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【スピリッツ】ウォッカ

概要

 

「ウオッカと言えば無味無臭でアルコール度数の強いお酒」「極寒の地域で身体を温めるために飲むお酒」「ロシアの地酒」などなど・・・。

人によって様々なイメージを持っているかと思いますが、上記のようなイメージの全てが正解であって、なおかつこれ以外にも様々な実態を持つお酒、それが「ウオッカ(Vodka)」です。

例えば一例を紹介しますと、「ロシア(旧ソビエト連邦)の地酒」というイメージが、かなりの比率の方々にすり込まれていると思いますが、現在では世界各国で生産・消費されています。

またその飲み方も、ストレート一辺倒という訳ではなく、どちらかというとカクテルのベースのスピリッツとして飲まれることが多いように思います。

もっと極端に言えば、BARでウオッカなしにカクテルを作ることは、もはや不可能に近くなっていると言っても過言ではありません。

さらに日本での身近な例を挙げれば、みなさんもよくコンビニで目にする「缶チューハイ」のベースとして、盛んに用いられているお酒がこの「ウオッカ」です。

それほど世界各国で愛されているウオッカですが、まずはその歴史から触れていきたいと思います。

 


 

ウオッカの起源について

 

ウオッカの起源は定かではありませんが、一説によるとウオッカは、12世紀頃からロシアで飲まれるようになったと言われています。

もともとロシアの農民が、地酒として飲み始めたお酒がウオッカだったということですが、当時のウオッカは現在のような穀物の原料ではなく、ハチミツが原料だったとも言われています。

さらにウオッカ発祥の地にも異説があり、11世紀頃にはすでに現在のポーランドで飲まれていたという説もあり、いまだにこれだという定説はありません。

そしてこの「ウオッカ」という言葉の意味ですが、ロシア語で「命の水」を表す、「ジーズナヤ・ヴァダー」から来ていると言われています。

「ジーズナヤ」が「命の」、「ヴァダー」が「水」という意味ですね。

この水を意味する「ヴァダー」の愛称形が「ウオッカ」で、敢えて日本語に意訳すると「可愛い(ちっちゃな)お水ちゃん」とでも言うような意味になります。

またこの「ウオッカ」という発音も各国で微妙に異なっていて、「ウオトカ」や「ヴォトカ」「ウオツカ」「ウォツカ」などと様々に表記されます。

最近では原語発音に近い「ヴォトカ」や「ウォツカ」などに修正される傾向にありますが、日本では慣用的に「ウオッカ」と表記することが多く、ここでもこの表記を使わせていただきます。

蒸留酒を指して「命の水」という表現は、もともと錬金術師が使っていたもので、世界各国の様々なお酒の名称ともなっています。

そういった意味では、このウオッカの始まりも錬金術の恩恵を受けたであろうことは、間違いないようです。

さらに時は下り、この「ウオッカ」という言葉が文献に現れたのは16世紀、イワン雷帝の時代あたりだと言われています。

このころになるとハチミツの蒸留酒ではなく、ライ麦や大麦、小麦やとうもろこしやジャガイモなどの様々な原料が欧米からもたらされるようになり、原料に様々な穀物を使用する現在の「ウオッカ」の原形が出来上がりました。

そして1810年、サンクトペテルブルグの薬剤師、アンドレイ・アルバーノフが「活性炭による濾過方法」※を開発しました。

この技法をウオッカ製造に取り入れたのが「スミノフ・ウオッカ」の生みの親である「ピョートル・スミノフ」その人で、以降のウオッカ製造には「炭素濾過」という工程が定着していくことになります。

これにより、ウオッカ最大の特徴である「クリアな酒質」が生み出されることになりました。

※「活性炭による濾過方法」の詳細については、「ウオッカ製法」の項目でご説明します。

やがて19世紀後半になると、連続式蒸留機※が発明され、蒸留精度が高まったことからさらに無色・無味・無臭のクリアな原酒の製造が可能になりました。

※「連続式蒸留機」の詳細については、「お酒の基本」のページをご参照ください。

ウオッカが初めて世界の表舞台に姿を現したのは、1917年の「ロシア革命」により亡命した「ウラジーミル・スミノフ」が、パリで小規模なウオッカ製造を始めたことだと言われています。

その後もロシアからの亡命者は相次ぎ、彼らによってウオッカ造りは、アメリカやヨーロッパに広まっていきました。

そして第二次世界大戦後、ウオッカは世界各地で造られるようになっていきます。

この無味無臭でクリアな酒質は、世界各国で受け入れられるようになり、カクテル造りには欠かせない、「定番スピリッツ」として成長していきました。

 


 

ウォッカの作り方

 

