お酒についての基本知識
概要
今更ながらですが、お酒とは「アルコールの入った飲み物」のことです。
そして、アルコールとはエタノール(エチルアルコール)を含むアルコール類の総称であって、アルコール=エタノールではないということですね。
また、エタノールはアルコール類の中でも唯一、飲んでも害にならないアルコールと言われていています。(もちろん飲み過ぎはダメですが)
つまりお酒の中に含まれているアルコール類とはこの「エタノール」ということになります。
ちなみに、このエタノールを日本語に訳すと「酒精」となります。
エタノール以外のアルコール類は飲んではいけないということですが、昔学校で習った「メチルアルコール(メタノール)は目が散るからのんではいけない」というのは、ある意味で正しいということですね。
世界各国の法律などによりその区分の仕方は様々ですが、一般的には製造方法により下記のように3分類されます。
(日本の酒税法上は、1%以上のアルコール度数のものを「酒」と定義しています。)
<世界のお酒の地域による分類>
お酒の分類には様々な手法があり、一概にここで全てを網羅することは困難ですが、一つの切り口として「製法による分類」があげられます。
ここでいう製法とは、下記のような厳密な製法(発酵、蒸留など)ではなく、その前段階での「製法」のようなもので、やや緩い分類になるかもしれません。
具体的にみていきますと、まずは西欧諸国を中心とした、ワインやブランデーを前提とした、果実を発酵、蒸留してお酒を造る「ワイン」圏内のエリア。
次に、欧州から中東、さらにアフリカ大陸までに及ぶ広い地域で造られる、ビールやウィスキーなどを前提とした、穀物の種子を発芽させ、そこに含まれるデンプンを糖化してから発酵、蒸留してお酒を造る「モヤシ利用のお酒」圏内。
そして、日本を含む東アジア一帯で造られる、日本酒や焼酎を前提とした、麹菌を使ってデンプンを生成し、これを発酵、蒸留することでお酒を造る「麹菌利用のお酒」圏内。
これら以外にも、後述する「口噛み酒」や、樹液を原料としたお酒、動物の乳から造られるお酒など、世界にはこれらの分類に当てはまらないお酒も数多くありますが、大きくは上記の3分類に分けられると言ってもいいかと思います。
醸造酒
原料はまず、そのタイプによって「糖分のお酒」と「デンプンのお酒」に大別されます。
ぶどうやリンゴなど、原料そのものにはじめから糖分を含んでいる「糖分のお酒」。
また麦や米など、もともとの原料には糖分が含まれていませんが、何らかの方法によりデンプンを生成し、そのデンプンを糖分に変えてから造られる「デンプンのお酒」です。
原料となる果実や、麦、米などを「酵母」と呼ばれる微生物(菌類)によりアルコール発酵させたお酒を「醸造酒」と呼びます。
ちなみに、「酵母」を英語で表すと「イースト(Yeast)」となります。
酵母は、自然界にたくさん存在している微生物で、例えば発酵力が強くて、パン作りに向いているものを選び出して培養した酵母が「イースト菌」という訳です。
つまり、パンを作るときに使われる代表的な酵母が「イースト菌」ということですね。
従って、ワインを造る際に適している酵母、日本酒を造る際に適している酵母など、それぞれのお酒に適している酵母を使い分けてお酒は作られるということですね。
ちなみにですが、日本においては「イースト」と言えば自然と「イースト菌」が連想されるため、パン作り以外の酵母を意味する際には、あまり英語の「イースト」を使うことはありません。
よく知られたものでは、ワインやビール、日本酒などがこのカテゴリにあたります。
醸造酒はその醸造方法により「単発酵」「複発酵」に分けられ、「複発酵」はさらに「単行複発酵」と「並行複発酵」に分けられます。
単発酵酒
ワインに代表されるように、原料自体に糖分が多く含まれる場合、これに酵母を加えてあげれば、そのままアルコール発酵が進みます。
この種のお酒を「単発酵酒」と呼び、ワイン以外では、りんごを原料とするシードルや、モンゴル等で作られる「馬乳酒」等がこれにあたります。
複発酵酒
単発酵酒に対し、原料が米や麦などの穀物の場合、まず原料に含まれるデンプンを糖に変えて(糖化)からアルコール発酵させます。
この糖化とアルコール発酵の2つの工程を経て作られるお酒を「複発酵酒」と呼び、ビールや日本酒などがこれにあたります。
また複発酵酒はさらに「単行複発酵酒」と「並行複発酵酒」に分けられます。
単行複発酵酒
原料に含まれるデンプンをまず糖化し、その後にアルコール発酵を行って作られる複発酵酒です。
主なお酒ではビールがこれにあたります。
並行複発酵酒
単式複発酵酒に対し、糖化とアルコール発酵の2工程を同時に行う複発酵酒を、文字通り「並行複発酵酒」と呼びます。
主なお酒では、日本酒や中国の黄酒(ホアンチュウ)等がこれにあたります。
この発酵によって作られる醸造酒ですが、できあがるアルコール度数には上限があり、20度前後が限界と言われています。
これは、アルコール発酵を促す酵母自体が、度数が20度を超えると死んでしまうためと言われています。
従って、世界各国で様々な醸造酒が作られていますが、そのほとんどのお酒はアルコール度数20度以下ということになります。
世界三大美酒
「世界三大・・・」というのはどこの世界にもあり、お酒のカテゴリでも蒸留酒を指して表現されることもあります。
ここでは一般的に使われてることが多い、醸造酒の中での「世界三大美酒」を挙げさせてもらいます。
※「スコッチ」「コニャック」「紹興酒」を「三大美酒」とする説もありますが、醸造酒で統一されている下記の説を採用させていただきました。
・日本酒(純米吟醸酒)
単に日本酒ではなく、「純米吟醸酒こそが三大美酒に相応しい」という声もよく聞きます。
いずれにしても日本酒が挙げられることは多いようです。
・フランスワイン
こちらも日本酒同様ですが、フランスの中でも有名産地を限定して三大美酒とする声も多いですね。
・紹興酒
中国の醸造酒・黄酒(ホアンチュウ)の中でも、浙江省紹興市近辺で作られたお酒でなければ紹興酒は名乗れません。
この点、上記の2つの三大美酒と違って、より厳格に範疇が決められているのが面白いですね。
蒸留酒
1.でご説明した醸造酒を蒸留させたお酒を「蒸留酒(スピリッツ)」と呼びます。
