」を、醪造りには「若麹」を使用するのが通例と言われています。

※「灘」については、後述する「日本三大酒処」をご参照ください。


⑤酒母(酛:もと)造り

日本酒造りにおいては、本番のもろみの発酵前に、この酒母造りが行われます。

酒母用の小さなタンクの中に水と乳酸(速醸酛※の場合)、米麹に酵母※※と蒸米を加えて仕込むことにより、タンク内では酵母が増殖していきます。いわば本番の力強いアルコール発酵のための原動力にあたるステップですね。

乳酸を加えるのは、不要な雑菌が繁殖するのを防ぐためですが、この乳酸の取り込み方により酒母造りは、大きく「速醸酛系」と「生酛(きもと)系」の2タイプに分かれます。

※※酵母については後述します。

 

・速醸酛

酒母造りの初期の段階で、高純度の醸造用乳酸を添加して、雑菌などの繁殖を防ぐ方法です。

明治末期に考案された酒母の育成方法で、生酛系に比べて酒母が早く出来上がります。

現在の日本酒造りではこちらが主流となっています。

すっきりした味わいに仕上りやすいと言われます。

 

・生酛

江戸時代に確立された伝統的な酒母の育成方法です。自然界に存在する乳酸菌を取り込んで酒母を造ります。

手間も時間もかかる方法で、できあがったお酒は旨みや酸が感じられる味わいのものが多いです。

一般的に、お燗※に向く酒が多いと言われます。

※お燗については後述します。

 

・山廃酛(やまはいもと)

生酛系の簡易版とも言われていて、生酛造りで最も手間のかかる「山卸し」という作業工程を省いた手法で造られる酒母です。

「山卸しの廃止=山廃」という訳ですね。


⑥醪(もろみ)造り

上記の作業が終わって後、いよいよ本格的な発酵(仕込み)が行われます。

発酵タンクの中にまず酒母を入れて、そのあとに米麹・水・蒸米(掛米)を入れて醪を仕込みます。この際、一度に米麹・水・蒸米を入れるのではなく、3回に分けて徐々に量を増やしていきます。

これは、タンクの中の酸や酵母量を適正に保つためで、この手法を「三段仕込み」と言います。

1回目の仕込みを「初添(はつぞえ)」2回目を「仲添(なかぞえ)」、3回目を「留添(とめぞえ)」と呼び、全行程は4日間です。

(より正確に言えば、初添のあとの2日目に休みをとって、醪の中の酵母の増殖を促します。これを「踊り」と呼びます。)

そしてこのタンクの中で、世界でも類を見ない高度な発酵技術である「並行複発酵」が行われていきます。

(並行複発酵については前述したとおりです。)

一般的な仕込み方法は上記の三段仕込みですが、更に蒸米や酵母を足して仕込む「四段仕込み」というやり方もあります。

これは原料となりるお米が増量されることから、より甘口のお酒に仕上ると言われます。


⑦上槽(じょうそう)

発酵タンクの中でのアルコール発酵は、約3週間前後続きます。

醪が発酵を完了したら、アルコールの濃度やお酒の香味などをよく見極めた上で、少しずつ温度を下げていきます。

そして頃合いを見計らって、醪を絞り清酒と酒粕に分けるのですが、この作業を上槽といいます。

これは、以前は昔ながらの木製の槽(ふね)と呼ばれる器械を使って絞り作業を行っていたためついた名前ですが、近年では多くの蔵で自動圧搾機が使われています。

他にも、醪を酒袋に入れて吊るし、自然に滴り落ちた雫を集めて採る、という方法「しずく絞り」もあります。

(「袋吊り」「袋取り」「袋しぼり」「しずく取り」などとも呼ばれます。)

また、絞って流れ出てくるお酒のどの部分を採るのかによって、下記のように分類されます。

 

・あらばしり

醪を絞って最初に出てくる部分を採ったお酒です。総じて荒々しくフレッシュで、また酸味や炭酸ガスを含んでいることもあります。

濁りが残っていることもあります。

 

・中汲み

文字通り、流れ出てくるお酒の中頃に出てくる部分を集めたものです。「中取り」「中垂れ」とも呼ばれます。

最も酒質がいいと言われ、味わいや香りもクリーンなものが多いです。

 

・責め(攻め)

上槽の最後に出てくる部分で、少し圧力を加えて絞ります。

香りや味わいはやや乏しく、カルメラっぽさの残る濃いお酒になると言われます。「責め取り」とも呼ばれます。

これらのお酒は、通常はブレンドされて出荷されますが、それぞれのみを瓶詰めしてリリースされることもあります。

 

どぶろく・にごり酒

上記のように、できあがった醪はまだ溶け切れていないお米や酒粕が混在し、濁っています。

この状態で瓶詰めされるお酒を「どぶろく」といい、古来日本では神事の際にも飲まれてきました。

ただ、上述のように清酒と酒粕を分ける工程を経ていないので、正確には酒税法上、どぶろくは日本酒とは呼べません。

(「その他の醸造酒」というカテゴリに分類されます。)

また上槽の際、より粗い目の布を使用して醪を絞ると、やはり同様に白濁したお酒が出てきます。

このお酒を「にごり酒」と呼んでいますが、より広義の意味で白濁したお酒全般を「にごり酒」と呼び表すときもあります。


⑧濾過(ろか)

上槽して絞られたお酒は濁っていて、再度タンクに入れられます。

これは、絞ったお酒にはまだ米の破片や酵母のカスなどの固形物が含まれているからで、これらの不要な固形物を「オリ(滓)」と言います。

この「オリ」を数日間タンクで放置しておくと、自然にタンクの下に沈殿していきます。沈殿したオリを取り除く作業を「オリ引き」といいます。

この後、さらに細かい固形物や雑味を除去するために「濾過」を行います。

濾過にはフィルターを通すものと、活性炭を使用した濾過がありますが、近年では敢えてお酒の風味を活かすために、シンプルなフィルター濾過を行う蔵が増えています。

また、「オリ引き」を行って沈殿物を取り除いた後でも、液体中に不要な成分が溶け混んでしまっている場合もあり、これがお酒の品質に悪影響を及ぼすこともあります。

その際には「オリ下げ」という作業を行って不純物を除去します。

「オリ下げ」は「オリ下げ剤」と呼ばれる成分を液体に投入し、これに不純物を付着させた後に沈殿させ、日本酒をよりクリアにします

(この作業はワインにおいても行われることがあり、「清澄」※とも呼ばれます)

古来、日本酒造りにおいてはこのオリ下げ剤として、「柿渋」が使用されてきました。

※「清澄」の詳細については、ワインのページをご参照ください。

この「オリ下げ」の作業は、他のお酒造りでも一般的に行われますが、後述するみりんは、なかなかオリが下がりにくいお酒だと言われています。

 