ウオッカは後述するように、ありとあらゆる原料から造られる蒸留酒です。

そのため、原料によっては製法に違いがあり、その全てを網羅するのは難しいのですが、ここでは最も一般的な「穀物を原料としたウオッカ」(グレーン・スピリッツ)の造り方を見ていきたいと思います。

 


 

①蒸煮

ウオッカの原料となる穀物類は、大麦・小麦・ライ麦・とうもろこしやジャガイモなど、様々なものがあります。

これらの原料となる穀物類を大きな釜に入れて、蒸気圧で蒸し煮をして穀物内のデンプン質を破砕し、お粥状の状態を造ります。

 


 

②糖化

①で粥状になった原料に対して、さらに大麦麦芽とお湯を加えて、グツグツとこれを煮ることで「糖化」を始めます。

グレーン・スピリッツにおける「糖化」は、大麦麦芽の酵素を利用したもので、ドロドロにお粥状になったデンプンを、酵素の力で糖分に変換します。

 


 

③発酵

②で十分に糖分が蓄えられた段階で、この液体をフィルターにかけた上で「酵母」を加えます。

「酵母」は糖分が大好物なので、これを食べてアルコールと炭酸ガスを発生させます。

これがいわゆる「アルコール発酵」という化学反応で、この過程で、アルコール度数はそれほど高くないものの、液体中にアルコールを含んだ状態が出来上がります。

この状態の発酵液を「醪(もろみ)」と呼んでいます。

これらの呼び方は、他のお酒造りの工程における呼称と共通していますね。

 


 

④蒸留

できあがった醪に対して、熱を加えてアルコール成分と水分・雑味成分を分離させます。

この化学反応を「蒸留」※と呼びます。この蒸留の方式には、大きく分けて2種類あり、1つが「単式蒸留」※、もう一つが「連続式蒸留」※です。

ウオッカを製造する際には、後者の「連続式蒸留機」※を使っている蒸留所がほとんどで、こちらの方式のほうがより効率的にアルコール成分を採取できると言われています。

※「蒸留」「単式蒸留」「連続式蒸留」などの詳細の説明については、「お酒基本」のページをご参照ください。

このようにして得られたアルコールは、度数が95%以上にも達していて、これをベースにしてウオッカは造られていきます。

ちなみにこの状態の蒸留酒のことを、「グレーン・スピリッツ」と呼んでいます。

 


■ロシアウオッカ

これまでご説明してきたウオッカ造りの工程は、ロシアウオッカにおいても大きな違いはありません。

ただ、ロシアにおけるエチルアルコールの製造は、国家が管理する蒸留所で行なわれています。

また、蒸留により出来上がったアルコールに対して、ロシア独自の国家規格により3つに分類をしていて、それが「リュクス」「エクストラ」「上精製」と呼ばれる等級です。

これは、フーゼル油※の濃度と蒸留回数により決められる等級で、必ずしも高級なウオッカに「リュクス」のランクが使われるということではありません。

また、各ウオッカのメーカー全てが、これらの工程を経ている訳ではなく、メーカーによっては、ある蒸留所からグレーン・スピリッツを買い付けて、独自の解釈を加えてウオッカとして売り出されているブランドもあります。

このあたりはコニャックにおける「ネゴシアン」※と似ていますね。

なお、ロシア産のウオッカのほとんどは、度数40度に調整されています。

※「ネゴシアン」の詳細の説明については、ブランデーのページをご参照ください。

 


※「フーゼル油(ふーぜるゆ)」について

「フーゼル油」とは、アルコール発酵の際に副産物として生じる成分で、多くは黄褐色で油状の液体です。

やや特異な香りを発することもあり、ウィスキーや焼酎、日本酒やワインにも同様に発生します。

ちょっと専門的になりますが、主成分としては「イソアミルアルコール」「イソブチルアルコール」などがあり、「高級アルコール成分」とも呼ばれます。

お酒の香気成分として重要な要素となる反面、逆にクセのある匂いが、お酒の味わいのマイナス要因となることもあります。

焼酎造りにおいては、この「フーゼル油」を敢えて残すことで旨み成分を抽出している蔵元もあり、この「フーゼル油」の扱い方が、お酒の味わいを決める要素の1つになっているとも言えますね。

※「フーゼル油」については、合わせて焼酎のページもご参照ください。

 


●ロシア3大ウオッカ

その品質の高さから、下記の3銘柄のロシアウオッカは、「ロシア3大ウオッカ」と呼ばれて長期にわたって人気を博しています。

すでに国家としては存在していない「旧ソビエト連邦」ですが、当然ソ連の時代にもウオッカは生産されていました。

旧ソビエト時代、海外にソビエト産のウオッカを輸出する際には、すべて「全ソ食料品輸出入公団(サユーズブロドインポルト)」を通して行なわれていました。

その公団が、ソビエトのウオッカの「3大優良銘柄」として折り紙付きの品質を保証したのが「ストリチナヤ」「モスコフスカヤ」「ストロワヤ」です。

つまり、ソビエト連邦がなくなり、時代が変わってもその品質の高さが愛され続けているのが「ロシア3大ウオッカ」ということですね。

ウオッカは他のスピリッツ類に比べても、比較的安価な値段のものが多いので、もしこれらを見かけることがあれば、ぜひ一度その味わいを試してみてください!