「原料となる液体(もろみ)を熱することで蒸発した気体を抽出し、冷やして再び液体にする」作業を指して蒸留と呼びます。
ではなぜわざわざこのような工程を行うのかということですが、これは水とアルコールの沸点(沸騰温度)の違いがネックになっています。
みなさんご存じのように水の沸点は100度、アルコールの沸点は78度です。
従って、原料となる液体(もろみ)を徐々に熱していくと、78度に達した段階でアルコール分がまず蒸発していきます。
この蒸発した気体を冷やして再び液体に戻せば、より純度の高い(度数の強い=水分が少ない)アルコールが抽出されます。
(昔、理科でやった実験を覚えている方も多いかと思います。)
つまり蒸留とは、「アルコール度数をより高めるための行程」ということですね。
この蒸留により得られるアルコール度数ですが、蒸留のやり方によっては90度以上の液体を得ることも可能です。
ただ、これをそのまま飲むには、あまりにも強すぎますので、通常は水を加えて(加水)度数を調整し、例えばウィスキーの場合であれば、大体40度~50度前後に度数を調整した上で販売されます。
また蒸留には、主として「単式蒸留」と「連続式蒸留」の2つの方法があります。
単式蒸留
文字通り、1回ずつしか蒸留できない単式蒸留器(ポットスチル)を使って蒸留する蒸留方法で、古くからある伝統的な蒸留のやり方です。
アルコール度数をあげようとする場合、これを繰り返し行うことになります。連続式蒸留と比べると、より原料の風味が残される蒸留方法と言われています。
この方法で蒸留されるお酒は、スコッチのモルトウィスキー、フランスのコニャック、日本の本格焼酎(乙類焼酎)、メキシコのテキーラ等があります。
※上記の全てのお酒が100%単式蒸留という訳ではありません。
また、単式蒸留はその製法により、「常圧蒸留」と「減圧蒸留」に分けられます。
常圧蒸留
蒸留器の内部の圧力は、地上と同じ1気圧です。この状態での醪(発酵液)は、アルコールと水分、原料液が混ざっているため、約85度から95度で沸騰します。
この沸騰させた液体には、アルコールと一緒に多くの原料成分が含まれていて、原材料の特徴がはっきりとした風味豊かな酒質のお酒となります。
この製法により作られる代表的なモルトウィスキーやコニャックなどです。
減圧蒸留
常圧蒸留に対し、減圧蒸留は文字通り蒸留機の内部の圧力を0.1気圧ほどに減じます。
これにより、醪(発酵液)は約45度から55度で沸騰するようになり、これにより得られるお酒は、原料由来の成分が穏やかで軽快な酒質に仕上ります。
この製法は昭和40年代後半から導入され、様々な嗜好に合わせて作り分けられています。
日本の焼酎などは、この双方の製法により作られています。
連続式蒸留
こちらも文字通りですが、連続式蒸留機(パテントスチル、コラムスチル)を使用して蒸留する方法で、1つの蒸留機の中で連続して蒸留を行えるので、効率的にアルコール度数の強いお酒を生産することができます。
単式蒸留と比べて歴史は浅く、19世紀に入ってから使われるようになりました。
こちらの方法で作られる主なお酒は、アメリカのバーボン、日本の甲類焼酎、グレーン・ウィスキー、ウオッカやフランスのアルマニャック等です。
※上記の全てのお酒が100%連続式蒸留という訳ではありません。
カフェスチル(カフェ式蒸留機)
連続式蒸留機の一種で、1830年にアイルランドのイーニアス・カフェ氏が従来の連続式蒸留機を改良したものです。
その後、連続式蒸留機も次々と改良を重ね、今ではこのカフェスチルは効率が悪く、操作の難しい蒸留機となってしまいましたが、原料の風味を豊かに残せることから、現代でもこだわってこれを使う蒸留所もあります。
その代表的な蒸留所が日本の「ニッカ」で、これは創業者の竹鶴政孝氏の強いこだわりから導入されたと言われます。
現在、世界で稼働しているカフェスチルは10本にも満たないと言われており、希少な蒸留機となっています。
〈アルコール度数の区分〉
みなさんもご存じのように、アルコール度数はお酒に含まれる酒精分の強さを表す単位で、日本では「%」「度」「°」等と表記されます。
数字が多いほどアルコール度数が強いということで、仮に度数100%のお酒があったとしたら、それは一切水分を含まない、純粋なアルコールだけの液体ということになります。
では世界でも同じような尺度で度数を表記するのかというと、主に下記の2種類の基準があります。
ブリティッシュ・プルーフ(UKプルーフ)
主としてイギリスで用いられるアルコールの単位で、100%のアルコールは「175プルーフ」となります。
従って、度数をUKプルーフに変換しようとする場合、1.751倍(簡易的に1.75という数値を使用することが多いですが)
すればいいことになります。
逆にUKプルーフを度数に変換しようとする場合は、1.751で割ればいいということですね。
例:100UKプルーフ÷1.751=57.1%57.1%×1.751=100UKプルーフ
アメリカン・プルーフ(USプルーフ)
こちらは主としてアメリカで用いられるアルコールの単位で、100%のアルコールは「200プルーフ」となります。
つまり単純に2倍すればいいので、逆にUSプルーフを%に換算する場合は2で割ればいいということです。
UKプルーフに比べると、こちらは分りやすいですね。
(例:80USプルーフ=40%)
また、まれに「G.L.」という度数表記がみられることがありますが、これはフランスの化学者、ゲイ・リュサックの頭文字をとった表記で「ゲイ・リュサック度数」とも呼ばれます。
こちらは%と同じ基準ですので、例えば「43°G.L.」という表記があれば、「43%」ということです。
ただ、この表記はかなり古いオールド・ボトルでしかなかなか見られず、現行のウィスキーはほとんどが「%」表記が中心です。
〈世界三大蒸留酒〉
こちらも諸説ありますが、一般的には「ウィスキー」「ブランデー」「白酒」を「世界三大蒸留酒」と呼んでいます。
ウィスキー・ブランデーは世界各国で生産されていますが、「白酒(パイチュウ)」※のみは中国独自の蒸留酒です。
中国では、それだけ盛んに愛飲されている蒸留酒だということですね。
※「白酒(パイチュウ)」については、別途ご紹介します。
〈世界4大スピリッツ〉