・オリがらみ(滓酒・おりざけ、うすにごり、ささにごり)

上槽のあとオリ引きをせずに、敢えてそのまま瓶詰めされたお酒です。オリや炭酸ガスが含まれていて、うっすらと白くにごっています。

フレッシュ感やオリの濃厚な味わいが楽しめるお酒です。

 

・無ろ過

オリ引きされたお酒に対し、濾過の工程を施さずに瓶詰めされたお酒を「無ろ過」といいます。

こちらもフレッシュ感やさわやかさ、濃厚なうま味などが魅力ですが、いずれにしても丁寧な造りばなされていることが大前提ですね。

近年はこのお酒の人気も高いです

(漢字が難しいからなのか、このお酒がリリースされる際には、ひらがなで「無ろ過」として販売されることが多いようです)。


⑨火入れ

上記のような工程を経たお酒は、かなりの程度で品質が向上していますが、まだ少量の微生物や酵素類が残っていて、この働きにより徐々に風味が変わっていきます。

そこでタイミングを見計らって、60度から65度の温度で加熱殺菌をして、お酒の品質を安定させます。

この作業を「火入れ」と呼びます。「火入れ」はこれを行う作業のタイミングにより、下記のように分類されます。

 

・一般のお酒(2回火入れ)

伝統的な火入れのやり方で、1回目は醪を搾ってお酒を貯蔵する前に、2回目は出荷のためにお酒を瓶に詰める前に行います。

貯蔵前と出荷前に2回火入れを行うやり方です。

 

・生詰酒

絞ったお酒をタンクや樽で貯蔵する前に1回のみ火入れする(瓶詰め前には火入れをしない)お酒を「生詰酒」と言います。

火入れの回数を抑えることで、よりフレッシュな味わいが楽しめます。

「後生(あとなま)」とも呼ばれます。

 

・生貯蔵酒

生詰酒とは逆に、絞ったお酒を生のまま貯蔵し、出荷前・瓶詰めの前に1回のみ火入れを行うお酒を「生貯蔵酒」と言います。

生酒のままの貯蔵期間があるため、やはりこちらもフレッシュ感を味わう日本酒となります。

略して「生貯(なまちょ)」とも呼ばれます。

 

・生酒(しぼりたて)

醪を絞ってから一切火入れを行わないお酒を「生酒」と言います。別名「本生」とも呼ばれます。

口当たりのみずみずしさや若々しさが感じられ、新酒特有の特徴がダイレクトに味わえます。

また上記以外に、お酒を瓶に詰めて湯煎殺菌する「瓶燗火入れ」というやり方もあります。


⑩貯蔵・加水

濾過・火入れ(生詰酒や一般酒)されたお酒は、貯蔵タンク等に入れられて、低温で静かに寝かされます。

この貯蔵を経ることでお酒は熟成され、風味は丸みを帯びて酒質が向上します。

昔から、一夏を超えて貯蔵されたお酒が秋を迎えて味わいが増すとことを「秋上がり」と呼び、このタイミングで出荷される商品が「冷やおろし」です。

また、通常出荷前に水を加えてアルコール度数を調整し、15度前後で販売されることが多いのですが、加水をせずにアルコール度数17度~18度で瓶詰めされたお酒を「原酒」と呼びます。

香味や旨みが濃く残され、骨太なスタイルのお酒に仕上ることが多いです。

(ちなみに、2006年の酒税法改正により、22度以上のお酒は日本酒を名乗れなくなりました。)

さらに近年では、日本酒の長期熟成も注目されていて、様々なタイプの熟成日本酒がリリースされています。

一般的に「熟成古酒」として出荷されているのは、3年以上貯蔵されているものを指すことが多いのですが、蔵によっては20年以上もの長期熟成に及ぶものもあります。

これらの熟成古酒は、通常私たちが想像するような無色透明な日本酒とは違い、ウィスキーのような琥珀色をしています。

味わいもカラメルのような独特の甘さを持ち、複雑な熟成香や深みが感じられます。

 

・斗瓶囲い(とびんがこい)

一升瓶10本(18リットル)=一斗であり、18リットルが入るフラスコ型のガラス瓶のことを「斗瓶(とびん)」と呼びます。

袋吊りなどで絞られた大吟醸酒※などの特別なお酒を、タンク貯蔵をせずに直接斗瓶に入れて、そのまま低温で保存することを「斗瓶囲い」と言います。

「斗瓶取り」とも言います。

最高品質の貴重なお酒を貯蔵させる際に取られる手法です。

※大吟醸酒については後述します。

 

・樽酒(たるざけ)

貯蔵時にいったん杉樽に入れて一定期間置き、これを瓶詰めしたもの(または上槽後に杉樽に入れておいたもの)を「樽酒」と呼びます。

杉の木の風味や香りが適度に酒に移り、清々しい木のニュアンスが楽しめるお酒です。

日頃からの貯蔵タンクの管理や、出荷のタイミングの見極めなど、大変手間のかかかる仕事ですが、いずれもお酒の品質を守る上で欠かせない作業です。

 

味醂(みりん)と日本酒の違い

日本料理には欠かせない調味料の味醂(本味醂)ですが、米(みりんの場合はもち米が原料)と麹を材料として作られるという点では、日本酒と共通しています。

では何が違うのかということですが、一番大きな違いは、味醂は米や麹に焼酎や醸造用アルコールを加えて、アルコール発酵をさせずに麹による糖化を行うという点です。

丁寧に作られて長期間熟成された本味醂は、14%程度のアルコール度数があり、そのまま飲んでも美味しくいただけます。

ちなみに味醂は、酒税法上は「混成酒」に分類されます。

 

甘酒と日本酒の違い

上記のみりんとも異なり、基本的にアルコールはほとんど含まれません。

一般的な甘酒は、ご飯やおかゆ等の原料となるお米に、米麹を加えることで、お米に含まれるデンプンを糖化して作られる甘い飲料です。

酵母を加えてアルコール発酵させることがほとんどないため、アルコールが含まれないということですね。

酒粕を原料として、これにお湯などを加えて甘酒を作る場合には、1%以上のアルコールが含まれる場合もあるので、要注意です。

 


 

日本酒のタイプ

 

日本酒は、その製造方法や原料、また原料となるお米の磨き具合など、国税庁が定める一定の基準に則り、「特定名称酒」とそれ以外の「普通酒(一般酒)」に大別されます。

さらに特定名称酒は、「吟醸酒(ぎんじょうしゅ)」「純米酒(じゅんまいしゅ)」「本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)」に3タイプに分かれ、全体として8分類から成ります。

※「純米酒」「本醸造酒」の2タイプから枝分かれさせる分類もあります。

 

(精米歩合とは)