 

 


・「ストリチナヤ」

ロシア語で「首都の」を意味する言葉です。

文字通りロシアの首都モスクワで造られているウオッカです。

生粋のロシアウオッカと言ってもいいでしょう。

飲み口はソフトでデリケート、世界の食通には「ストリチナヤをボトルごとパーシャル※にして、これを飲みながらキャビアをつまむのが最高!」という人もいるのだとか。

ちなみにロシア語での厳密な発音は「スタリーチナヤ」が近いそうです。

※「パーシャル」の詳細については、「お酒基本」のページをご参照ください。

 


・「モスコフスカヤ」

ロシア語で「モスクワの」を意味する言葉です。

3大ウオッカの中では最も辛口だと言われていて、そのキリッとした味わいには定評があります。

ロシア語での厳密な発音は「マスコフスカヤ」が近いそうです。

 


・「ストロワヤ」

ロシア語で「食卓の」「食事の」を意味する言葉です。

透明度世界一とも言われるバイカル湖のほとりにある蒸留所で造られています。

その土地柄に起因しているのか酒質も澄み切っていて、かすかにレモンやオレンジのフレーバーも感じられます。

その名の通り、豪華な「食卓」を演出するのにピッタリの一本です。

度数が50度あるのも、ロシアウオッカには珍しいですね。

因みにロシア語での厳密な発音は「スタローヴァヤ」が近いそうです。

 


 

⑤度数調整(加水)

上述したように、できあがったグレーン・スピリッツは95%以上もあり、これをそのままお酒として飲用するにはアルコール度数が高すぎます。

そのため、水を加えてアルコール度数を調整するのですが、だいたいはアルコール度数40%から60%程度にまで度数を落とします。

もちろん極めてアルコール度数の強いウオッカもあります。

加水に使う水については、蒸留所でも使っている天然水を使うところもあれば、精製水を使うところもあり、メーカーによって様々です。

 


⑥香料添加※

こちらの工程は、工程そのものが省かれているウオッカも多く存在します。

ウオッカの種類※にも関わってくるのですが、「フレーバードウオッカ」※と呼ばれるウオッカにある工程です。

様々な果実や香料、あるいは薬草などのエキスやエッセンスを加えるのですが、この工程そのものの順序が前後することがあります。

ここでは「ウオッカの種類によっては、様々な香料を添加する工程がある」というぐらいに留めていただければ、と思います。

※「ウオッカの種類」「フレーバードウオッカ」の詳細については、後述します。

 


⑦活性炭濾過

この「濾過」という工程が、ウオッカ造りにおいて最も重要かつ特徴的なプロセスで、ウオッカを個性的たらしめている製法になります。

ウオッカ製造の「濾過」に用いられるのは、伝統的で標準的な木材としては白樺(シラカバ)、あるいは椰子(ヤシ)などを焼いた「活性炭」です。

この「活性炭」に使用する木材にも各メーカーによって違いがあり、新品の木炭とそうでない木炭を使い分けたり、濾過のやり方や回数などにより最終的な味わいに違いが出てきます。

一般的なメーカーでは活性炭に白樺を用いることが多いです。

この活性炭を⑤で得たスピリッツと一緒に濾過塔に入れます。

濾過が進む過程で、アルコールに溶けにくい不純物が活性炭に付着し、液体の純度は増していきます。

つまり、活性炭と液体の接触時間が長ければ長いほど、あるいは濾過の回数が多ければ多いほど液体の純度は高くなっていくということです。

濾過材に何を使うのかと言うことも、各メーカーごとにノウハウがありますが、濾過層の厚さや濾過塔の通過速度などによっても味わいに差が出てくることがあり、濾過に関わる方法全てに各メーカーのテクニックが現れます。

また白樺には別の効用もあり、白樺の活性炭には味わい成分である「アルカリイオン」が含まれていて、これが液体に溶け出してアルコールと水の結合を促すことで、まろやかな味わいを生み出すと言われています。