カクテルのベースとしても頻繁に使われるスピリッツですが、「ジン」「ウオッカ」「テキーラ」「ラム」を指して「世界4大スピリッツ」と呼んでいます。
それぞれの詳細については、別のページでご紹介します。
混成酒
上記の醸造酒と蒸留酒をベースとして、これに植物の皮や果実、香料や糖分等の副原料を加えて作られたお酒を混成酒と言います。
有名なところだとリキュールがこの分野の代表的なお酒です。
そのままリキュールの分類にもつながりますが、主として「フルーツ系」「香草・薬草系」「ナッツ・種子系」「特殊系」などの様々なジャンルがあります。
●インフュージョン(浸漬酒・しんせきしゅ)
最近よく耳にすることが多くなった「インフュージョン」という言葉ですが、日本語にすると「漬け込む」「注入する」「吹き込む」などの意味になります。
お酒の世界で言えば「ウオッカや焼酎などの蒸留酒に、植物の根や果皮、ハーブや香辛料や薬草などのエキス、果実類を漬け込んだお酒」ということになります。
日本で有名なものだと梅酒などは自分の家でもよく作られていますね。
一度漬け込んでおけばそれほど手間もかからないことから、クッキング感覚で盛んに作られるようになったインフュージョン技法によるお酒造りですが、実は「混成酒」そのものとも言えます。
実際に商品として売り出されているお酒にもインフュージョン技法で造られたリキュールもあります。
最近の使われ方として、家庭やBARなどで作る「自家製」のお酒というニュアンスが強いように思います。
上述したとおり、「インフュージョン」という技法にプロもアマもありません。
近年では自家製で、様々な自分なりの解釈を加えて造られるお酒を総称して、「インフュージョン」と呼ぶことが多いようです。
インフュージョンの技法に特にルールはなく、自分のお好みでいろんなお酒にいろんな副材料を加えればOKです。
ただ、1日に1回程度は攪拌をする、直射には当てない、熱い場所にも置かない、出来上がったら丁寧に濾過をして濁りを取り除く、ぐらいが基本でしょうか。
アルコール度数にもよりますが、強いお酒ができあがった場合、そのまま飲んでも構いませんが炭酸で割ったりするのもいいですね。
お酒のいろんな可能性を感じさせてくれる技法、それが「インフュージョン」です。
番外編.カクテル(BAR)
お酒のジャンルとしては含まれませんが、上記の醸造酒・蒸留酒・混成酒に加えて、フレッシュ・フルーツや様々な副材料をミックスさせて作られるのがカクテルです。
言い換えれば、「お客さんの目の前で作られる混成酒」です。
カクテルはなるべく早く飲む方がいい、と言われますが、これはカクテルが出来上がった時点から味の劣化が始まるからであり、「一瞬の芸術」とも言われる所以でもあります。
ロングカクテルについては、1杯を飲み干す平均目安時間は30分程度と言われています。
カクテルの製法としてはビルド、シェーク、ステア等の様々な技術があり、またお酒を飲む時間の長短によりロング系・ショート系などに区別されます。
またカクテルには、その鮮やかな色合いを見ながら、目で楽しむという楽しみ方もありますね。
日本でもバーでカクテルを飲む方が多いと思いますが、日本のバーテンダーの技術の高さは世界的にも有名です。
バーテンダーやバーによってはオリジナルカクテルも多数存在し、基本カクテルだけでも全てを把握することはなかなか難しいですね。
オーダーに困ったときには、目の前にいるバーテンダーの方々に素直に質問して、自分の好みやそのときの気分を伝えて、ベストなカクテルを作ってもらいましょう。
BAR
BARにも様々な形態があります。
日本では、お酒をグラスで一杯から提供する酒場を「BAR」と呼び表すことが多く、一般的にはカウンターメインのお店が主流です。
和製英語になりますが、上記のようにお酒をグラスで一杯から提供することから、一杯を意味する「1shot」が転じて、日本では「ショット・バー」とも呼ばれます。
よく類似の酒場としてイギリスの「パブ」が比較されますが、日本で言うところの居酒屋とBarを足して2で割ったような雰囲気なのかもしれません。
BARの形態にもよりますが、日本のBARはもう少し静かな雰囲気のお店が多いように思います。
いずれにしても、どちらが優れているという議論には馴染まないですね。
〈BARの語源について〉
こちらも諸説あり、確定したものはありませんが、いくつか有名な説をご紹介します。
主としてアメリカにおいて言われてきた説ですが、一つ目は西部開拓史時代、客が乗ってきた馬をつなぎ止めておくための横木(BAR)から転じて酒場を「BAR」と呼ぶようになったとする説。
2つめは、客が勝手にバックバー※においてあるボトルを持っていかないよう、カウンターに横木を置いて距離を離し、この横木(カウンター)を「BAR」と呼ぶようになったとする説。
3つめは、交通手段の主流が馬でなくなりつつあった頃、馬をつなぎ止めておくための横木を取り外し、これをカウンターの下に設置したところ、酔っ払い客が片足を乗せるのにちょうどいいと評判になり、これを「BAR」と呼ぶようになったという説。
いずれの説もロマンを駆り立てられるようで、何となくわくわくしてきますね。
※「バックバー」とは、カウンターと相対する壁面(お客さんからすると真正面)に飾られているボトル棚のことを指します。
「バックバー」を見れば、そのお店の特徴が一目で分かる、いわば「BARの顔」です。
(バーテンダーについて)
「BAR」でアルコール類を提供し、あるいはお客さんの接待などを行う人を「バーテンダー」と呼びます。
その語源は「BAR」と「tender」からなると言われていて、直訳すると「酒場で世話をする人」という意味ですね。
ヨーロッパなどでは「バーマン(barman)」と呼ばれることが多く、女性の場合には「バーメイド(barmaid)」などと呼ばれることがあります。
意訳すれば「BARを優しく守る人」であり、お客さんの心に寄り添った気遣いなどから「心の名医」とも言われます。
ちょっと物騒な話になりますが、「自殺をしようとする人が、最後に立ち寄るところがBAR」だと言われていて、無意識のうちに「心の
名医」に話を聞いてもらいたいと思うのかもしれませんね。
ちなみにですが、「バーテンダー」を「バーテン」と略して呼ぶのは大変失礼な言動と言われていますので、お気を付けください!