日本酒造りに用いられる玄米の磨き具合(=削った割合)のことを「精米歩合」と言います。

通常、日本酒造りに用いられる玄米は、一定の割合で表面を削り、中心部を残して使用します(精米)。

これは、玄米の表面部分にはタンパク質や脂質など、お酒を作る際には不適当な不純物を取り除くためで、お米の中心部(心白)に近づくほど純粋なデンプン質が多くなっていきます。

現在、日本酒造りで使用されるお米の精米歩合は、大体80%~35%程度と言われています。

例えば、精米歩合60%ということは、お米の40%を削った原料米ということですね。

この精米歩合が多くなればなるほど(高精白)、クリアで軽やか、香り高いお酒になると言われています。

ただ、精米歩合が高いお酒がいいお酒かというとそれだけで決まる訳ではなく、事実最近では、低精白でお米の個性や旨みをより前面に押し出したお酒も数多く出ています。

合わせる料理や、その日の気分など、TPOに合わせて飲み分けるのが日本酒上級者ということですね。


特定名称酒

■吟醸酒タイプ

①吟醸酒

米・米麹・醸造アルコール※を原料として、精米歩合60%以下で作られる日本酒です。

吟醸造り※※で造られ、固有の香味があり、色沢が良好なものを「吟醸酒」と呼びます。

 

※醸造アルコール

さとうきびの糖蜜や、穀物類に含まれる糖分やデンプンを原料として、これを醸造・蒸留して造られたアルコールです。

醪を搾る前に、これを適量加えることで、香りが高くスッキリとした味わいのお酒になります。

醸造アルコールの使用量は、白米重量の10%以下に制限されています。

 

※※吟醸造り

高精白したお米を、低温で長期間(30日前後)発酵させていく手法を「吟醸造り」と呼びます。

香りが高く涼やかな酒質の酒に仕上ると言われています。

吟醸造りにより生じる独特の芳香を、「吟醸香(ぎんじょうか)」と言います。

 

②大吟醸酒

米・米麹・醸造アルコールを原料として、精米歩合50%以下で作られる日本酒です。

吟醸造りで造られ、固有の香味があり、色沢が特に良好なものを「大吟醸酒」と呼びます。

原料のお米の半分を削ってしまう訳ですから、最も贅沢な日本酒と言えますね。


■純米酒タイプ

 

③純米酒

醸造アルコールを使用せず、米・米麹のみで造られた日本酒です。

精米歩合は定められておらず、香味や色沢が良好なものを「純米酒」と呼びます。

 

④純米吟醸酒

醸造アルコールを使用せず、米・米麹のみで造られた日本酒で、精米歩合が60%以下の日本酒です。

吟醸造りで造られ、固有の香味があり、色沢が良好なものを「純米吟醸酒」と呼びます。

 

⑤純米大吟醸酒

醸造アルコールを使用せず、米・米麹のみで造られた日本酒で、精米歩合が50%以下の日本酒です。

吟醸造りで造られ、固有の香味があり、色沢が良好なものを「純米大吟醸酒」と呼びます。

 

⑥特別純米酒

醸造アルコールを使用せず、米・米麹のみで造られた日本酒で、精米歩合が60%以下または特別な製造方法により造られた日本酒です。

固有の香味があり、色沢が特に良好なものを「特別純米酒」と呼びます。

「特別な製造方法」とは、精米歩合を更に高めるなどの、特別な工夫を指します。


■本醸造酒タイプ

⑦本醸造酒

米・米麹・醸造アルコールを原料として、精米歩合70%以下で作られる日本酒です。

これに加えて、香味や色沢が良好なものを「本醸造酒」と呼びます。

 

⑧特別本醸造酒

米・米麹・醸造アルコールを原料として、精米歩合60%以下または特別な製造方法により造られた日本酒です。

これに加えて、香味があり色沢が特に良好なものを「特別本醸造酒」と呼びます。

「特別な製造方法」とは、精米歩合を更に高めるなどの、特別な工夫を指します。


●発泡日本酒(スパークリング日本酒)

近年、日本酒界で大きなブームとなっているタイプのお酒です。「発泡清酒」「活性日本酒」などとも呼ばれます。

日本酒を造る課程で、糖分を発酵させるのですが、これによりアルコールと二酸化炭素(炭酸ガス)が生じます。

通常の日本酒造りにおいては、この炭酸ガスを取り除くのですが、これをうまく取り込み発泡性をもたせたお酒が「発泡日本酒」です。

この製造方法にもいくつかのタイプがありますが、シャンパンと同じように瓶内二次発酵方式をとるものもあれば、人工的に日本酒
に炭酸ガスを注入する方式もあります。

日本酒が苦手という女性や、日本酒を敬遠してきた層にも大人気の新しいタイプの日本酒ですね。


●貴醸酒(きじょうしゅ)

上記の日本酒のタイプ分けとはカテゴリが全く異なりますが、「貴醸酒」をご紹介します。

貴醸酒とは、一言で言えば「水の代わりに日本酒で仕込んだお酒」です。

更に詳しく言いますと、前述したお酒造りの「醪造り」の工程の「三段仕込み」の最後、「留添(留仕込み)」のところで水の代わりに日本酒を使います。

本来、水を使うところに日本酒(アルコール)を入れることで、アルコール度数が一定以上に達します。

酵母はアルコール度数が高くなると徐々に弱っていき、およそ22度前後でその活動を終えると言われています。

このため、日本酒を加えることでデンプンを糖分に変える酵母の働きが緩やか(あるいはストップ)になり、糖分がそのまま醪に残存することになります。

このため、貴醸酒は甘くて濃厚、とろりとした上品な味わいになり、また熟成を経ることで琥珀色に色づきます。

ただ、日本酒で仕込みを行うという贅沢な製造方法を採ることから、通常の日本酒よりやや高価になることが多いですね。

ちなみにですが、「貴醸酒」というのは貴醸酒協会に入会している団体だけが使用できる「商標名」であって、未加入の蔵が造るものは同様の手法をとっていても、「貴醸酒」は名乗れません。

この場合は「再醸仕込み」「醸醸」「三累醸酒」などと言う名称で呼ばれます。

 


 

日本酒の味わいによる分類

 

日本酒の味わいを一言で言い表すのはなかなか難しいことです。

単に甘口・辛口と言ってもその味わいは千差万別で、自分の飲みたい日本酒をリクエストするのにも苦労することがあります。

その1つの指標として、ある日本酒の研究会が考案した味わいのタイプがあるのでご紹介します。

 

熟酒(じゅくしゅ)

文字通り、熟成させたことにより生じる奥深い香りや重厚な旨みの感じられるお酒で、ナッツやシナモン、チョコレートといった様々な香りと芳醇な旨みが味わえます。数年以上寝かせた熟成古酒が多く、とろりとしたまろやかな口当たりです。

 

醇酒(じゅんしゅ)

