【ウイスキー】ウイスキーについて(スコッチウイスキー)
ウイスキー全体の概要
現在、ウィスキーは世界各地で作られていて、ウィスキーブームと呼んでも差し支えないと思います。
世界各地でいろんな種類のあるウィスキーですが、定義を定めるとすると、以下のような形に集約されます。
①穀物を原料とすること
②蒸留をさせること
③樽熟成をさせること
従って、同じ樽熟成をさせた蒸留酒であっても、果実類を原料とするブランデーはウィスキーとは呼ばれず、また同じ穀物類を原料とする蒸留酒であっても、ジンやウオッカや焼酎は、同様にウィスキーとは呼ばれません。
また、ウィスキーの起源については、正確な事は分っていませんが、錬金術の影響を受けて、何らかの偶然で度数の強いお酒ができたのが最初だと言われています。
4世紀から5世紀ころのアラビアやエジプトあたりで始まったとされる錬金術ですが、「金を作り出す」という当初の目的を果たすために様々な実験がなされました。
その過程で偶然に生じたアルコール度数の強い液体が、人類が初めて見た蒸留酒だったのではないかと推測されます。
錬金術師たちは、アルコール度数の強いこの強烈な液体を、ラテン語で「命の水」を意味する「アクア・ヴィタエ」と呼び、不老不死の薬として珍重しました。
やがてこの蒸留酒は、その製法とともに中近東から東アジア、やがて琉球経由で日本にも伝わり、一方で地中海沿岸からスペインやヨーロッパ、アイルランドやイギリスにも伝播していったというのが定説です。
上記のようなルートで蒸留酒造りは伝播していったとされていますが、ぶどう栽培の北限を超えた北の大地ではぶどうが栽培できず、代わりにビールを蒸留して強いお酒を作ったのではないかと想像されます。
この際、「命の水」を意味する「アクア・ヴィタエ」を、現地での言語「ゲール語」※に直訳して「ウイスゲ・ベーハ」と呼びました。
これが現在の「ウィスキー」という言葉の語源になったと言われています。※「ゲール語」については、後述します。
また、ウィスキー造りの起源については、中世にアイルランドで初めて作られたというのがほぼ定説になっていますが、スコットランドでは「こちらが元祖」といって譲らず、いまだにお互いが元祖を主張しているような状況です。
ただ、その当時のウィスキーは無色透明で荒々しく、樽熟成を始めたのは、イングランド政府の重税を嫌ったスコットランド人が、お酒を隠すために空き樽にウィスキーを入れたのがそのきっかけだと言われています。
いわばウィスキーの密造ですが、この密造のことを「スマグリング」(アメリカでは「ムーンシャイン」)、密造者のことを「スマグラー」(アメリカでは「ムーンシャイナー」)と呼びました。
様々な偶然が重なって、現在のウィスキーがあるということですね。
世界の5大ウイスキー
現在、ウィスキーは世界各国で生産されるようになっていますが、古くからウィスキーが生産されてきた主要な5つの産地のことを「世界の5大ウィスキー」と呼んでいます。
以下がそうですが、ジャパニーズ・ウィスキーはその中でも最も歴史が浅く、しかしながらその高品質が世界でも評価されて、5大ウィスキーの1つに名を連ねています。
・アイルランドの「アイリッシュ・ウィスキー」
・スコットランドの「スコッチ・ウィスキー」
・アメリカの「アメリカン・ウィスキー(バーボン・ウィスキー)」
・カナダの「カナディアン・ウィスキー」
・日本の「ジャパニーズ・ウィスキー」
上記の順番は、そのまま年代の古い順番になっています。
ウイスキーの英語表記について
ウィスキーの英語表記ですが、実は2種類あります。1つは「WHISKY」、もう一つは「WHISKEY」です。「E」が入るか入らないかの違いですが、両方とも間違っている訳ではありません。
5大産地で言いますと、スコッチ・ウィスキー、カナディアン・ウィスキー、ジャパニーズ・ウィスキーは「WHISKY」表示、アイリッシュ・ウィスキー、アメリカン・ウィスキー(バーボン・ウィスキー)は「WHISKEY」となります。
なぜこのようになったのか、正確なところは分かっていない部分があります。
単に英語と米語の表記の違いだという説もあれば、アイルランドとスコットランドのウィスキーの元祖争いから意図的に表記を分けたという説、あるいは現地ではスコッチ以外のウィスキーは全て「E」をつけて表記するという説など様々です。
実際、5大ウィスキーの表記が上記のように分かれていることから推測すると、どういう経緯から表記が分かれたのかはいったん置いておくとして、アメリカに住む多くの人々はアイルランドからの移民が多かったことからバーボンの表記は「E」が入り、竹鶴政孝氏がスコットランドでウィスキー作りを学んだことからジャパニーズ・ウィスキーは「E」のない表記となったのが通説のようです。
ではカナディアン・ウィスキーはどうなのか、ということですが、カナダでウィスキーの生産が本格的に行われるようになったのは、アメリカ独立戦争後だと言われています。
アメリカの独立に批判的なイギリス系の農民が、当時イギリスの植民地であったカナダに移住してウィスキー作りに関わったとされていて、この経緯を考えると、スコッチ・ウィスキー同様の表記をとったのも自然な流れなのかもしれませんね。
最近のウィスキーのトピックスについて インド
2019年12月の年の瀬も押し迫った頃、日本のサントリーホールディングスがインド市場の開拓に乗り出すというニュースが飛び込んできました。
あまり知られてないことですが、実はインドは世界最大の蒸留酒消費国で、2018年の世界市場のうち、数量で約半分の169万キロリットルがインドで消費されました。
ここ10年間でインドの蒸留酒消費量は倍増し、主として富裕層や若者の間で蒸留酒を好む人が増えていると言われています。
インド産のウィスキーも生産されていて、インド産の地場ウィスキー以外にも、イギリスやアメリカから輸入したウィスキーを現地でブレンドして売り出している商品もあるそうです。
こうしたトレンドを踏まえて、サントリーは「オークスミス」というウィスキーブランドでインドに進出し、あわせてサントリーのクラフトジン「ロク」も輸出するとのことです。
ちなみに上述の「オークスミス」ですが、イギリスのスコッチとアメリカのバーボンをブレンドしたもので、値段は750ミリリットルで約1300円(日本円)~2200円前後のラインナップ、これは現地の競合と同程度の価格帯だとか・・・。
どんな味わいのウィスキーなのか、興味はありますね。
スコッチウイスキーの概要
イギリスのブリテン島北部、スコットランド地方で作られるウィスキーが「スコッチ」です。従って、同じイギリスでもイングランド地方や、ウェールズ地方で作られるウィスキーは、スコッチを名乗ることができません。
近年では、これらの地方で作られるウィスキーも増えていて、それぞれ「イングリッシュ・ウィスキー」や「ウェリッシュ・ウィスキー」等と呼び表すこともあります。
世界では、現在各国でウィスキーが生産されていますが、主要生産地は5つであり、これを称して「世界の5大ウィスキー」と呼びます。
スコッチはその中でも、5大ウィスキーの筆頭とも言うべき存在で、最古のウィスキーという称号こそアイリッシュウィスキーに譲りますが、ウィスキーの代名詞と言っても過言ではないでしょう。
北海道と同程度の面積や人口でありながら、130前後の蒸留所が存在していて、その品質や数においても他のウィスキーを圧倒しています。
まさにウィスキーの聖地ですね。
※蒸留所は、閉鎖・新設・休止が常に繰り返されており、正確な数値ではないことを予めお詫び申し上げます。
ウィスキー作り自体の歴史は古いのですが、現在のように樽熟成を経て琥珀色に輝くウィスキー作りが始まったのは、密造酒作りが盛んだった18世紀初頭のころだと言われています。
スコッチの定義
スコッチ・ウィスキーを名乗るには、イギリスの法律「スコッチ・ウィスキー法」に則って製造されていなければならず、その規定は主に以下の7項目があります。
1.水とイースト菌(酵母)、発芽した大麦麦芽(モルト)のみを原料としていること(但し他の穀物が加えられても可)
2.スコットランドの蒸留所で糖化・発酵・蒸溜を行なっていること
3.原料由来の、及び製造工程から生じた香りと風味を保ちつつ、アルコール度数94.8%以下で蒸溜されていること
4.容量700リットル以下のオーク樽※に詰められていること
5.スコットランド国内の保税倉庫で最低でも3年以上熟成されていること
6.水と、色調整のためのスピリッツカラメル(着色料として使われる、甘味を除いた天然のカラメル)以外は加えられていないこと
7.アルコール度数40%以上でボトリングされていること
こうした厳しい規定を守らなければ、スコッチウィスキーを名乗れないということです。
他の国でも同様の規定が定められているところも多いですが、こうした定義が厳格に遵守されているからこそ、スコッチ・ウィスキーの品質が担保されているのですね。
※「オーク樽」の定義について
近年、スコッチ・ウィスキー協会に対して「スコッチ・ウィスキーの熟成に使っていいオーク樽の種類を教えて欲しい」という問い合わせが増えているそうです。
これを受け、関係各省の協議を経て2019年6月にスコッチ・ウィスキーの地理的条項が改訂されました。
具体的には「伝統的なスコッチの色や味わい、アロマを維持していれば、これまであまり使われることがなかったテキーラやカルヴァドス、ビールやスピリッツ類を入れた樽で熟成させても構わない」旨が条文に明記されました。
単に伝統を遵守するだけでなく、伝統を守りつつも新しい風を取り込もうとする、スコッチ・ウィスキー業界の柔軟性と進取性が感じられて何とも頼もしい気になりますね。これからのスコッチ業界の動きに注目です!