〈BARの種類について〉
こちらも明確な定義や区分があるわけではありませんが、やはりタイプの異なるBARが存在しているというのも事実です。
下記に大まかなBARのタイプをご紹介しますが、最も簡単なBAR区分は、「ホテルのBAR」とそれ以外のBAR、「街場(まちば)
のBAR」です。
●オーセンティックバー
英語で「authentic」と表し、意味は「正統の」とか「本格的な」「本物」などと訳されます。
従って直訳すると「本格的なBAR」という意味になり、お酒の品揃えも豊富、カクテルもきちんと作れるバーテンダーが揃っていて、バーコート※をびしっと着こなしている・・・。
そんな雰囲気を想像させるBARが「オーセンティック・バー」です。「銀座のBAR」というとイメージしやすいかもしれないですね。
静かな雰囲気の中で、お酒をじっくりと味わうために来店する・・・
どちらかというと少人数向けのBARと言えるかもしれません。
このタイプのBARは、本格的な料理を出すお店も少なくありません。
※「バーコート」とは、バーテンダーのユニフォームのようなものです。
よく見かけるのは白いシャツに黒いベストの組み合わせですが、白いジャケットを羽織っていたり蝶ネクタイをしていたりと、様々なパターンがあります。
●ホテルのメインバー
文字通り、そのホテルに設置された、ホテルを代表するBARです。
大きなホテルの場合、ホテル内に複数のBARがあることもありますが、「メインバー」の名の通りそのホテルの代表的なBARです。
ホテルのメインバーには、世界的にも名を知られているような、有名なBARもたくさんありますね。
こういったホテルのBARは、宿泊客だけでなく外部からのお客さんも受け入れてくれるところが多いです。
一般的にはオオバコ(広いお店)で、カウンターもありますが、ソファなどのラウンジ席も多く用意されていて、ピアノやハープなどの生演奏をしてくれるところもあります。
総じてゴージャスで、大人の雰囲気が店内には漂っています。ホテル内にあるレストランなどから、フードのデリバリをしてくれるお店もあります。
ちょっと気を付けないといけない点は、やや高めの値段設定が多いというところですね。
●ルーフトップバー
ほとんどがその建物の最上階に位置するBARで、外の景色(夜景)を楽しみながらお酒が飲めるBARを「ルーフトップバー」と呼びます。
高い建物の最上階というと賃料も高くなるため、日本での「ルーフトップバー」は、ほとんどが「ホテルバー」であることが多いです。
そのムーディな雰囲気からか、お客さんのほとんどはカップル客で、男性一人ではなかなか入りにくいかもしれません(笑)
●ジャズバー
ジャズを聞きながらお酒が楽しめるBARです。
レコードなどでジャズをかけながらお酒を飲むというパターンもありますが、「ジャズバー」という名前をつける場合は、規模の大小に関わらず生演奏を楽しめるお店が多いです。
●ダイニングバー
お酒そのものを楽しむだけでなく、お酒と食事を一緒に味わうためのBARです。
居酒屋ほどくだけた雰囲気ではないものの、大人数で料理やお酒を楽しめるように、ボックス席なども併設されているお店も多いです。
一人でお酒を楽しみたい、という向きには、ちょっと居心地が悪い空間かもしれません。
●カジュアルバー
カジュアルな雰囲気で、気軽にお酒を楽しめるBARです。
ドレスコード※もほぼなく、わいわいガヤガヤ多少大きな声で騒いだとしても、咎められる可能性が低いとも言えます。
イメージとしては、若者が賑やかに飲んでいるBARという感じですね。
明朗会計を強調するために、「キャッシュ・オン・デリバリー」※を導入しているお店も多いです。
このタイプのBARは、スタンディング形式でやっているところもあります。
ちょっとイメージが違いますが、「パーリーピーポーが集まるクラブ」に近いかもしれませんね。
●プールバー
ビリヤード台がおいてあって、ビリヤードをしながらお酒が飲めるBARです。
30年以上前になりますが、映画「ハスラー2」がヒットした際には日本中でこの「プールバー」が流行りましたね。
その当時ほどの熱狂はありませんが、現在では「ダーツ・バー」が近いものかもしれません。
上記の分類に当てはめるならば、「カジュアル・バー」になるかと思います。
●ビーチバー
海岸沿いの海辺や、ホテル内であればプールに隣接しているBARです。
ビーチでの休憩やちょっとした食事などに使われます。海などの景色をみながらお酒が楽しめるという贅沢なBARです。
場所柄、水着でもOKというお店が多いですね。
●フレアバー
トム・クルーズ主演の映画、「カクテル」をご覧になった方にはイメージしやすいかと思います。
あの映画でトム・クルーズがボトルを曲芸のように振り回したり投げたりして作っていたカクテル、あの技法を「フレア・バーテンディング」と呼びます。
フレアカクテルをメインで提供しているBARを「フレアバー」と呼びます。「フレア」の技法は「ジャグリング」とも呼ばれます。
●ミクソロジーバー
近年のBARのトレンドといっても過言ではないでしょう。
従来のバーテンダーが使う器具だけにとどまらず、最新の料理の機材や機械などを駆使して、アルコールに様々な香りやニュアンスを加えて作られるカクテルを提供するBARを「ミクソロジーバー」と呼びます。
ミックス」=混ぜ合せる、と「オロジー」=科学を一緒にした造語で、これまでのカクテルの常識が吹き飛んでしまうようなカクテルが出されてきます。
●スタッグバー
英語で「stag」とはシカの雄(特にアカシカの雄を指すことが多い)を意味し、そこから転じて「男性だけの社交的集まり」を指すことがあります。
従って「stagBAR」というのは「女人禁制」のBARで、かつてはこのような形態のBARがいくつか存在していました。
しかしながら現在では、男女差別とも受け取られかねないこのようなBARは激減し、今現在日本で「stagbar」があるのかどうかも定かではありません。