純米酒や生酛系・山廃系の日本酒に代表されるような、原料となるお米の旨みを前面に押し出したお酒です。

酸味と甘みのバランスがよく、ふくよかな旨みが一体となって口の中に広がっていきます。

お燗にも向いていて、温度により様々な顔を見せます。

 

薫酒(くんしゅ)
りんごやバナナなどの果実類、あるいは花のような華やかな香り、いわゆる「吟醸香」と呼ばれる香りが特徴のお酒です。

精米歩合の高い吟醸酒や大吟醸酒が多く、雑味が少なく後味もさらりとしたきれいなお酒に仕上ります。

 

爽酒(そうしゅ)

香りはやや控えめながらもフレッシュな飲み口が身上のお酒です。後味に清涼感・爽快感を感じることが多く、冷やして夏に飲むのに相応しいタイプのお酒です。

生酒や生貯蔵酒、生詰め酒が多くこのカテゴリに当てはまります。


■日本酒度とは

前述した日本酒の味のカテゴリは、どちらかというとアナログ的な分類ですが、日本酒度はよりデジタルな指標です。

簡単に言うと「日本酒の中にどれだけ糖分が残っているのか」を表す数値です。

もう少し詳しく言いますと、日本酒が15度の状態で測定し、4度の水よりも重いものをマイナス、軽いものをプラスで表します。

糖分が多ければ多いほどマイナスの数値があがり(下がり)、プラスの数値が高いほど糖分は少なくなります。

つまり、プラスの数値が高いもののほうがより辛口、マイナスの数値が低いものほどより甘口という訳ですね。

ただし、この日本酒度も絶対的なものではなく、あくまでも日本酒の味わいを図る1つの指標に過ぎないと理解しておいたほうが無難です。

もとより、個人の嗜好を1つの数値で決められることもなく、いろいろ試してみながら自分好みの日本酒を探すのが、遠いようで一番の近道です。

 


 

日本酒の温度について

 

日本酒を美味しく飲める最適な温度とは何度なのでしょうか。

かつては日本酒をお燗で飲むのが一般的な時代があり、また第一次の吟醸酒ブームが起こった際には、冷やして飲むのが最上、と思われていた時代もありました。

さらに「お燗で飲む日本酒は邪道」などと言われた時代もありました。

現代においてはこれらが誤解であり、全ての日本酒にはそれぞれの飲み頃の温度、最適な温度があるというのが一般的な考え方になっています。

以降に、日本酒を飲むのに適した色んな温度をご紹介します。

 

冷酒

日本酒を冷蔵庫などで冷やして、5度から8度くらいで飲みます。

香りの高さやフレッシュ感を楽しみます。

主に、吟醸酒系のお酒、絞りたての生酒やあらばしり、活性日本酒などが冷酒に向いています。

繊細な味わいのお料理やお刺身のお造り等との相性がいいです。

温度帯によって、下記のように分けられます。

・みぞれ酒 凍る直前のシャーベット状になったお酒

・雪冷え(ゆきひえ) 5度前後

・花冷え(はなひえ) 10度前後

 

冷や(常温)

「冷や」と言っても、日本酒を冷やす訳ではなく、常温(室温)で楽しむお酒です。

季節によっても室温は変わりますので、大体15度から20度くらいが目安とされます。

本来の日本酒の味が一番よく分かる温度帯と言われています。

主に本醸造系のお酒や冷やおろし、落ち着いた純米酒などが冷やに向いていることが多いです。

幅広い料理と相性がいいですが、出汁の効いた和食などとのペアリングも抜群です。

温度帯によって、下記のように分けられます。

・涼冷え(すずひえ) 15度前後

・常温・室温 15度~20度前後

 

燗酒

お酒を温めて飲むという文化は、「ヴァンショー」などのワインにも見られますが、これほど細かくお酒の温度や温め方を使い分けるのは、日本酒をおいて他にはないでしょう。

冷酒や冷や酒ではイマイチ美味しいと感じなかったお酒でも、お燗をすることで全く別の表情を現し、おどろくほど美味しくなることも珍しくありません。

日本酒のもつ本来のお米の旨みが花開き、味の幅が引き出されます。

このように、お燗をすることによって美味しくなることを「燗上がり」あるいは「燗映え(かんばえ)」と言います。

一般的には、純米酒や生酛系のお酒などどっしりとして旨みや酸味が強いお酒は、少し熱めの燗でも大丈夫で、吟醸酒系や長期熟成のお酒は、ぬるめのお燗がいいとされます。

いろいろ試してみるといいですね。

お燗もどんな料理にも合いますが、煮込みなどの濃い味付けの料理にも負けずにマリアージュさせることができます。

温度帯によって、下記のように分けられます。

・日向燗(ひなたかん)30度前後

・人肌燗(ひとはだかん)35度前後

・ぬる燗(ぬるかん)40度前後

・上燗(じょうかん)45度前後

・熱燗(あつかん)50度前後

・飛びきり燗(とびきりかん)55度前後

 


 

酒造好適米(酒米)について

 

日本酒の原料となるお米は「酒造好適米(酒米)」といって、食用米とは異なります

廉価な普通酒には食用米が使われることが多く、また一部の蔵では「ササニシキ」や「松山三井(まつやまみい)」などの食用米を使って高級酒を醸しています。

良い酒造好適米は上質なデンプン質を持ち大粒で、中心部に「心白」と呼ばれる白い部分があるお米など、いくつかの条件が必要です。

この「心白」には多くの空気が含まれていて、それ故に食用として食べた場合には、パサパサして美味しくないと言われています。

また、食用米と比べて栽培が難しく、値段も高価になりますが、全国各地で様々な酒造好適米が作られています。

中でも、新潟を主要産地とする「五百万石」、兵庫を主要産地とする「山田錦」、長野を主要産地とする「美山錦」は「三大酒造好適米」と呼ばれています。

作付け1位の「五百万石」と2位の「山田錦」を指して、「二大酒造好適米」とすることもあります。

更に「酒米の王者」と呼ばれる山田錦は、その栽培地によってもランクがあり、中でも兵庫県北西部一帯産のものは特に良質とされ、「特A山田錦」として別格扱いされています。

他にも、かつては名米として有名だったものの、栽培の難しさなどから作られなくなった酒米を復活させた、「幻の酒米」もあります。

有名ものは山形の「亀の尾」、熊本の「神力(しんりき)」、鳥取の「強力(ごうりき)」などですね。

またお米の収穫時期によって、早い時期に成熟する品種を「早稲(わせ)」、遅くに成熟する品種を「晩稲(おくて)」と呼び表すこともあります。

上記以外にも全国的に知られている酒米としては、

北海道の「吟風(ぎんぷう)」

青森の「華吹雪(はなふぶき)」

山形の「出羽燦々(でわさんさん)」

滋賀の「玉栄(たまさかえ)」

香川の「オオセト」

岡山の「雄町(おまち)」

広島の「八反錦(はったんにしき)1号」

山口の「穀良都(こくりょうみやこ)」

等、全国で様々なタイプの酒米が作られています。

酒造好適米の違いを飲み比べてみるのも面白いかもしれませんね。

 