製法上の区分
現在、スコッチは製法上3つに区分されることが一般的です。
①モルト・ウィスキー(シングルモルト・ウィスキー)
一カ所の蒸留所で、大麦麦芽だけを使って単式蒸留器(ポットスチル)※で2回(例外的に3回)蒸留したウィスキーを「モルトウィスキー」と言います。
近年はこのモルト・ウィスキーが大変人気を呼んでいて、各蒸留所の個性豊かなウィスキーを楽しむ人が増えています。
因みに以前は、このカテゴリのウィスキーを「ピュアモルトウィスキー」と呼んでいた時代がありました。
今でも一部の蒸留所では、この呼称を継続して使っているものもあります。
各蒸留所の個性が前面に押し出されることが多く、「ラウドスピリッツ」と呼ばれることもあります。
※「単式蒸留機(ポットスチル)」の詳細については、「お酒」の蒸留酒のページをご参照ください。
・シングルカスクウィスキー
1つの樽で熟成された原酒のみを瓶詰めしたモルトウィスキーのことを「シングルカスクウィスキー」と呼びます。
樽の特徴がダイレクトに反映されるので、希少価値の高いウィスキーです。
また、樽で熟成されたそのままの度数で瓶に詰められたウィスキーは、通常の40度よりも遙かに高い度数のウィスキーとなりますが、これを「カスク・ストレンクス」と呼びます。
●アズ・ウィー・ゲット・イット(ASWEGETIT)
スコットランドの蒸留所で働く職人は、古くから「カスク・ストレンクス」のことを「ASWEGETIT」と読んでいます。
直訳すると「手に入れたそのまま」という意味になります。
あるいは「樽からそのまま」とも訳され、いずれにしても樽出し原酒を指していて、加水もせず、他のウィスキーとのブレンデッドもされていない状態でボトリングされたウィスキーのことです。
②グレーン・ウィスキー
とうもろこしや小麦等の穀物を主原料として、連続式蒸留機(パテントスチル)※で蒸留したウィスキーです。
穏やかな味わいのウィスキーが多く、ウィスキーのヘビーな味わいが苦手、という方には、ウィスキーの入門編として飲んでみるといいかもしれません。
上記のモルトウィスキーと比べて、やや没個性的な性格があるところから、「サイレントスピリッツ」と呼ばれることもあります。
なお、上記のモルト・ウィスキー同様、1つの蒸留所のグレーン・ウィスキーのみを瓶詰めしたものは、「シングル・グレーン・ウィスキー」と呼ばれます。
しかしながら、シングルグレーンウィスキーを製造している蒸留所は、現在ではごくわずかとなっています。
※「連続式蒸留機(パテントスチル)」の詳細については、「お酒」の蒸留酒のページをご参照ください。
③ブレンデッド・ウィスキー
文字通り、①と②のウィスキーをブレンド(混合)したウィスキーです。
通常は、数十種類のモルト・ウィスキーと、数種類のグレーン・ウィスキーをブレンドして作られることが多いです。
ブレンデッド・ウィスキーの誕生は19世紀半ばであり、それほど古いことではありませんが、このブレンデッド・ウィスキーが登場したことにより、スコッチが全世界に広がっていったと言われています。
近年のモルトブームにより、往年の勢いはやや衰えたかもしませんが、逆にリーズナブルな値段で高品質のスコッチを飲むチャンスは、こちらのブレンデッド・ウィスキーのほうが高いかもしれません。
ちなみに、①のモルト・ウィスキーのみをブレンドしてリリースされるウィスキーは、「ヴァッテド・モルトウィスキー」とよばれます。
※近年では、このカテゴリのウィスキーを「ブレンデッド・モルトウィスキー」と呼び表すことが多くなっています。
これらの製法上の違いは、あくまでも製法上の相違であって、味の優劣や品質の格差を表すものではありません。
よく例えて言われるのが、「クラシック音楽で例えると、モルト・ウィスキーは協奏曲で、ブレンデッド・ウィスキーは交響曲」というものです。
つまり、モルト・ウィスキーはひとつの楽器の個性を際立たせた楽曲で、ブレンデッド・ウィスキーはそれぞれの楽器のハーモニーを楽しむ楽曲だということですね。
当然のことながら、協奏曲と交響曲に優劣はありません。各自の好みや気分によって、飲み分ければいいだけのことですね。
モルトウイスキーができるまで
以下、簡単にスコッチ(シングルモルト)ウィスキーができるまでの工程を見ていきたいと思います。
①製麦(モルティング)
大麦には、二条大麦と六条大麦の2種類があります。
ウィスキーを作る際に使われる大麦は、麦茶などに使われる六条大麦ではなく、二条大麦を使用します。
これは、二条大麦のほうがデンプンの含有量がより多いからで、収穫の時期は大体8月頃から行います。
二条大麦から麦芽を作る作業を「製麦」といいます。
ウィスキーの原料となる二条大麦ですが、これにも品種がいくつかあり、比較的よく使われるのは「トライアンフ」「ペプキン」「チャリオッツ」種などです。
かつては「ゴールデンプロミス」という品種が使われることが多かったのですが、生産量が少なく高価なことから、現在ではこれを使う蒸留所は少なくなりました。
また、日本酒の「夏子の酒」ではありませんが、幻の大麦とされる「ベレ種(バーレ)」で作られたウィスキーもありますね。
さて、大麦に含まれるデンプンですが、これはこのままではアルコール発酵する訳ではないので、まずはデンプンを糖化する必要があります。
これは他の穀物類を原料とするお酒造りと同様です。
このため、大麦を2日間ほど水に浸して(浸麦)、発芽を促します(この際に使用する浸麦槽を「スティープ」と言います)。
十分に水を吸収した二条大麦を床に広げて、適度な温度・湿度下の環境に置くことで、発芽が進行してデンプンを糖分に変えるさまざまな酵素が生成されてきます。注1.