かつて「酒場は男だけが楽しむ場」という偏見があった時代の名残なのかもしれませんね。
ちなみに女性限定のBARがあるのかどうか、ということですが、こちらは少なくとも20年ぐらいまでは銀座にもありましたが、今もお店があるのかどうかは分かりません・・・
●会員制バー
会員登録した人、あるいはその人の紹介を受けた人しか入れないBARが会員制BARですが、実は中身は大きく2つに分かれます。
1つは上記の通り、正真正銘の会員制のBAR。
もう1つは、「会員制」というカンバン(表札)は掲げているものの、実体は普通のBARと何も変わらず、泥酔者の入店を断る口実として「会員制」と名乗っているBARです。
これも、BARで楽しむお客さんが、気持ちよくお酒を飲んでもらえるように、というお店の工夫の一つですね。
「ドレスコード」について
「ドレスコード」という言葉自体は、特にBAR専門の用語という訳ではなく、例えば結婚披露宴や葬式の服装など、その場に相応しい服装の基準のことを指しますね。
上記のような催しの場合、ほとんどの方は常識的に相応しい服装の基準を思い浮かべるかと思いますが、BARに訪れる際に服装を気にする人はあまりいないようです。
ただし、上記のようなBARのタイプによっても「ドレスコード」は違ってきて、ざっくり言えば、上の区分に行けば行くほど「ドレスコード」は求められることが多くなります。
ですので、「オーセンティックバー」や「ホテルバー」などに行く際には服装にも気を遣わなければならないということですね。
「ドレスコード」というと堅苦しく聞こえてしまいますが、要はその店の雰囲気を壊さないためのマナーだと考えれば簡単です。
みんながきっちりとして服装で来ているお店に、一人だけ短パン・ビーサンでいったら場違いですよね。
BARとは、そういった大人の気遣いが求められる場所でもあります。
ではそういうお店にはどういった服装で行けばいいのか、ということですが、男性は比較的簡単です。
今では「クールビズ」で夏場はジャケットを着ない会社も多くなってきましたが、ジャケット・革靴で行けば、たいがいのお店は入れてくれます。
それでも心配ならば、ネクタイ着用(要は冬場のスーツですね)でいけば完璧です。
女性の場合、ファッションに関心のある人が多く、普段からお洒落をして外出するのでまず問題ありませんが、お酒の匂いをダメにしてしまう恐れがあることから、「香りの強い香水はNG」だと言われます。ご注意ください!
「キャッシュ・オン・デリバリー」について
お金を支払う際、最後にまとめてお会計をするのではなく、お酒が一杯ずつ出てくるその都度、現金で支払う方法を「キャッシュ・オン・デリバリー」と言います。
カジュアル系のBARで用いられることが多く、お会計の心配をしながら飲まないで済む点が気楽でいいですね。
〈BARのチャージについて〉
「チャージ」とは席料のことで、「テーブルチャージ」とも呼ばれます。要するにお店に入って座っただけで発生する料金のことですね。
値段設定はお店によって様々ですが、家賃の高いエリアにあるBARほど「チャージ」は高くなる傾向にあります。
一概には言えない部分もあるのですが、日本でも随一の社交街、銀座の「オーセンティックバー」で一人あたり1000円~1500円というところでしょうか。
また同じような言葉に「チャーム」というものもあり、こちらは「お通し代」を意味します。
サービス内容としては同じで、どちらか一方がお会計時に加算されます。
さらにホテルバーの場合、これらに加えて「サービス料」として、お会計の10%が加わることが多いです。
〈BARでのマナーについて〉
蛇足ですが、最後にバーでのマナーについて触れておきます。
・バーでは大声を出さない、はしゃがない。静かにお酒を飲む。
・バーでは酔い潰れない。酔うためにお酒を飲まない。
・バーでは長居をしない。混んできたらさっとお店を出る。
この3つが守れたら、バーでは上客として喜んで迎え入れられます。
バーはあくまでも「公共の場」であることを意識して、美味しいカクテルを飲みながら、楽しい時間を過ごしてください!
〈BARでの用語について〉
BARでの隠語とまではいかなくても、BARでしかなかなか耳にすることのない用語がいくつかあります。
知っておくと便利な用語もありますので、下記にいくつかご紹介していきます。
●パブミラー(バーミラー)
BARやカフェ(あるいは個人宅でもインテリアとして飾っている人もいるかもしれません)の壁などに飾られている鏡で、その多くはお酒のメーカーのロゴやイメージキャラクターなどが印刷されています。
この鏡のことを「パブミラー」あるいは「バーミラー」と呼んでいます。
BARの雰囲気を醸し出すのに欠かせないアイテムですが、同じメーカーのパブミラーでも時代によってデザインが変わっていることも多く、年代の古いパブミラーなどは驚くほどの高値で取引されることもあります。
興味がある方は、一度アンティークショップなどを覗かれてみてはいかがでしょうか?
●チェイサー
BARで強いお酒を飲んだ後(あるいは同時)に、口直しの意味で水を頼んだことがある方も多いのではないかと思います。
英語では「chaser」で「追いかけるもの」という意味があり、「お酒を飲んだ後に追いかけるように飲む飲み物」を指して「チェイサー」と呼びます(ただし、国によって使い方が違う場合もあります)。
上記のような意味が「チェイサー」ですので、実は「チェイサー」は必ずしも水である必要はなく、実際、ウィスキーを飲んだ後に口直しでビールを飲むという猛者もいます(最近ではあまり見かけなくなりましたが、これを「ビア・チェイサー」と呼びます)。
ただしこの場合、お酒の酔いを覚ますという目的からは完全に外れてしまっていて、気分的に楽になったというだけの効果しか得られませんので、ご注意を!