 

酵母について

 

酵母とは、前述したように麹により糖化された糖分を、アルコールに変える微生物(菌類)で、日本酒造りには欠かせないものです。

空気中にも野生の酵母はいますが、日本酒造りには向かない酵母も多く、現在では日本醸造協会が配る酵母(きょうかい酵母」)や、蔵元が自家栽培した酵母を使用しています。

ちなみに、各蔵に自然に棲み着いていた酵母のことを「蔵付き酵母」と言います。

代表的なきょうかい酵母は以下の ようなものです。

 

・6号酵母

秋田県の新政酒造で育てられた酵母です。穏やかな香り、深い味わいを生むと言われています。純米酒や生酛系の造りに向いています。

・7号酵母

長野県の宮坂醸造、「真澄」が発祥地の酵母です。発酵力が強く、穏やかでコクのあるお酒が造られると言われます。

6号酵母と同じく、純米酒や生酛系のお酒造りに向いています。

 

・9号酵母

熊本県「香露」で知られる「熊本県酒造研究所」発祥の酵母です。別名「熊本酵母」とも呼ばれます。

低温環境下での発酵力が強く、吟醸酒造りに向いていると言われています。果実のような華やかなお酒が多く造られます。

 

・14号酵母

金沢県国税局内の研究機関で育成された酵母です。別名「金沢酵母」と呼ばれます。

9号酵母同様、吟醸造りに向いているとされ、9号より酸が少なく、メロンや洋梨のような芳香が特徴のお酒が多く造られます。

きょうかい酵母以外にも、各蔵元等で独自に保存・培養している「静岡酵母」「長野酵母」「福島酵母」「花酵母」などがあります。

 


 

仕込水について

 

日本酒は、その成分の80%が水でできていると言われ、それだけに蔵元は水にこだわり、事実銘酒が造られる地域は、そのまま清浄な名水を産する地域と重なっていることが多いです。

その成分もさることながら、日本酒造りには大量の水を使用するため、酒造りにおいても水量豊かな水源が近くにあることが必要ですね。

その仕込水ですが、大きく「硬水」と「軟水」に分けられます。

水に含まれるミネラル分や塩類を多く含むものを「硬水」、その含有量が少ないものを「軟水」と言います。

一般的に、硬水寄りの水で仕込んだものは骨格のしっかりした辛口のお酒に、軟水寄りの水で仕込んだものは口当たりの柔らかいまろやかなお酒になる傾向があると言われています。

かつては、発酵力の弱い軟水は酒造りに不向きとされましたが、酒造技術の発展した現代では、硬水・軟水のどちらを用いても高品質のお酒が造れるようになっています。

その蔵で仕込んだ水をチェイサーにして飲む日本酒、最高に贅沢なひとときかもしれないですね。

ちなみに日本酒のチェイサーのことを日本的な言葉で「和らぎ水(やわらぎみず)」と呼びます。

 


 

その他の日本酒用語について

 

●杜氏(とうじ、とじ)

その蔵のお酒造りの全てを統括する総責任者です。

かつては、お酒造りの時期になると、杜氏がその配下の蔵人を引き連れて酒蔵に赴いて、酒造りに従事することが多かったのですが、近年では蔵元自らが杜氏を務めるケースも増えてきました。

杜氏の高齢化・杜氏不足等から、近年ではお酒造りに関する膨大なビッグデータをコンピュータに計算させる、ハイテクな酒造りも行われるようになっています。

特に有名な岩手の「南部杜氏」、新潟の「越後杜氏」、兵庫の「丹波杜氏」を「三大杜氏」と呼びます。


●酒林(さかばやし)

酒蔵の軒に吊るされている、杉でできたボール状の飾りのことです。

毎年、新酒ができあがると、その合図として酒蔵の軒に緑の杉の球を飾ります。

日が経つにつれ、杉は徐々に茶色味を帯びてくるので、一般的に目にするのは茶色の酒林が多いかもしれません。

また最近では、居酒屋などのオブジェとして飾られていることもありますね。別名「杉玉(すぎたま)」とも呼ばれます。


●BY

英語の「ブリュワリー・イヤー」の頭文字をとったものです。

つまり酒造年度のことですね。

7月1日から翌年の6月30日までの1年間の間に造られたお酒を表す表記で、例えば「25BY」なら、「平成25年に造られたお酒」ということになります。


●三増酒(さんぞうしゅ)

正式名称は「三倍醸造清酒」で、略して「三増酒」となります。

名前のとおり、醸造した日本酒に、更に2倍の醸造アルコールを加えたお酒で、当初は戦後の米不足を背景に仕方なく造られたお酒でしたが、実際はずいぶん長い間造られ続けました。

これが日本酒嫌いを作った一因であるとも言われ、「甘くてベタベタする」「悪酔いする」と言われたのもある意味で当然でした。

ただ、2006年の酒税法改正により、現在この造り方で作られたお酒は「日本酒」を名乗ることはできず、今では存在しない日本酒です。


●左党(さとう)

酒飲みのことを「左党」とよく呼びますが、意外とその理由は知られていません。

これは、大工さんや鉱夫さんが左手でノミを持って右手に槌を持って作業をしたことからついたと言われています。

「ノミ手=飲み手=左手」という一種のだじゃれですね。


●日本三大酒処

日本三大酒処は、兵庫県「灘」、京都府「伏見」、広島県「西条」と言われています。

灘には六甲山から流れ出る「宮水」と言われた名水があり、また輸送に便利な港が近かったことから、日本でも最大級の酒蔵が立ち並ぶ街並みとなりました。

日本酒度の高い辛口のお酒が多く、昔から「灘の男酒」と言われてきました。

 

・灘五郷(なだごごう)

酒処である灘は、西から

西郷(にしごう)

御影郷(みかげごう)

魚崎郷(うおざきごう)

西宮郷(にしみやごう)

今津郷(いまづごう)

に分けられていて、これを合わせて「灘五郷」と呼びます。

各郷ともに有名な大手酒造メーカーがひしめきあっている一大日本酒産地です。

伏見は古くから酒造りが盛んな土地で、伏見区だけでも23もの酒蔵が存在しています。

伏見にも質の良い伏流水が流れていて、甘口のお酒が多いことから「伏見の女酒」として有名です。

西条は、酒造家の三浦仙三郎さんの産まれた地です。

「吟醸酒の父」としても知られる三浦さんですが、もともと酒造りに不向きとされた軟水による醸造方法を発明・指導したことにより、一躍西条の名前が全国に知れ渡りました。

その味わいから「広島の女酒」とも言われています。


●角打ち(かくうち)