酵素の生成が十分な量に達した段階で(上記のような環境下でだいたい7日から10日間程度)、発芽の進行を止めます。
発芽の進行を止めるには、大麦を乾燥させて水分を取り除く必要があり、この作業を行うところが「キルン」と呼ばれる麦芽乾燥塔です。
ここで、ピート※や無煙炭を焚いて、熱により麦芽を乾燥させて発芽の進行を止めます。
もともとスコットランドの燃料といえばピートしかなく、かつては麦芽の乾燥にはピートのみを使っていました。
逆に現在では、100%ピートによる乾燥を行って作られるウィスキーは、スプリングバンク蒸留所の「ロングロー」だけだと言われています。
※ピート(泥炭)
エリカ科の低木、ヒース(スコットランドではヘザーと言います。
余談ですが以前、「ホワイト・ヘザー」というブレンデッドウイスキーもありました。
スコットランドに自生するヘザーのほとんどは紫色ですが、まれに白い色のヘザーがあるそうで、これを見つけると、日本で言う四つ葉のクローバーのように幸運の印だそうです。
泥や草などが長年の間に堆積してできた泥炭です。
これを乾燥させるとよく燃えるので、スコットランドでは古くからこれを燃料として使ってきました。
スコッチ独特のスモーキーフレーバー(燻香)は、このピートの煙(燻蒸)によるもので、「ピート香」とも呼ばれます。
注1.「フロアモルティング」
水分を吸収した麦芽を床に広げる作業ですが、伝統的なやり方では、発芽が均一に進むように、木製のシャベルのような道具(これを「シール」といいます)を使って絶えず攪拌を繰り返します。
これを「フロアモルティング」といいますが、重労働でもあるためこれを行う蒸留所はほとんどなくなりました。
ちなみに、このフロアモルティングによって痛めた肩のことを「モンキー・ショルダー」といい、ウィリアム・グランツ社から同名のウィスキーも販売されています。
今では、「モルトスター」と呼ばれる専門の麦芽製造業者から原料を仕入れている蒸留所が一般的です。また、麦芽造りに関わる職人のことを「モルトマン」と言います。
最後に、麦芽にとって不要な根っこを機械で取り除いて、原料となる麦芽の完成です。
②糖化(マッシング)
乾燥が終了した麦芽は、細かいゴミや小石などを取り除いた上で、「モルトミル」という機械で粉砕されます(粉砕された麦芽のことを「グリスト」と言います)。
この「グリスト」を、「マッシュタン」と呼ばれる金属製の器(糖化槽、仕込槽)に移し替えます。マッシュタンは、銅製やステンレス製で蓋付きのものが多いのですが、中には100年以上前から使っている鋳鉄製で蓋のないマッシュタンもあります。
「スプリングバンク」や「ブリックラディ」、「エドラダワー」といった蒸留所のマッシュタンがそうです。
このマッシュタンに60度から65度程度のお湯を加えて、ゆっくりと混ぜ合せます。
こうすることで、麦芽に含まれるデンプン質が、製麦によって得られた酵素の働きにより徐々に糖化していきます。
ここで加えられるお湯の回数は、通常3回から4回で、使われる水(お湯)は蒸留所の仕込み水です。
次に、こうしてできた麦汁を濾過して糖化液を得ます。
この糖化液(糖液)を「ウォート」あるいは「ワート」と呼びます。
また、糖化液が取り除かれた後の絞り粕は「ドラフ」と呼ばれ、栄養価が高いことから家畜の飼料などに使われます。
これら、麦芽をお湯に溶いて糖分を得る工程(あるいは糖化液そのもののこと)を「マッシュ(マッシング)」と言います。
③発酵(ファーメンテーション)
「ウォート」は、「ヒートエクスチェンジャー(熱交換装置)」によって20度前後にまで冷却され、「ウオッシュバック」と呼ばれる巨大な発酵タンク(桶)に移されて、これに大量のイースト菌(酵母)※を加えて発酵を促します。
ウォートを20度前後まで冷却するのは、これ以上の温度だとイースト菌が死滅してしまうためです。
ウオッシュバックは、大部分は伝統的な木製の桶を使用していて(一部ステンレス製のウオッシュバックを使用している蒸留所もあります)、その材質も様々です。
※イースト菌(酵母)
酵母は、ウィスキーの香味を形作る重要なポイントになっていて、ウィスキー専用の複数の種類の酵母を組み合わせて使われます。
ウィスキーにおいては、発酵温度が30度以上と他の酒類に比べて高いため、発酵期間は2日から3日間と、比較的短い期間でアルコール発酵を終了します。
こうして得られた醪(醸造酒)は、アルコール度数6%から8%程度で、この醪のことを「ウオッシュ」と呼びます。
ここまでのウィスキー造りの工程は、ホップを使うと言うことを除けば、ビールとほとんど変わりません。
少し乱暴な例え話ですが、よく「ビールを蒸留すればウィスキーになる」というのは、このことによります。
④蒸留(ディスティレーション)
発酵が終了した醪(ウオッシュ)は、蒸留機(釜)に送られて蒸留が始まります。
モルトウィスキーの製造に使われるのは、「ポットスチル※」と呼ばれる銅製の単式蒸留機(釜)です。
※「ポットスチル」の詳細については、「お酒」の蒸留酒のページをご参照ください。
「ポットスチル」は大きく以下の3つの部分から成り立っています。
●釜
発酵醪(ウオッシュ)を入れて加熱し、アルコール成分を蒸発させる部分
●冷却器(コンデンサー)
蒸発したアルコール成分を冷却し、凝縮した液体に戻す部分
●ラインアーム(ネック)
釜と冷却器をつなぐパイプの部分。上部が曲線を描いていることから「スワンネック」とも呼ばれます。
また「ポットスチル」の形は、蒸留所によって千差万別ですが、大きく分けると以下の3つに分類されます。
・ストレート型(ストレートヘッド)
釜からまっすぐにラインアームが延びている形のポットスチルです。
香味成分がほとんど上まで立ち上るので、重厚で奥行きのあるウィスキーになると言われています。
・ランタン型(ランタンヘッド)
釜とラインアームの接続部分がくびれている形のポットスチルです。
立ち上る香味成分が限定されるため、ライトで軽快なウィスキーの味わいになると言われます。
・ボール型・バルジ型(ボールヘッド・バルジヘッド)
文字通り、釜とラインアームの接続部分がボールのように膨らんでいる(くびれが2つある)形のポットスチルです。
蒸気が滞留して釜に戻り、再び立ち上っていくことになり、よりすっきりとしたクリアな味わいのウィスキーになると言われます。
上記以外にも、今では使用されなくなった「ローモンドスタイル(スチル)」といった、特殊なタイプもあります。
このように、ポットスチルの形状によってもその味わいは大きく変わってきます。蒸留所毎にその違いを比べてみるのも面白いですね。
スコッチは、いくつかの例外はありますが、そのほとんどは2回蒸留を行います。
1回目の蒸留は「ウオッシュスチル(初留釜)」で、2回目の蒸留はやや小さめの「スピリッツスチル(再留釜)」(「ローワインズスチル」とも呼ばれます)で行います。
ポットスチルの加熱方式には2通りのやり方があります。
1つは石炭やガスで直接ポットスチルを熱する「直火焚き方式(直火式)」で、伝統的なやり方です。