BARでは、一般的にストレートあるいはロックで強いお酒を頼んだ場合、お客さんがチェイサーを注文しなくても、お店側が配慮してチェイサーをつける場合が多いです。
こういった豆知識も知っておくといいですね。
●ワン・フォア・ザ・ロード
「onefortheroad」、直訳すると「帰路につくための一杯」で、BARで「最後の一杯」を意味する言葉です。
BARが好きな人は大抵がお酒好きな人で、なかなか最後の一杯の踏ん切りがつかない人も多いのではないかと思いますが、そういう人の気持ちを慮るような言葉ですね。
自分自身の気持ちの決断を迫るようなこの言葉、もっと深い意味では「明日への活力を得るための一杯」という意味合いもあります。
こちらの意味の方が、自分の気持ちを前向きに捉えることができるような気がしますね。
飲み過ぎは禁物ですが、自分自身の酒量のコントロール、常に戒めを心に留めながらお酒を飲むために、なんとも格好の良い言葉ですね。
●UG
こちらはホテル関係者や飲食店関係者以外はほとんど耳にしたことがない言葉かもしれません。
お店サイドで使う、いわば「隠語」のような言葉ですが、「UndesirableGuest」=アンデザイアブルゲスト、つまり「好ましくないお客さん」のことをこう呼びます。
例えば暴力団関係者、あるいはそこまで極端でなくても泥酔客や、BARに子供を連れてきて、子供が騒ぎ放題であるのに注意をしようともしない親、それどころかお店の人が注意を呼びかけると逆ギレする親など、「本当にそんな人がいるの?」と思われる方がいるかもしれませんが、私自身、実際ホテルのメインバーで飲んでいるときに、こうした光景を目にしたことがあります。
本来、BARに子供を連れてくること自体がマナー違反なのですが、百歩譲ってそれがやむを得ない事態であったとしても、BARで周囲のお客さんに迷惑をかけること自体、厳に慎まなければならない行為です。
電車の中や図書館と同様、BARは「パブリックな空間」であることを意識し、自分だけがよければいい、という身勝手な人は来てはいけない場所です。
「招かれざる客」にはならないよう、あるいはお店のスタッフから陰で「あの客はUGですね」と言われないよう、私たち自身常に気を
付ける必要がありますね。
●バーホッパー
バー通いが大好きで、一つのお店にとどまって長く飲むことをせず、1~2杯程度飲んだら別のBAR、そこでも1~2杯飲んだら別のBARに・・・というように、次々とBARを変えて飲み続ける一人のことを「バーホッパー」と呼びます。
またこのような行為自体を「バーホッピング」といいます。
バッタがあちこちを飛び跳ねるように、(ホッピング)次々とお店を回っていく人達のことですね。
(ちなみに「お店を変える」という行為を「河岸(かし)を変える」と表現することもあります。)
なぜ「バーホッパー」が一つのBARに留まらないのか、理由はいろいろあるようですが、ある人曰く「マスターが元気で生きているか確認しにいっている」のだとか。
結構なブラックジョークですが、BARという空間が大好きだということは間違いないようです。
ちなみに、この「バーホッピング」の過程で、一度行ったBARに再度顔を出すという猛者もいて、これを「裏を返す」といいます。
これは元々遊郭などで使われていた言葉で、客が気に入った遊女がいると再度その店に来訪し、指名が入るとその遊女の名前の入った札を裏返したことに由来しています。
しかしながら、杯数が重ねられるごとに当然酔いは回っていき、2回目の来店を覚えていないという「バーホッパー」もいるのだとか・・・。
お酒は適量に抑えるのが一番ですね!
●カンバン
BARで「お客さん、そろそろカンバンなので・・・」と言われたら、それは「閉店時間です。」という意味になります。
なぜ閉店のことを「カンバン」と呼ぶようになったのかということですが、その起源は江戸時代にまで遡ると言われています。
当時、飲食店がお店を開けるときには通りにお店の看板を出し、閉店時にはその看板をお店の中にしまいました。
この光景は現代の飲み屋街でも普通に見かけますね。ここから閉店のことを「カンバン」と呼ぶようになったと言われています。
ただ、最近のBARで「お客さん、そろそろカンバンなので・・・」と言われることはあまり見かけなくなっているような気もします。
若いお客さんに向かって、「もうカンバンなので・・・」と言ってもキョトンとされるかもしれません。
ただ、覚えておいて損はしないBAR用語です!