酒屋でお酒を買って、その場でお酒を飲むことをや、安く飲める立ち飲み屋のことを「角打ち」と言います。

また、枡でお酒を飲むことを「角打ち」と呼ぶこともあります。角打ちは北九州が発祥の地だと言われています。


●お猪口(おちょこ)とぐい呑みの違い

意外と同じように使うことが多い「お猪口」と「ぐい呑み」ですが、実は異なる酒器です。

ポイントはその大きさにあり、お猪口が小さいサイズ、ぐい呑みはより大きいサイズです。

お猪口は大体において徳利とセットになっていることが多いようです。

ぐい呑みは名前の通り、「ぐいっと飲み干せる」サイズだということですね。


●寒造り(かんづくり)

日本酒の仕込み方法の名称で、1年で最も寒い12月から2月にかけてお酒を仕込むことを言います。

これは、酵母が効果的に働くためには、低温であることが望ましく、今でも大吟醸酒などはこの時期に造られることが多いです。

別名「寒仕込み」とも言われます。


●生一本(きいっぽん)

時々、日本酒の世界ではこの言葉を耳にすることがあります。

もともとは江戸時代、灘や伏見といった有名な酒処の品質を保証する言葉として、「他の地域のお酒ではない」という意味で「生一本」という言葉が使われたそうです。

つまり「単一酒蔵によるお酒」という意味ですが、現在の国税庁の定義では「1つの酒蔵で作られた純米酒」となっています。

ある意味での「原産地呼称」で、実際に日本で最初の「原産地呼称」であると言われています。


●老ね香(ひねか)

日本酒の製造過程や保存の状態によって、日本酒にとって望ましくない匂い、「劣化臭(オフフレーバー※)」が生じることがあります。

「老ね香」はその一種で、日本酒が瓶詰めされた後の保存状態の如何によって発生する匂いで、特に温度の高い状態で保存された場合に発生しやすくなります。

日本酒の「劣化臭」の代表的な不快な匂いだと言われています。

また難しいのが、この「老ね香」と日本酒の古酒に見られる「熟成香」が非常に似通っていて、最終的には個人の嗜好に頼らざるを得ない部分もあります。

このあたりのバランスをどう保っていくのか、日本酒造りの難しさでもあり、作り手の腕の見せ所でもありますね。

※「オフフレーバー」については、お酒基本のページをご参照ください。


●日本酒級別制度

40台後半以上の日本酒ファンの方ならご存じの人も多いのではないかと思いますが、かつての日本酒には「特級」「一級」「二級」などの級別の表示がありました。

この表示は1940年(昭和15年)に始まり、1992年(平成4年)まで続いていました。

その後もしばらくは、「特級」→「特撰」・「一級」→「上撰」・「二級」→「佳撰」などといった、日本酒メーカー独自の基準が存在していましたが、やがて「特定名称酒」※などの現在の分類に収斂していきました。

※「特定名称酒」については「日本酒のタイプ」の項目をご参照ください。

1940年の級別制度が始まった当初は、酒質やアルコール度数などから6級の分類があったそうですが、第二次世界大戦後には3級別に落ち着きました。

ではどのようにして具体的な等級を決めていたのかですが、国税庁の監査官が官能検査※(試飲)を行い、アルコール度数や味わいなどから酒税を振り分けるという、いわば「主観的な」監査でした。

つまり酒質や味わいが等級とリンクしていないケースもあり、これを嫌って敢えて「無鑑査」という表示で販売した酒造所もありました。

宮城県の「一ノ蔵」が有名ですね。

こうした弊害に対する消費者の批判が高まり、1990年(平成2年)に現在の「普通種」「特定名称酒(8種類)」の9分類に変更されたという訳です。

 

※「官能検査」

「官能試験」や「官能評価」とも言います。人間の感覚を用いた検査のことで、「味覚」「視覚」「聴覚」「触覚」「嗅覚」などを使って食品や飲料製品などを判定する検査です。

 


 

その他の日本の酒類について

 

●灰持酒・灰汁持ち酒(あくもちざけ)

醸造した醪を搾る前に、保存性を高めるために木灰を加えて、その後に醪を搾る手法を「灰持(あくもち)」と言い、この手法により造られたお酒を「灰持酒(あくもちざけ)」と呼びます。

古来より日本で伝わるお酒の製造方法の1つで、アルカリ性の木灰をお酒に加えることにより、酸が中和され腐敗を防ぎます。

なお、木灰を加えたあとには、清酒同様に醪を搾るため、木灰が残ることはありません。

途中までの製造手順は日本酒と同様ですが、上記のように木灰を加えて絞るという工程を経るため、酒税法上は「雑酒」の分類になります。

灰持酒は今でも、熊本県・鹿児島県・島根県などで生産されています。

 

赤酒(あかざけ)

熊本県で造られる灰持酒です。名称は、お酒の色が赤褐色をしていることからきていると言われています。

造り方は日本酒とほぼ同じなのですが、精米歩合が90%でほぼ食用米と同様であること・お米の吸水率が低いこと・製麹の日数が
長いこと・醪の発酵期間が倍以上あること等が相違点です。

夏目漱石の小説「三四郎」で主人公が飲むシーンがあることでも知られていますね。

 

地酒(じしゅ、じざけ)

主に鹿児島で生産される灰持酒です。製造方法もほぼ日本酒と同様で、最も清酒に近い灰持酒と言われています。

地元鹿児島では、焼酎を「男酒」、灰持酒を「女酒」として対比していたこともあったそうです。

みりんと同じように、料理用に使われることが多いと言われています。

 

地伝酒(じでんしゅ)

島根県の出雲地方で、古来より作られてきた灰持酒が「地伝酒(じでんしゅ)」です。

他の灰持酒とほとんど同様の手法で作られますが、地伝酒の一番の特徴は醪を仕込む際の水の量が、清酒の仕込み水の約半分しかないということです。

これにより仕上ったお酒は、灰持酒の中でも最も濃厚な味わいと言われます。

また、他の灰持酒同様、料理酒として使用されることも多いそうです。


●骨酒(こつざけ)

日本酒の熱燗に、焼いた魚などを入れて飲むお酒です。「こつしゅ」とも呼ばれます。

ふぐの「ヒレ酒」が有名ですが、魚の種類はなんでもよく、他にもイワナや鮎、鯛などが一般的に使われます。

魚以外でも、マイタケなどを焼いた「マイタケ酒」などといったものもあるようです。

これらのお酒は、日本酒に魚などのエキスが染み出してきて、「日本酒のスープ」とも言えるような芳醇な味わいが楽しめます。

このまま飲んでも美味しいのですが、お好みで塩、すだちやレモン汁などを加えてもオツな味が楽しめます。

お酒を飲む前に火を近づけてアルコールを飛ばす、という所作も趣があっていいですね。


●博多練酒(はかたねりざけ)