もう1つは、ポットスチルの中にパイプを通して、蒸気で加熱する「スチーム式(間接式)」です。
直火焚き方式に比べると、焦げ付きの心配や清掃の手間も省けることから、現在ではこちらのスチーム式が主流になっています。
上記のようにして、ポットスチルで加熱された醪はアルコール成分が気化し、ラインアームを伝って冷却器に運ばれ再び液化します。
こうして得られた液体は、「ローワイン」と呼ばれます。
1回目の蒸留と2回目の蒸留方法に大きな違いはありませんが、2回目の蒸留の際には、コンデンサーの下に「スピリッツセイフ」と呼ばれるガラスの箱が置かれ、コンデンサーにより液化されたアルコールがこの箱を通る仕組みになっています。
これは、熟成に回す原酒を見極めるための装置で、流れ出るアルコールは以下の3つに分けられます。
①フォアショッツ(「ヘッド」「前留」とも呼ばれます。)
最初に流れ出るアルコール成分です。
②ミドル(「ハーツ」「ハート」「中留」とも呼ばれます。)
中間で流れ出るアルコール成分です。
③フェインツ(「テール」「後留」とも呼ばれます。)
最後に流れ出るアルコール成分です。
上記の①や③は、アルコール度数が高すぎたり低すぎたり、あるいは不純物が混ざったりしていることがあるため、熟成には回さず、ローワインに混ぜて再度再留釜で蒸留されます。
②の「ミドル」と呼ばれる部分は、最も品質に優れていて、これを取り出して熟成用の原酒とします。
この作業を「ミドルカット」と呼びますが、連続して流れ出る液体のどの部分でカットするのか、熟練の技と経験が要求される作業です。
この作業を受け持つのは「スチルマン」と呼ばれる、蒸留の職人です。蒸留所の職人の中でも最も経験と熟練を要すると言われます。
⑤熟成(マチュレーション)
二度の蒸留を経てできあがったお酒は、無色透明で荒々しく、度数も70度前後とかなり高いアルコール度数です。
スコッチウィスキーを名乗るには、最低でも3年以上の熟成が義務づけられていて、この段階でのお酒は「ニューポット(新酒)」あるいは、「ブリティッシュ・ファインスピリッツ」と呼んでいます。
熟成に使われる樽は、カシやナラなどのオーク材です。
スコッチの熟成に使われるオークは主に2種類で、「アメリカン・ホワイトオー」と「スパニッシュ・オーク(ヨーロピアン・コモンオーク)」です。
アメリカン・ホワイトオークは、主としてバーボンの熟成に使われ、スパニッシュ・オークはシェリー酒やブランデーの熟成に使われることが多いです。
これらの樽は、一度バーボンやシェリー酒の熟成に使用され、樽材にそれぞれのお酒のエキスが染みついた状態でスコッチを熟成させます。
バーボン以外でもラムやワインを熟成させた樽を使用したり、ポートワインやマディラワインの熟成に使用された樽を使うこともあります。
更に一度スコッチの熟成に使用した樽を再度使うこともあり(「リフィル樽」「リフィルカスク」あるいは「プレーンカスク」と言います)、熟成に使う樽は蒸留所や業者により様々です。
一般的に、シェリー樽で熟成させたお酒はフルーティで甘みが強く、赤みがかったウィスキーになり、バーボン樽で熟成させたお酒はバニラのような香りでやや薄い琥珀色をしたウィスキーになると言われています。
また、バーボン等に代表されるように、一度も熟成を経ていない新樽を使用するウィスキーもあります。この場合、多くは新酒の持つ刺激臭を吸収するために、樽の内側を火で焼きます。
これを「チャー」と言います。
更に、一度熟成に使用した樽に対して、再度焦げ目をつけるために火をつけることを「リチャー」といいます。
蒸留所によってはこのパフォーマンスを見学できる所もあり、一見の価値ありです。
また、樽の容量にもいくつかの種類があり、一般的に下記のように分類されます。ちなみにスコットランドでは、700リットル以上の樽を使ってはならないという法律があります。
・バット(シェリーバット)
容量500リットル前後の樽です。
もともとシェリー酒の貯蔵に使われることが多く、「シェリーバット」とも呼ばれています。次項のパンチョンよりも細長い形状です。
・パンチョン
バットを同じく、容量500リットル前後の樽です。
バットに比べると、やや胴が太くずんぐりとしています。バット同様、スコッチに使われる最大の樽です。
・ホグスヘッド
容量250リットル前後の樽です。
使い込まれたバレル(次項)を解体して、再び組み立てられて作られます。
・バレル
容量180リットル前後の樽です。
新樽はバーボンの熟成に使用されることが多く、「バーボン樽」とも呼ばれます。
・クォーター
容量127リットル~159リットルの樽です。
・オクタブ
容量45リットル~68リットルの樽です。
一般的に、小さい樽ほどウィスキーの量に対してお酒の接する表面積が大きくなるので熟成が早くなり、大きい樽ほど長期熟成に向くと言われています。
また、これらの樽の管理や修繕、ウオッシュバックなどの製造・修理を行う職人を「クーパー」、その作業場のことを「クーパーリッジ」と呼びます。
●エンジェルシェア(天使の分け前)
樽の中のウィスキーは、蒸発(蒸散)により毎年2~3%ずつ目減りしていきます。
つまり、目減り分が多ければ多いほど長く熟成されているということにもつながり、これをスコットランドでは「エンジェルシェア(天使の分け前)」と呼んでいます。
天使が飲んだ分だけ、より一層ウィスキーは美味しくなるという訳ですね。
このようにして、10年、20年、あるいはそれ以上の長期間の熟成を経て、貴重なスコッチウィスキーが誕生していくことになります。
因みに、スコッチウィスキーを名乗るには、「最低でも3年間の樽熟成を経る」ことが法律で義務づけられています。
⑥瓶詰め(ボトリング)
こうして熟成を終えた原酒は、ブレンダーにより味がチェックされて、晴れて世の中にリリースされる訳ですが、シングルカスクウィスキー等の一部のお酒を除いては、その樽そのままの原酒が瓶詰めされることはありません。
同じ熟成年数、同じ樽の材質や大きさで熟成された樽であっても、熟成倉庫の位置や樽そのものの個性など、同じ味になるとは限りません。
そこで、熟成を終えた樽は、いったん大きなタンクに集められ、味を均一に馴染ませてから瓶詰めされます。
このあと更に樽に移し替えて、再び熟成させることもあり、これをマリッジ」あるいは「後熟」と呼びます。
また、原酒の多くは50度から55度程度の度数で、このままでは度数が高すぎるので(もちろん「カスクストレンクス※」で楽しむウィスキーもあります)、加水して度数を整えてから販売されます。
以前、ウィスキーの度数は43度が一般的でしたが、近年では40度のものが多くなってきましたね。
※「カスクストレンクス」については、「製法上の区分」をご参照ください。
●チル・フィルタレーション
低温冷却濾過処理のことです。
瓶詰め前に、原酒を0度から4度くらいまでに冷やして、白濁のもととなる脂肪酸などを取り除く処理のことを言います。
この処理を経ずに瓶詰めされる場合は、「ノン・チルフィルター」略して「ノンチル」と言われます。