お酒に関するもろもろ
ここでは、お酒全般に関わるいろんな情報をご紹介します。
●オフフレーバー
日本語に訳すとしたら「異臭」ということになるかもしれませんが、もう少し詳しく言うと「お酒の持つ本来の味わいを損ねることになる香り全般」ということになります。
これはワインや日本酒、ビールや焼酎、ウィスキーに至るまで、ほとんど全てのお酒類全般で生じる可能性のある状態です。
ワインで言えば、コルクにバクテリアが付着して起こる「ブショネ」や有機ワインから時に生じる「ビオ臭」、卵の腐敗したような(温泉臭)匂いのする「還元香」などが有名ですね。
(還元香は、グラスに注いでしばらく放置しておくと、ほとんど気にならなくなります。)
オフフレーバーが発生する理由は様々ですが、その多くは酸化劣化が原因です。
お酒を日光に当てたまま放置すること
高温の状態化で保存すること
生ビールのサーバの洗浄不足やグラスの匂いの付着
発酵工程で生じるオフフレーバー
など、お酒がいろんな過程で化学変化を起こして味わいを損ねてしまう原因になります。
一概に全てが悪いということでもなく、結果的にそれがいい方向の味わいになることもあります。
ある程度はお酒の状態から判断できることもありますが、正確には飲んだ上で確かめるしかないですね。
●アルコールの許容量
俗に「アルコールをちゃんぽんで(いろんな種類のお酒を交互に飲むこと)飲むと、酔いやすい」と言いますが、これは科学的根拠はありません。
もし、この説に科学性があるとすれば、飲み口がかわることによって、酒量が想定以上に進んでしまう、ということぐらいではないかと思います。
実は、個人個人のアルコールの許容量をデジタルに計ることは簡単で、下記のような計算で知ることができます。
お酒に含まれるアルコール成分(これを「酒精分」といいます)を、度数と容量をもとに、以下のように計算します。
例えば、350ミリリットルでアルコール度数5%のビールを1本飲み干した場合の酒精分は、以下のようになります。
350ミリリットル×5%(0.05)=17.5グラム
2本飲むなら、倍の17.5グラム×2本=35グラムということですね。
仮に、350ミリリットルでアルコール度数5%のビールを2本までなら大丈夫、という人のアルコール許容量は35グラムということになります。
アルコール度数12%のワインを1本空ける場合ですと、1本750ミリリットル換算で、
750ミリリットル×12%(0.12)=90グラム
ということです。
つまり、5%のビールを2本飲んでも酔わない人であれば、12%のワインならば大体1/3(250ミリリットル=酒精分30グラム)強程度は飲んでも大丈夫ということですね。
ちなみに、ウィスキーなどのハードリカーの場合だと以下のようになります。
ウィスキーの度数40%を1ショット(30ml)をストレートで飲んだ場合は、
30ミリリットル×40%(0.4)=12グラム
ということです。
つまり、5%のビールを2缶空けても大丈夫な人ならば、40%のウィスキーを3杯ストレートで呑めるだけのアルコール耐性があるという計算ですね。
ウィスキーストレート、というといかにもお酒に強い人のイメージがありますが、ビール2缶程度と同等と言われると、そんなに強いという印象はないですね。
もちろん、ストレートが苦手という人や、お酒の種類によっての得手不得手がありますので、一概に上記の計算で計れるものではありませんが、自分の酒量を把握する1つの手段にしてもらえば幸いです。
●ノンアルコールとアルコールフリー
最近、よくスーパーなどで見かけるこの「ノンアルコール」「アルコールフリー」といった表記ですが、文字通りアルコール0%という意味なのでしょうか。
実は日本の酒税法上は、アルコール1%以上のものを「お酒」と定義していて、逆に言えば、1%未満のものには税金がかかりません。
そのため、「ノンアルコール」表記があるビールでも、例えば0.9%のアルコールが含まれている場合があります。
ですので、これを知らない妊婦さんや子供が大量に飲んでしまうと危険な場合があり、要注意ですね。
一方、正式な定義がある訳ではありませんが、「アルコールフリー」の表記についてはアルコール0%のことが多いようです。
2000年前後になって、こうした「ノンアルコール飲料」が台頭してきたころには、アルコール度数1%未満のお酒も販売されていました。
しかし現在の日本ではメーカーが自主規制をしていて、「ノンアルコール」表記のある飲料はほぼ全てアルコール0%です。
ただし、これは日本国内のメーカーだけで、海外から輸入されるビールのようなものはこの限りではないケースもありますので、要注意です。
いずれにしても、缶の裏をよく確認して、アルコール度数の数値を確認した上で購入するのが無難ですね。
●マリアージュとペアリングについて
主としてワインを中心に使われる「マリアージュ」という言葉ですが、フランス語で「結婚」を意味していて、文字通り「お酒と料理の幸福な出会い」という趣旨で使われます。
お酒と料理がお互いにその存在や味わいを高めていくような、相乗効果を発揮するような組み合わせを指して、この「マリアージュ」という言葉が使われることが多いですね。
別の言葉で言い表せば「ベストマッチ」に近い意味合いかもしれません。
さらに言えば、従来の定番の組み合わせではなく、これまでになかったような独創的な組み合わせで、全く新しい味わいを生み出す、というような意味合いでも使われることがあるようです。
一方、最近耳にすることが多くなった「ペアリング」という言葉ですが、これはワインというよりもお酒類全般、特に日本酒や焼酎で使われることが多いようです。
意味合いとしては「マリアージュ」と似た使い方もありますが、もっと単純に「お酒と相性のよい料理の組み合わせ」を指すようです。
ですので、お店でも予め「このお酒にはこの料理」というように、メニュー上でもオススメを掲載しているところもあり、悩まずにハズレのない組み合わせを楽しめるお店が増えてきています。
自分であれこれ味わいを想像しながらオーダーするのも楽しいですが、鉄板の組み合わせを味わえる「ペアリング」をうまく活用するのもいいですね。
●口噛み酒
人間がお米などの穀物を噛んで、唾液に含まれるアミラーゼという酵素の力によって発酵させたお酒を「口噛み酒」と呼びます。
デンプンが含まれている原料の場合このやり方で発酵が可能で、アミラーゼによりデンプンは糖分に分解され、あとは瓢箪などの器にその液体を置いておけば、自然界に存在する野生の酵母がアルコール発酵を行ないます。
このタイプのお酒はかなり古くから作られていたようで、「大隅国風土記」にも口噛み酒の記録が残っています。
また、この「口噛み酒」の作り手は、古来より若い女性が良いとされていました。