古来、日本で作られてきた伝統的な日本酒の造り方を踏襲していて、室町時代の文献にもその存在が記述されていると言われています。

その製法は、長く謎とされていましたが、福岡県の若竹屋酒造さんが近年、この製法を復活させ、現在はこの練り酒を飲めるようになっています。

原材料は、米・もち米・米麹で、アルコール度数は3%から5%程度と軽めですが、絹のような舌触りと甘酸っぱくフルーティな香りが楽しめます。


●八塩折之酒(やしおりのさけ)

これは、日本酒と考えていいのか、そもそも実在したのかどうかも定かではないお酒です。

というのも「古事記」や「日本書紀」に記述のある伝説のお酒で、「日本で最初に作られたお酒」ということになっています。

このお酒のエピソードとして有名な話が、スサノオノミコトの大蛇退治の際にこの「やしおりの酒」が使われたというくだりですね。

日本神話における神の一人であるスサノオノミコトが、ヤマタノオロチという大蛇退治を頼まれて、強いお酒でヤマタノオロチを酔っ払わせた隙に大蛇を斬り殺した、という伝説です。

この「やしおりの酒」ですが、一度できあがったお酒に再度原料を入れて発酵させ、また再度これを繰り返し・・・ということを7回繰り返した強いお酒だそうですが、原料や製法など、詳しいことはよく分かっていません。

ちなみに2016年に公開されて大ヒットした映画「シン・ゴジラ」に、「ヤシオリ作戦」という名前の作戦がでてきますが、この名称の由来はこの「やしおりのさけ」にあると言われています。


●お屠蘇(おとそ)

皆さんご存じのように、正月に1年の邪気を払って長寿を願うために飲む縁起物のお酒、それが「お屠蘇」です。

「お屠蘇」の語源にも諸説あるのですが、一説には「悪鬼を屠(ほふ)って魂を蘇生させるために飲む」ことから「お屠蘇」と呼ばれる
ようになったとも言われています。

発祥は中国で、隋や唐の時代には正月にお屠蘇を飲む風習があったそうですが、現在の中国にはないようです。

日本では平安時代には既にお屠蘇の風習があり、紀貫之の「土佐日記」にも「お屠蘇」の記述が残っています。

お屠蘇の造り方ですが、いわゆる一種の薬草種で、赤酒※やみりん・清酒などに数種類の生薬(山椒、セリ科の植物、シナモン、桔梗など)を漬け込んで作られます。

この組み合わされた数種類の生薬のことを「屠蘇散(とそさん)」と呼びます。

正式にはお屠蘇は、「屠蘇器(とそき)」と呼ばれる一式の酒器類によって提供され、銚子や盃、盃台やお盆がセットになっています。

※「赤酒(あかざけ)」については、「灰持酒(あくもちざけ)」の項目をご参照ください。


●白酒(しろざけ)

「白酒」というと中国の蒸留酒を思い浮かべる方も多いのではないかと思いますが、こちらは日本の「白酒(しろざけ)」で、古くからひな祭りの際に飲まれてきました。

もともとはひな祭りの時に、桃の花を酒に浸した「桃花酒(とうかしゅ)」というお酒を飲んでいて、これが江戸時代中期ころから「白酒」にとってかわっていったそうです。

「白酒」の造り方ですが、原料はもち米を使いますが、これに味醂(みりん)※、あるいは米麹と焼酎などを混ぜて、約1ヶ月間熟成させたのちにすりつぶして作られます。

酒税法上は「リキュール類」に分類され、アルコール度数は10%程度、糖分を多く含み甘みが強いお酒です。

ちなみに江戸時代にこの「白酒」を流行らせたという元祖「豊島屋」さんでは、今でもひな祭りの時に「白酒」を販売しています。

またこの「白酒」ですが、実は読み方によってお酒の種類が変わってきます。

まずは上述したように、「白酒(パイチュウ)」と読めば「中国の蒸留酒」になります。

そして「白酒(しろき)」と読めば、「お神酒(おみき)」と同様、神事の際に供されるお酒を指します。

さらに「白酒(はくしゅ)」と読む場合は「どぶろく」※を指すこともあります。

そして最も勘違いしている人が多いのが、「白酒」(しろざけ)と「甘酒」※を同じものだと思っているケースです。

上述したように「白酒」にはアルコールが含まれていて、いくら飲みやすいと言っても子供に飲ますことは厳禁です。

一方で「甘酒」はほとんどはアルコールが含まれておらず、アルコール度数0%の甘酒なら、子供が飲んでも差し支えありません。

※「味醂」「どぶろく」「甘酒」の詳細については、それぞれ日本酒の項目をご参照ください。


●強い日本酒

前述したように2006年に酒税法が改正され、アルコール度数が22度以上の日本酒は「日本酒」を名乗れなくなりました。

つまり2006年以前にはアルコール度数22度以上の日本酒が存在していたということです。

各蔵元でいくつかの銘柄が世に出ていたのですが、現在でも販売しているものとして有名なものが「越後武士(えちごさむらい)」です。

新潟の玉川酒造で造られる「越後武士」ですが、アルコール度数は46度もあり、かつては「最強の日本酒」を名乗っていました。

2006年の酒税法改正以降は日本酒を名乗れませんが、現在でも「リキュール」としてこのお酒は販売されています。

日本酒と同様の製法で造られ、途中の工程で醸造用アルコールを加えていると言われますが、詳しい製法は企業秘密となっており分かりません。

日本酒の甘辛を表す「日本酒度」※で表示すると、日本酒度+66といいますから超々辛口ということになります。

とはいってもしっかりと日本酒の風味が感じられる仕上がりで、日本酒の甘ったるい味わいが苦手という人には好まれるかもしれません。

度数が強いので、ロックで飲んだりパーシャル※でストレートというのもオススメです。

かつては地元新潟でしか飲めない門外不出のお酒でしたが、今はネットでも入手可能になっています。

「強烈に強い日本酒(のようなお酒)」を飲みたい方は、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

※「日本酒度」については前述の項目を、「パーシャル」については「お酒基本」のページをご参照ください。


●沖縄の日本酒

沖縄のお酒と言えば、まず「泡盛」を思い浮かべる方が多いと思います。

しかしながら、実は沖縄でも日本酒造りは行なわれていて、沖縄で唯一の日本酒が「黎明(れいめい)」です。

その日本酒造りを行なっている酒蔵は、沖縄本島の中部・うるま市にある「泰石(たいこく)酒造」さんで、ここでは「はんたばる」というブランドの泡盛も生産しています。

本来、日本酒は「寒造り」とも呼ばれることから、年中を通して温暖多湿な土地では日本酒造りは難しいとされています。実際、沖縄も含めて全国全ての都道府県で日本酒造りは行なわれていますが、真冬でも雪が降らないほどの温暖な気候は沖縄県だけです。

「泰石酒造」の創業者である安田繁史さんは、敢えてこの難題に挑戦し、50年以上前から日本酒造りに取り組んでいます。

かつて長崎県にあった「黎明酒造」さんからの技術提供を受けて、年間を通して日本酒が造れる「四季醸造方式」を導入、温暖な土地の沖縄で現在でも日本酒を醸し続けています。

かつては沖縄県で美味しい日本酒を飲めるお店を見つけることは困難でしたが、観光客が増え続けていることもあり、本土に比べても遜色ない本格的な品揃えの日本酒専門店も増えてきました。

ウィスキーの世界でもそうですが、お酒造りの技術は日々向上しており、極端な言い方をすればどのような土地でもお酒造りが可能なほどにまで進化しています。

ある意味で「温暖多湿な土地での日本酒造り」の先駆けとも言える沖縄の「黎明」、興味のある方はぜひチャレンジしてみてください!