グレーンウイスキーができるまで
上記で触れたように、モルトウィスキーとグレーンウィスキーには原材料や蒸留方法に違いがありますが、製法そのものにも相違があります。
ここでは主として、モルトウィスキーとの製法の違いに注目して、下記に見ていきたいと思います。
①破砕
モルトウィスキーは大麦麦芽のみを原料として使用しますが、グレーンウィスキーは、大麦以外にも、とうもろこしや小麦等も使用します。
とうもろこしや小麦、加えて発芽していない大麦などの原料穀物を大きな釜に入れて、蒸気圧で蒸し煮をして穀物内のデンプン質を破砕し、お粥状の状態を造ります。この工程は、モルトウィスキー造りにはありません。
②糖化(マッシング)
①で粥状になった原料を、次に糖化槽に移します。
ここに大麦麦芽とお湯を加えて、「糖化」が始まります。
グレーンウィスキーにおける「糖化」は、大麦麦芽の酵素を利用したものです。
使われる麦芽もモルトウィスキーのそれとは違っていて、ピートで燻して発芽を止めるという工程を行っていない麦芽が使用されます。
さらに、ここで使用される大麦のほとんどはスコットランド産ではありません。
③発酵(ファーメンテーション)
②により得られた糖化液(ワート)を濾過、冷却してこれにイースト菌(酵母)を加えて発酵をさせるという点では、モルトウィスキーの工程と変わるところはありません。
モルトウィスキー造りと異なる点は「発酵槽」で、モルトウィスキーの発酵槽の多くが木製であるのに対し、グレーンウィスキーの発酵槽は全てステンレス製で、その大きさも巨大なものです。
グレーンウィスキーの多くが大量生産であるため、それに伴い発酵タンクも自然と大型化していったという訳ですね。
④蒸留(ディスティレーション)
発酵液である醪(ウオッシュ)を蒸留機に移し替えて蒸留が始まります。
「蒸留」という工程やメカニズム自体は、モルトウィスキーの蒸留と何ら変わるところはありませんが、蒸留機が「単式蒸留器」ではなく「連続式蒸留機」になります。
「連続式蒸留機」が発明されたのは19世紀に入ってからで、「伝統的な単式蒸留器」に対して、「近代的な連続式蒸留機」と表現されるのはこのためです。
短期間に大量にスピリッツの生産が可能であり、また費用的にも安く済み、かつ蒸留機の操作に熟練の技も必要とされないことから、お酒造りの世界に一気に広まっていきました。
ただし欠点もあり、ポットスチルで蒸留されたモルトウィスキーのように、複雑で精妙な香味やコクを出すことは困難です。
モルトウィスキーとグレーンウィスキーが、お互いの長所や短所を補完し合うことで、スコッチは「世界に冠たるウィスキー」と賞賛されるようになっていきました。
⑤熟成(マチュレーション)
蒸留が終わったグレーンウィスキーは、やはりモルトウィスキー同様、樽に入れられて熟成に入ります。
一般的に、グレーンウィスキーはモルトウィスキーよりも熟成が早いと言われていますが、最低でも3年間の樽熟成を経なければならないという点は、モルトウィスキーと同様です。
モルトウィスキーの熟成との相違点は、熟成に使われる樽にあります。
モルトウィスキーの熟成に使われる樽は、多くがシェリー樽やバーボン樽であるのに対し、グレーンウィスキーの熟成に使われる樽は、そのほとんどが「ウィスキー樽」を再利用、あるいは再々利用したものです。
これは、グレーンウィスキーが、もともと樽による変化をあまり求められていないからだと言われています。
⑥瓶詰め(ボトリング)
グレーンウィスキーのほとんどは、ブレンデッドウィスキーの原酒として使われます。
グレーンウィスキー単体でボトリングされることが少ないで、単一の蒸留所で造られたグレーンウィスキーも少数ですが存在しています。
これらのウィスキーが市場にでることも希にあります。
これらのグレーンウィスキーは、「シングル・グレーンウィスキー」と呼ばれていて、これらを好むスコッチファンもいます。
発売者の区分
蒸留所から直接リリースされるウィスキーは「オフィシャルボトル」と呼ばれます。
一方、業者が各蒸留所から原酒を買い付け、独自の解釈で樽熟成をさせて瓶詰めを行って、売り出されるウィスキーは「ボトラーズ・ブランド」※と呼ばれます。
有名なボトラーズブランドは、「ゴードン&マクファイル」「ウィリアム・ケーデンヘッド」「シグナトリー」ダグラス・レイン」「アデルフィー」「マーレイ・マクダヴィッド」「ブラッカダー」「ハート・ブラザーズ」「キングスバリー」「ジェームス・マッカーサー」などがあります。
※「独立系瓶詰め業者」「ネゴシアン」などと言われることもあります。
■スコッチ・モルト・ウィスキー・ソサイエティ(SMWS)
上記のボトラーズ・ブランドとはやや性格が異なり、1983年にエジンバラで誕生した会員制クラブ(協会)です。
この協会が、蒸留所から樽を買い付けて、独自の解釈でウィスキーを販売しているのですが、会費を払って会員になれば、誰でもこのボトルを購入できます。
市販のウィスキーとの違いは、他の樽とのミックスは行わず、かつ樽から原酒のままの度数でボトリング(ノン・チルフィルター)されるという点です。
生産者の区分
区分にもいくつかの分け方がありますが、最も一般的な6区分を下記にご紹介します。
①ハイランドモルト
ブリテン島の北部一帯で作られるモルトです。
この地域にモルト蒸留所が約40ほどありますが、ハイランド地区は非常に広範囲に及び、この地区の特徴をひとくくりにすることは困難です。
そのため、現在ではこのハイラント地区をさらに東西南北の4つのエリアに細分化し、その特徴を語ることが多くなっています。
②スペイサイドモルト
このスペイサイドは、エリア的には①のハイランド地方に含まれます。
このスペイ川流域には、スコットランドの全蒸留所の約半数近い50程の蒸留所が集中しているということもあって、ハイランドモルトとスペイサイドモルトを分けて区分することが一般的になっています。
③アイラモルト
アイラ島で作られるモルトです。
数こそそれほど多くはないものの、その際だった個性で知られていて、「スモーキー、潮の香り、ヨード臭」といった、他の地区ではあまり見られない特徴があります。
好き嫌いははっきりわかれますが、一度はまるとクセになる味わいに、熱狂的なファンの多い地区ですね。
かつては日本語で「アイレイ」と表記・発音されていましたが、今では現地での発音「アイラ」に統一されています。
④キャンベルタウンモルト
キャンベルタウンはキンタイア半島の先端にある地区で、アイルランドにほど近いエリアです。
かつてはこの狭い地区に数十もの蒸留所が密集していたと言われますが、いまではスプリングバンク、グレンスコシアの2つの蒸留所を残すのみになっています。
⑤ローランドモルト
ローランドは、ハイランドとイングランドの間にあるエリアです。
ここもキャンベルタウン同様、かつてはたくさんの蒸留所がありましたが、今では10蒸留所程度にまで減ってしまっています。
その中でも、現在も操業中の蒸留所は限られていて、休業中の蒸留所のモルトについては、ファン垂涎の幻のアイテムとなっています。