これは若くて健康な女性の口内には健全な酵素がたくさんあるからという理由ですが、他にも神事的な意味合いもあったため、とされています。
日本だけでなく、世界的各国でも同様の「口噛み酒」が存在していたとされていますが、現代では一部の国を除いてほとんど残っていません。
南米アンデス地方、ペルーやボリビアで盛んに飲まれているトウモロコシの醸造酒「チチャ」も、かつてはこの「口噛み」の手法で作られていたと言われています。
ちなみにこの「口噛み酒」、2016年に日本で公開されて大ヒットした映画、「君の名は。」でも登場して、注目を浴びましたね。
さらに、こちらはかなり古いテレビアニメになりますが、「はじめにんげんギャートルズ」で猿に木の実などを噛ませてお酒を造るシーンがありましたが、これも一種の「口噛み酒」と言えるでしょう。
●猿酒(さるざけ)
猿が果実や木の実などをなどを木の洞や岩の窪みなどに隠し、これに野生の酵母などが付着して自然と発酵したお酒を「猿酒」(「ましら酒」ともいいます)といい、かつては猟師や木こりなどがこれを求めて愛飲したという伝説があります。
そもそも猿が食べ物を貯蓄するのかどうか、動物行動学的にみて怪しい部分もあるのですが、その実自体に糖分を蓄えているブドウなどであれば、自然発生的にアルコール飲料ができることはあります。
そうやって自然にできたお酒を、山での仕事を生業とする人達が珍重した、ということは十分にあり得る話ですね。
では、人間以外の動物がアルコールを飲むのか、ということですが、人間が飼っている動物に面白がって酒を与えて、これに味をしめた動物が好んで飲むようになった、というケースを除いては、野性の動物が自らお酒を飲むことはないようです。
ただ、お酒を飲めないという訳でもなく、例えば中国ではお酒を漬け込んだお米をばらまいてスズメに食べさせ、酔っ払って動けなくなったところを捕まえるだとか、フィンランドでもトナカイが好んで食べる木イチゴの一種は、おなかの中でアルコール発酵をして、これを食べたトナカイは酔っ払ったような状態になるそうです。
いずれにしてもお酒を自ら作り出し、これを好んで飲む生物は人間だけのようですね。
●ポアラー
英語で「Pourer」、日本語に直訳すると「注ぐ人」という意味になります。
主にワインの口に取り付けて使われる道具です。形状も様々で、用途に合わせて使い分けるのが一般的ですが、通常は注ぎ口が長く幅広いような形状のものが多いです。
これを赤ワインなどに使うと、ワインを注ぐ最中により空気と多く触れることになり、いわゆる「デキャンタージュ」※のような効果を簡単に得ることができます。
また、ワイン以外にも、ウィスキーやオリーブオイルなどを注ぐ際にも使われることがあり、カクテルの調合などにも使用される非常に使い勝手のいい器具です。
液だれを防ぐ効果もあり、自宅でも1つ持っていると重宝する道具ですね。
※「デキャンタージュ」の詳細については、ワインのページをご参照ください。
●ナイトキャップ
日本語で言えば「寝酒」で、英語圏の国々では「ナイトキャップ」と呼びます。
日本語のほうがダイレクトで分かりやすいですが、要するに寝る前に飲むお酒ですね。
睡眠を促進する効果があると言われていますが、もちろん飲み過ぎは御法度です。
ナイトキャップには、アルコール度数の低いお酒よりも、蒸留酒やリキュール類が飲まれる傾向がありますが、個人の嗜好の問題で決まった種類のお酒がある訳ではありません。
ナイトキャップに向くと言われるカクテルもあります。
世界各国でも一般的な風習ではありますが、せいぜい1杯から2杯ぐらいにとどめて置く方が健康にはいいようです。
●パーシャル
一般的な使い方とは正確に意味合いは違いますが、お酒の世界で「パーシャル」と言えば、一般的には「お酒を冷凍庫に入れておくこと」を指します。
ジンやウオッカなどのスピリッツ類を冷凍庫に入れておくことはよく知られていますが、近年の日本ではテキーラを冷凍庫に入れておくことも流行っているようですね。
蒸留酒はアルコール度数が高いため、冷凍庫に入れておいても凍ってしまうことはほとんどありません。
ただ、常温で保管しておいたときと違って、液体にとろみがついてきて、若干粘着性のついたような液体に変わります。
常温で飲むときよりもアルコール感が抑えられて、飲みやすくなる一方で、香りなどはあまり感じられなくなります。
一般的には、お酒をストレートで飲むことに抵抗がある方には、飲みやすくなったと言われることが多い飲み方です。
あまり一般的な飲み方ではありませんが、ちょっと安価なウィスキーなどをパーシャルにして飲むと、また普段とは違ったウィスキーの顔が見られて面白いですよ。
●二日酔い防止
世の中には、二日酔い防止のための様々なサプリメントなどが溢れていますね。
それぞれにいろんな効能があるのだと思いますが、浴びるようにお酒を飲む人、あるいは強いお酒を続けて飲む人や大量にお酒を飲む人には、あまり効き目がないようです。
とはいっても、なるべくなら二日酔いにはならず、お酒を飲んだ翌日にはすっきりと目が覚めたい、と言う人がほとんどではないかと思います。
その筋の関係者の方々、あるいは医療関係に携わる人達、それから私自身の経験からもこれが一番効く、という「二日酔い防止」の策は、「お水を飲むこと」です。
例えばビールを一杯飲んだら、その後すぐに同量の水を飲む、ウィスキーを一杯飲んだら、そのアルコール度数をなるべく0に近づける程度の量の水を飲む、ということを繰り返すことです。
これを繰り返すとトイレに行く頻度は多くなりますが、アルコールを体内に摂取することは極小化できます。
ある程度酔っ払いたい、という向きにはなんとも味気ない方法ですが、このやり方が一番二日酔い防止には効果があります。
とはいってもやはりアルコールの分解能力には個人差があり、自分自身のアルコール摂取量の限界を把握した上で、ご自身の適量の範囲内でお酒を楽しむというのが、一番賢いお酒の飲み方ですね。
●スイングトップ(ボトル)
ボトルの形状の一つで、ボトルの注ぎ口の部分に金属性の留め金があり、一度栓を開けてもこの留め金を再度固定することがあ、気密性の高い状態でお酒を保存することが可能なボトルを「スイングトップ(ボトル)」あるいは「スイングトップ式ボトル」と呼んでいます。
発泡性のある日本酒や、ヨーロッパ系のビールのボトルなどで使われることがあります。
ヨーロッパのビールでは、陶器製のボトルにこのスイングトップが付いていることもしばしばで、このようなボトルは飲み終わった後でも他の液体を入れて保存したり、あるいはインテリアとしての活用も可能ですね。
ネット通販などでも容器自体入手可能ではありますが、やはりそれぞれのお酒のメーカーがボトルやラベルのデザインまで手がけたものは何とも言えない趣があり、こういったボトルはお酒ファンの「コレクターズアイテム」※としても人気があります。