 


 

日本酒の最新のトレンドについて1

 

上記でも触れましたが、日本酒の消費量は1970年代をピークにして減少傾向が続いています。

一方で、輸出量は9年連続で増加しており(2019年11月現在)、海外での和食ブームや国際的コンクールでの日本酒の受賞など、世界的な日本酒の評価はかつてないほどに高まっています。

実は、上記のように日本酒の消費量が減少していることから、基本的には日本酒の製造免許の新規発行は現在では認められていません。

しかしながら海外での需要が高まっていることから、海外向けに特化した日本酒メーカーの新規参入を認める方向で、酒税法改正案を通常国会に提出予定であることがニュースになりました。

現行の酒税法では、規定で「日本酒の事業者は製造場ごとに年6万リットル以上生産しなければ免許を取得できない」ことになっており、この規定が事実上、日本酒生産者の新規参入を阻んでいます。

また、近年では「日本酒を輸出する」という発想すら飛び越えて、海外で地元の原料を使って日本酒造りを始める動きも出てきています。

実際、若手の日本人がフランスでの日本酒造りに着手・醸造を始めたという話もあり、海外での日本酒ブームはまだまだ続きそうです。

こうした動きは、海外でのアルコール市場の取り込みを図ろうとする政府与党の意向が見て取れますが、そのような政府方針は抜きにして、日本酒ファンとしてはまた新たな日本酒造りの挑戦が見られるのかと思うと、楽しみで仕方ありませんね。

早ければ、2020年4月1日にも改正酒税上が施行されるのだとか・・・。

日本酒を取り巻く、久しぶりの明るい話題です!

 


 

日本酒の最新のトレンドについて2

 

意外なことですが、日本酒造りとその原料となる米作りは、長らく分離された状態が続いていました。

つまり、酒蔵が米作りをすることはなく、逆に米の農家が酒造りをすることも少なかったということです。

この理由がどこにあるのかということですが、これには日本の戦後史を紐解く必要があります。

戦後GHQ(連合国軍総司令部)主導で農地改革が行なわれ、さらに1952年の農地法制定により、多くの酒蔵では田んぼを持てない状況が続きました。

別の観点からは、日本の「縦割り行政」の弊害も指摘されています。

酒造りは国税庁、米作りは農林水産省の所管ということですね。

本来、米作りと酒造りは切り離して考えられない工程であるはずですが、こうした経緯からそれぞれが別々に作られる状態でした。

しかしながら近年、こうした状況が変わりつつあります。

1つには農家の高齢化や耕作放棄地の増加などといった環境の変化です。

こうした背景を受けて、2000年代以降徐々に農地の規制緩和が進み、田んぼを持たない酒蔵にも米作りのチャンスが広がっていきました。

もう一つは目覚ましい日本酒の海外進出です。

日本酒の輸出量は10年連続で過去最高を記録し、2019年には2009年比較で3倍以上の伸びとなっています。

きっかけの1つが、2013年の「和食」のユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産登録にあると言われています。

和食のベストパートナーとしての日本酒が脚光を集めたという訳ですね。

また国内においても、日本酒の国内出荷量こそピーク時の1/3ほどに減ったものの、吟醸酒や純米酒といった「特定名称酒」※に限って言えば、その消費量は着実に増えています。

それだけ人々が「本当に美味しい日本酒」を求めている現れなのかもしれません。

こうした様々な背景が重なり、日本酒の「原料としてのお米」に注目が集まりました。

日本酒と並び称される醸造酒・フランスワインですが、その銘醸地であるブルゴーニュでは自らがぶどう畑を持つ小規模ワイン生産者、「ドメーヌ」が一般的です。

これからの日本酒が目指すべき一つの方向性がこの「ドメーヌ」スタイルで、自らが作りたい日本酒のビジョンを描きながら、その土地土地に根付いたお米を酒蔵自身がが作っていくというスタイルです。

これからの日本酒造りは、「テロワール(土壌)」にもこだわって、理想のお酒を醸すために最適のお米を酒蔵自身が作り出すという時代に入っていくのかもしれませんね。

※「特定名称酒」の詳細については、「日本酒」のページをご参照ください。

 


 

日本酒の最新のトレンドについて3

 

上記の「日本酒の最新のトレンド1」でも触れましたが、現在世界的に日本酒ブームと呼べるような状況になっています。

これに同調するようにして、世界各国でも現地で生産される日本酒の蔵元が増えていて、現在世界で40以上の酒蔵があると言われています(2020年3月現在)。

ヨーロッパ・オセアニア・アジア・南北アメリカなど、ほぼ全世界で日本酒は生産されていますが、中でも群を抜いて酒蔵が多いのが北米エリアです。

北米の中でも特にカリフォルニア周辺に酒蔵が集中しています。

その理由は、1970年代後半から大手日本酒メーカーがこの地に進出していて、日本酒の認知が進んでいたこと

カリフォルニア米が入手しやすい土地であったこと

クラフトビールが生れた土地でもあり、進取性に富んだ土地柄であったことなどが挙げられます。

さらに新たなトレンドとして、日本酒を好んで飲む習慣がある海外の富裕層向けに、超高級日本酒を販売する業者も現れました。

コンセプトとしては、「晩餐会などの場に集まるセレブ向けに、シャンパンではなく日本酒を」ということだそうです。

確かに、ワインやシャンパン、コニャックやウィスキーなどは、オークションで何百万円という価格帯で取引されることも珍しくありませんが、日本酒ではほとんど耳にしません。

かといって、日本酒のお酒としての完成度が劣っているということは決してなく、むしろ敢えて高価格帯を提示することで、日本酒のブランド力を高める狙いがあるようです。

このような日本酒ですが、価格帯は数十万円が標準だとか・・・・

なかなか庶民には手が出ない値段ですが、一度は飲んでみたいですね。

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