⑥アイランズモルト
アイラ島以外の島で作られるモルトがここに分類されていて、現在は7つの蒸留所があります。
オークニー諸島、アラン島、スカイ島、マル島、ジュラ島、ルイス島で、それぞれハイランドパーク、スキャパ、アラン、タリスカー、トバモリー、アイルオブジュラ、アビンジャラクというウィスキーを作っています。
こちらもそれぞれの島ごとに個性が違うので、一律にこういう味わいだと断定することはできないですね。
ウイスキーの飲み方について
当たり前ですが、ウィスキーの飲み方にルールはありません。
自分の好きなように飲めばいいのですが、やはりウィスキーによっては向いている飲み方とそうでない飲み方があります。
以下に主な飲み方をご紹介します。
●ストレート
ウィスキーに水などを入れず、そのまま飲む飲み方です。
スコッチでは「ニート(neat)」とも呼びます。
「ニート」はもともとラテン語の「ニテーレ」からきていて「煌めく」「輝く」というような意味をもっていて、ここから「濁りけのない」という意味合いを持つようになったと言われています。
ただ、始まりはスコッチではなく、ワインに甘味料などの副材料を加えて飲むことが普通だった時代に、敢えて何も加えずに飲むことを「ニート」と呼んだそうです。
一方、「ストレート」という表現が使われ出したのは19世紀半ばころのアメリカだと言われていて、バーボンをそのまま飲むことを「ストレート」と表現していたようです。
「ニート」にしろ「ストレート」にしろ、当時のお酒は混ぜ物をすることが当たり前だったことを物語っていて、それだけ粗悪な品質だったことの裏返しでもあります。
ちなみに日本では「生(き)で飲む」という言い方をすることもありますね。
最近のウィスキーは品質も格段に向上しているので「ストレート」はお勧めの飲み方の一つです。
特に18年熟成といったプレミアムクラスのウィスキーは、まずはストレートで味わうことをお勧めします。
また、ちょっと変わったストレートの飲み方として「パーシャル」※もあります。
どちらかというとスピリッツ類で一般的な飲み方ですが、ウィスキーでやってもまろやかで飲みやすくなります。
アルコールの鼻につくような匂いが苦手な方にはお勧めのストレートの飲み方です。
とはいってもストレートは度数も強く、「チェイサー」※を一緒に用意して少しずつ時間をかけて飲むのが基本です。
ちなみにスコッチの本番スコットランドでは、スコッチのチェイサーにビールを飲む人も多く、この飲み方を「L.G=レイバードギルド=労働組合」と呼ぶそうです。
なぜ労働組合なのか・・・?もしかしたら、「スコッチ=会社」を「ビール=労働組合」が常に牽制している、という意味合いがあるのかもしれませんが、面白い表現ですね。
※「パーシャル」の詳細については、「お酒基本」のページをご参照ください。
※「チェイサー」の詳細については、「お酒基本」のページをご参照ください。
●ロック(オン・ザ・ロック)
大きめのグラスに大きな氷(丸氷)を入れて、そこにウィスキーを注いで飲むスタイルです。
ストレートではやや強すぎる、でもスコッチの風味はしっかりと味わいたいという向きにはお勧めの飲み方です。
丸氷は角がほとんどないため、氷が溶けるまでに時間がかかります。
その間に徐々にウィスキーに水が染み込んでいき、ゆっくりとアルコール度数が下がっていきます。
その味わいの変化を楽しむというのも「ロック」という飲み方の醍醐味ですね。
バーで男性がウィスキーをロックで飲っていると、何となくダンディズムが感じられて格好良く感じてしまいます(笑)。
通常はチェイサーはつきませんが、もちろんお好みで注文しても構いません。
冷凍庫でキンキンに冷やした丸氷にウィスキーを注ぐと、「ピキピキ」という音をたててウィスキーが氷に染み込んでいくこともあり、ヴィジュアルだけでなく音でもお酒を楽しめます。
ちなみに「ロック=岩」で、氷を岩に見立てた飲み方ですが、この飲み方は20世紀入ってからアメリカで始まったと言われています。
その当時、氷自体が貴重な存在で製氷機が大衆化したのが比較的近年になってからだと考えると、これも当然なのかもしれませんね。
これも余談ですが、日本でロックを流行らせたのは、巨人軍の故水原茂さんだと言われています。
ちょっと気を付けていただきたい点は、欧米系のウィスキー好きの人には、「ウィスキーに氷を入れるのは野蛮な行為」として毛嫌いする人がいるということですね。
海外でウィスキーを飲むときにはちょっと注意したほうがいいかもしれません。
●ハーフ・ロック
上記の「オン・ザ・ロック」に水を入れた飲み方ですが、「トゥワイス・アップ」※に氷を入れた飲み方とも言えます。
より正確に言うと、氷を入れたロックグラスに対し、同量のウィスキーと同量のミネラルウォーターを注ぎます。
ミネラルウォーターを入れた分だけアルコール度数は下がり、かつ氷の溶けるスピードも早くなりますので、オン・ザ・ロックよりも更に飲みやすい飲み方です。
例えばそんなにお酒には強くないけれどもウィスキーの味わいを楽しみたい女性の方などにお勧めの飲み方ですね。
※「トゥワイス・アップ」については後述します。
●トゥワイス・アップ
ウィスキーと水を1対1の比率で入れて飲む飲み方です。
テイスティング・グラスで飲まれることが一般的ですが、なければワイングラスでも構いません。
使用する水はやはりミネラルウォーターがお勧めですが、そのウィスキーの仕込み水を使って割るという最高に贅沢な飲み方もあります。
(スコッチの場合、これは現地で飲むようなケースを除いてかなり難しい飲み方になりますが・・・。)
この「トゥワイス・アップ」という飲み方を知っている方は、かなりのウィスキー通と言えるでしょう。
というのも、ウィスキーのブレンダーがテイスティングの際に用いるのがこの「トゥワイス・アップ」という飲み方で、ウィスキー本来の香りと味わいが最もよく分かる飲み方だと言われているからです。
注意点としては、ミネラルウォーターは常温で使用するという点です。
冷やした水を使うと香りが立ちにくく、ぼやけた味わいになってしまいます。
この「トゥワイス・アップ」の変化技として、「加水」という飲み方もあります。
まずテイスティング・グラスなどにウィスキーをストレートで注ぎ、スポイトやストローなどを使ってミネラルウォーターを少しずつ足していきます。
ウィスキーの種類によっては、ある時点で劇的に香りや風味がよくなることがあり、これがそのウィスキーの最適なアルコール度数ということになります。
この飲み方は、カスク※もののウィスキーをテイスティングする際などにもよく使われる飲み方です。
※「カスク」については「ウィスキーの製法上の区分」の項目をご参照ください。
●水割り
少なくとも日本では、ハイボールと並んで馴染み深いウィスキーの飲み方が、「水割り」ですね。
ちょっと深めのタンブラーなどに氷とウィスキー、水だけで作る「水割り」ですが実は奥が深い飲み方です。
ウィスキー1に対して水は3から4が理想的と言われますが、もちろんお好みでもっと薄くしたりもっと濃くしても構いません。
水は水道水ではなくやはりミネラルウォーターが理想で、ミネラルウォーターも軟水から硬水まで自分の好みのタイプを探すのも一興です。
また、ミネラルウォーターはよく冷やしておくほうが氷が溶けにくく味がぼやけにくいと言われます。
かつて日本では「水割りはダサい」「美味しくない」と言われていた時期がありましたが、もちろんそんなことはありません。
美味しいウィスキーから作られる水割りはやはり水で割ってもしっかり風味が残っています。
またかつてはバーテンダーが最初に覚えるカクテルが「水割り」で、これがきちんとできるまで何ヶ月もずっと水割りを作らされたという話もあります。
今、あらためて注目したい飲み方が「水割り」ですね。
●ウィスキー・フロート
文字通りウィスキーを水に「浮かせる」飲み方です。
ウィスキーは水よりも比重が軽いため、この飲み方が可能になります。
作り方はタンブラーに氷を入れて水を注ぎます。
その上にウィスキーが混ざらないように静かにウィスキーを注いでいきます。
ウィスキーと水の比率は1対3から4ぐらいが一般的で、氷を入れないスタイルもあります。
この飲み方の面白いところは、飲み進むにつれて味わいが変化していく点にあります。
最初は浮いているウィスキーをそのまま飲むため、ほぼストレート。
次に氷のエリアに達するとオン・ザ・ロック。やがて氷と水が混ざり合う部分にまで飲み進むと水割り。
最後には水だけのチェイサー、というように素材同士を混ぜないためにエリアによって異なる味わいを楽しめます。
いわば、一つのグラスの中で様々なウィスキーの飲み方を飲み分けているということですね。
ちなみに氷を入れない場合は、ストレート→トゥワイス・アップ→水割り→チェイサーというように味わいが変わっていきます。
ウィスキーを水に浮かべるのに若干の技術が必要になりますが、スプーンなどの裏側を伝わせるようにしてウィスキーを注ぐと、グラスの上部に膜が張るようにきれいにウィスキーが浮かびます。
●ハイボール(ウィスキー・ソーダ、炭酸割り)
今、日本で空前のブームとなっている飲み方、それが「ハイボール」です。
「ハイボール」はウィスキーだけの飲み方ではなく、スピリッツ類も炭酸で割れば全て「ハイボール」になります。
従って「焼酎ハイボール」もあれば「バーボンハイボール」もあるという訳ですね。
ところがこのことを知らないお客さんが増えていて、BARでハイボールの注文が入った際、バーテンダーが「ベースは何にしますか?」と聞かれて「何のこと?」と答える人を多く見かけるようになりました。
ちなみにハイボールの言葉の由来ですが、下記のように様々な説があります。
・スコットランドのゴルフ場で、当時まだ珍しかったスコッチの炭酸割りを飲んでいたところに、高々と打ち上げられたボールが飛び込んできて、「これこそハイボールだ!」と叫んだという説。
・19世紀のアメリカの鉄道会社で、高い監視塔の上部に気球を吊るして、これが上がるとGOサインになり、この信号係がウィスキーソーダ割を好んで飲んでいたところから「ハイボール」と呼ぶようになったという説。
・グラスの中の炭酸(ソーダ)が上昇していく様をボールに見立てて「ハイボール」と呼ぶようになったという説。
美味しいハイボールの作りですが、まずタンブラーに氷を入れ、そこにウィスキーを注ぎます。
それからソーダを入れるわけですが、ここでなるべく氷にソーダが直接当たらないようグラスの縁から静かにソーダを注ぐことがコツになります。
こうすることでガスが液体の中にしっかりと残ることになります。そして最後、マドラーで下から上へ1回だけ混ぜる。
これもガスを残すためのポイントですね。
ちなみにこの「ハイボール」という呼び名は俗称で、正式には「ウィスキー・アンド・ソーダ・ウォーター」という呼び名になります。
余談になりますが、コナン・ドイルの原作による超有名な名探偵、「シャーロック・ホームズ」がベーカー街にある自室で好んで飲んでいたのがこの「ウィスキー・ソーダ」です。
「ハイボール」と呼ばず敢えて「ウィスキー・ソーダ」と言っていたというのが、実直なホームズのキャラクターを表していて面白いですね。
ホームズの熱狂的なファンを「シャーロキアン」と呼びますが、ファンの間でも好んで飲まれるのが「ウィスキー・ソーダ」だそうです。
ホームズの時代設定は19世紀末なので、ちょうどブレンデッドスコッチがロンドンの市場に出回り始めた時期と一致します。
また小説の設定では、わざわざ部屋の片隅に「炭酸水製造器」を置いてあるという凝りようです。
ホームズが何の銘柄のスコッチを飲んでいたのか、いろんな想像を巡らしながら飲むウィスキー・ソーダもまた格別ですね。(ちなみにモルト・ウィスキーが世の中に出始めたのが1960年代なので、モルトウィスキーを飲んでいたという可能性は低そうです。)
その一方で、あまりにも日本でのハイボール人気が過熱しすぎて、ジャパニーズ・ウィスキーの原酒が枯渇してしまったという笑えない事態も引き起こしました。
ジャパニーズ・ウィスキーだけがハイボールに適している訳ではなく、スコッチ・ウィスキーにもソーダ割で真価を発揮するような銘柄も数多くあります。
これからは我々自身の舌で、本当に炭酸割りに適したウィスキーを探してみる、といった行動も必要になってくるのかもしれませんね。
●スーパー・ハイボール
漫画「レモンハート」で紹介された新しいハイボールの楽しみ方で、ウィスキーファンにはこちらをより好む人も多いです。
この飲み方を楽しむには、スコッチに関する基本的な知識が必要で、まずブレンデッドウィスキーとモルトウィスキーの違いを理解していることが最低条件です。
加えて、一般的に世間でも知られているような著名なブレンデッドウィスキーの、主要モルト(キーモルト)がどのようなものであるのかを知っていなければなりません。
例を挙げますと、非常に有名なブレンデッドウィスキー「バランタイン」にはいくつかのキーモルトが含まれていて、具体的には「アードベッグ」や「オールド・プルトニー」、「グレンバーギ」などがそれにあたります(ラインナップによって使われるモルトは変わってきます)。
例えばバランタインを使ってハイボールを作り、その上に主要モルトをフロートさせて飲む飲み方が「スーパー・ハイボール」です。
ですから上記のバランタインの例で言えば、バランタインのハイボールにアードベッグを浮かせてもグレンバーギをトッピングしても、それらは全てバランタインの「スーパー・ハイボール」になります。
もちろん何のモルトを選ぶのかによって味わいは異なり、自分自身のお好みのモルトをチョイスして楽しむのがモルトスノッブの至福の時間という訳ですね。
作り方としては、ハイボールに加えてモルトウィスキーをフロートさせるというミックス手法です。
今日本では空前のハイボールブームですが、ただ単に酔っ払うためにハイボールを飲むことに飽きた方、1ランク上の感動的なハイボールを楽しみたい方に、ぜひお勧めしたい飲み方です!
●ミスト・スタイル
ロックグラスにクラッシュアイスを満たし、そこにウィスキーを注ぐスタイルです。
細かく砕かれた氷(クラッシュアイス)は、通常の氷よりも早く溶けていきます。
そのためウィスキーと氷が短時間で馴染み、グラスに水滴がついたら飲み頃です。
この水滴を霧に見立てて「ミストスタイル」と呼ばれます。
見た目が涼しげなので夏向きの一杯とも言えます。
ちなみにベースのをウィスキーをスコッチにすれば「スコッチ・ミスト」になりますが、これはスコットランド特有の霧雨のことを「スコッチ・ミスト」と呼び表したことに由来しています。
●お湯割り
意外に思われる方もいるかもしれませんが、ウィスキーをお湯で割る飲み方もあります。
同じ蒸留酒である焼酎などでは普通にお湯割りがあることを考えると、実はそれほど珍しいことではないのかもしれません。
特に寒い冬の日など、BARに入って最初の一杯はホットウィスキーが飲みたくなることがあります。
お湯割りを作る際の注意点ですが、まずはホットドリンク用のグラスを使用することです。
熱湯を使用するので持ち手がないと持てなかったり、薄いグラスだと割れる危険性もあります。
次にお湯の注ぎ方ですが、勢いよくお湯を注いでしまうとウィスキーの香りが飛んでしまうことがあります。
お湯はゆっくり注ぐのが基本です。また、「ホット・ウィスキー」という言葉ですが、実はいくつかの考え方があり決まった定義はありません。
「お湯割り」自体を「ホット・ウィスキー」と呼ぶ人もあれば、「お湯割り」にハチミツやスパイス、レモンなどを加えたカクテル様の飲み物を「ホット・ウィスキー」と呼ぶこともあり、更にはウィスキーを使った温かい飲み物の総称を「ホット・ウィスキー」と言うこともあり様々です。
ウィスキーの賢い飲み方として、もっと知られてもいい飲み方ですね。
●カクテルベースとして
ウィスキーは「ハードリカー」の代表格といってもよく、これを何かで割ることは「野蛮な行為」だと考える欧米の方々もいます。
もちろんプレミアム・ウィスキーなどの上等なものは、まずはストレートで飲むことをオススメしますが、数はそれほど多くはないものの、ウィスキーをベースにしたカクテルも存在します。
ウィスキーは苦手、という方が入門編としてウィスキーカクテルから入るというのは賢い飲み方なのかもしれませんね。
数は多くはないと書きましたが、スピリッツ類との比較での話で、バーテンダーに尋ねればいろんなウィスキーカクテルを紹介してくれると思います。
ぜひBARでウィスキーカクテルを楽しんでください!
上記にウィスキーのお勧めの飲み方をご紹介してきましたが、これらはもちろん、ウィスキーに特化した飲み方ではありません。
ブランデーや焼酎、その他の蒸留酒でも同様の飲み方で飲まれていて(一つの独立したカクテルとして名前がつけられている飲み方もあります)、それぞれベースとなるお酒によって味わいは異なります。
飲み方はそのまま固定して、ベースとなる蒸留酒を変えて味わいの違いを楽しむというのも面白いお酒の飲り方です!
その他
●バリンチ・ウィスキー
樽から直接ボトリングする蒸留所でしか買えないウイスキー、蒸溜所限定の樽出しウイスキーというものがあり、これを「バリンチ・ウィスキー」と呼びます。
「ハンドフィルド」あるいは「バリンチボトル」とも言います。
蒸留所で働く人が、樽からウィスキーを掬う際に使う長細い棒を「バリンチ」と呼び、そこから転じて「バリンチ・ウィスキー」と呼ばれるようになったようです。
「バリンチ」とは、「樽に開けられた穴からウイスキーを抽出するチューブ」という意味だそうです。
もともとは「蒸留所でしか飲めない貴重なウィスキー」というニュアンスが強かったようですが、最近は「バリンチ」という行為から想起されたのか、「他の蒸留所のウィスキーを混ぜ合せただけのジャパニーズ・ウィスキー」を指して「バリンチ・ウィスキー」と呼ぶケースも多くなっているようです。
この場合、多くは否定的なニュアンスで使われることが多いようですね。
※詳しくは「ジャパニーズ・ウィスキー」の項目をご参照ください。
●カラメル添加
スコッチは法律で「大麦麦芽を使って発酵・蒸留し、オークの古樽で3年以上熟成させ、アルコール度数40%以上で瓶詰めしたもの。
瓶詰めの際には、水とカラメルのみ添加してもいい。」と定められています。
このカラメル添加ですが、ウィスキーの味には影響を及ぼさないと言われていますが、より美味しそうに見せるためにカラーリングを行うケースがあります。
これは、チル・フィルタレーション同様、「できあがったウィスキーに何も手を加えないのが最上」とするウィスキーファンには歓迎されていない手法でもあります。
一時期、日本酒においても醸造用アルコール添加が許されるのかどうかという論争がありましたが、同じような事なのかもしれませんね。
これは個人の見解の問題なので、実際に飲み比べて判断するしかないのだと思います。
●並行輸入と正規輸入
スコッチはスコットランドのウィスキーですので、イギリスに旅行で行った際に現地で購入するなど以外では、輸入されたものを購入するしかありません(現在ではネットで直接購入することももちろん可能です)。
その際、製造元・販売元が直接正規の販売契約を結んで、輸入・販売しているものが「正規輸入品」、正規の販売契約業者以外の第三者が、海外から直接輸入してくるものを「並行輸入品」と呼びます。
その一番の違いですが、やはり値段でしょう。
正規輸入品は予め設定された値段で売られるので、値段の浮き沈みがありません。
例えばネットで販売されるような場合、人気があれば値段が高騰し、なければ下がるのが通常ですが、正規輸入品の場合そういうことはありません。
一時期、人気のあるスコッチなどが小売店ではとても高い値段で売られていましたが、逆に百貨店で定価で安く買えたようなこともありました。
また、正規輸入品は、輸送の際にきちんと品質管理を施した輸送手段をとるため、高品質のまま手元に届くという安心感があります。(お酒の場合はあまり関係ないですが、アフターフォローをしてくれるというメリットもありますね。)
もっと極端な場合、並行輸入品の場合、まがい物をつかまされてしまうといったケースもありえます。
値段の安さをとるのか、安心で高品質なものをとるのか、悩むところですね。
●エステル香
ウィスキーのテイスティングにも、ワインのような本格的なチャート(ノージング・サークル)があるのですが、ウィスキーの専門家のような人々以外には、ほとんど触れる機会がないと思います。
テイスティングは、自分が感じたことを言葉で表現すればいいだけですので、規則のようなものは基本的にないのですが、それでも覚えておくと便利な単語があり、その一つがこの「エステル香」です。
「エステル」とは化合物の一種で、ウィスキーの中にある「脂肪酸」とアルコールが反応して生じるものです。
これ以上は高校の化学の授業のようになるので触れませんが、このエステル化という化学反応によって芳香成分が生じて、ウィスキーの味わいに果実のような香りをを与えます。
「エステル香」「エステリー」という表現は、ウィスキーのテイスティングにおいては総じてプラスの印象を表す際に使われることが多く、覚えておいて損はありません。
●南極大陸のウィスキー
「南極大陸のウィスキー」といっても、南極で造られたウィスキーという意味ではありません。
「マッキンレー・レガシー」というブレンデッド・スコッチ・ウィスキーがありますが(現在でも販売されていて、日本でも入手可能なスコッチです)、こちらのスコッチは、1907年、アーネスト・シャクルトン卿率いる南極探検隊のオフィシャル・スコッチとして選ばれたことで有名な銘柄です。
これだけでも名誉なことですが、この探検から50年後、別の探検隊が氷の下からこのマッキンレー・レガシーを発見し、飲んでみたところ全く品質が変わってなかったことから、一躍このスコッチが脚光を浴びました。
さらに50年後の2006年、やはりある南極隊によって約100年前のマッキンレー・レガシーが発掘されて話題になりました。
残念ながら現代では、南極から物を持ち出すことは禁止されていて、われわれがこれを味わうことはできませんが、南極の気候から想像すると、100年前のウィスキーであっても品質は劣化していないのではないかと思われます。
100年前のウィスキー・・・一体どんな味がするのか、一生に一度でいいから飲んでみたいですね。