さらに、白樺に含まれている糖分が除臭効果を高め、加えて軽やかな芳香を生み出す作用もあると言われます。

さらに液体を冷却し、これを再度濾過することにより、液体に含まれる「フーゼル油」などの油分※が取り除かれ、ウオッカの特長をである無味・無臭・無色でクリアな液体となっていきます。

※「フーゼル油」については、前述の項目をご参照ください。

ウオッカの身上は「クリスタル・クリア」なその酒質にあり、いかにして原料由来の匂いを取り除くかが、ウオッカの味わいの良し悪しを決めるキーポイントになってきます。

「活性炭濾過」が、ウオッカ製造の決め手となると言われる所以は、このためです。

 


・貯蔵

ウオッカはクセのないクリアな酒質が特徴で、その長所活かすために、他のスピリッツのように木樽で熟成させて樽香をつけるということは行ないません。

余計な香りを付けないために、ステンレスタンクで極短期間だけ貯蔵し、品質が安定した段階で、早期に瓶詰めされて出荷されます。

 


⑧瓶詰め(ボトリング)

上記のような工程を経たウオッカは、瓶詰めされて出荷されます。

ウオッカの身上はクリアな酒質にあると書きましたが、全くの無味無臭という訳ではありません。

ライトな酒質の中にも、原料由来の微妙な香りや甘みが感じられ、逆に言えばこれら微かな原料の存在を嗅ぎ取りながら飲むのが、ウオッカというお酒の楽しみ方なのかもしれませんね。

 


 

ウォッカの原材料について

 

ウオッカの原料は、ライ麦・大麦・小麦やとうもろこしなどの穀物類がほとんどですが、基本的に原料は何でもいいことになっています。

従ってウオッカに使われる原料は驚くほど多種多様で、おそらく全ての酒類の中でも最もバラエティに富んだ原料が使われていると思われます。

これまでウオッカの原料として使われてきたものを下記に列挙してみます。

大麦/小麦/ライ麦/とうもろこし/じゃがいも/ぶどう/ハチミツ/ミルク

固小麦(カベット)/六条大麦/山ライ麦/ビート(サトウダイコン)

モラセス(糖蜜)/スモモ・・・

 

次に副原料として加えられる香辛料やハーブ、草根木皮類やフルーツ等のフレーバード※を列挙してみます(一部お酒も含みます)。

レモン/オレンジ/パイナップル/スイカ/パッションフルーツ/マヌカハニー

フェイジョワ/キウイ/カシス/マンダリン/バニラ/シトラス/ブルーベリー

ハチミツ/赤・青唐辛子/ズブロッカ草/サソリ/オークチップ/ライム・フラワー

乳酸/果糖/ピーチ/生姜(ジンジャー)/クランベリー/アンジェリカ

ナツメグ/コリアンダー/アップル/パプリカ/サクランボ/シラカバ

ナッツ/ジュニパーベリー/ブランデー/クローヴ/ポートワイン/パプリカ

ブラックカテチュー・・・

これら以外の穀物類やフルーツなどの副材料からも作られていて、これらの組み合わせを考えると、多様性という点では群を抜くお酒がウオッカだと言えるでしょう。

※「フレーバードウオッカ」については後述します。


 

ウォッカの種類について

 

ウオッカには大きく分けて2種類があります。

1つは全く香味成分などを加えずに造られたウオッカ。

もうちょっと詳しく言うと、上述した「ウオッカの作り方について」の工程で、⑥の「香料添加」を行っていないウオッカです。

もう一つは、無色透明なウオッカにフルーツやハーブ、香辛料などを漬け込んだり、人工甘味料を加えて作られる香りや味わいが豊かなウオッカ。

これは様々な手法で、⑥の「香料添加」が行なわれているウオッカです。

前者のウオッカを「ピュア・ウオッカ」「レギュラー・ウオッカ」「プレーン・ウオッカ」などと呼び、後者のウオッカを「フレーバード・ウオッカ」と言います。

「フレーバード・ウオッカ」は、主として北欧や東欧などで作られていて、特にポーランド産のフレーバード・ウオッカなどは有名です。

製造方法は大きく分けて2種類で、果実類や香辛料などをアルコールに浸漬(しんせき、しんし)※してから蒸留を行う方法と、後から香味成分や甘味料などのエッセンスを加える方法です。

製造方法や味わいを見ると、リキュール類と似通っていますが、フレーバード・ウオッカは一般的にアルコール度数がリキュールより高く、逆にエキス分※はリキュール類が高い点が主な相違点になります。

※「浸漬」の詳細については、「日本酒」のページをご参照ください。

※「エキス分」の詳細については、「リキュール」のページでご説明します。

 


●主なフレーバード・ウオッカ

ここでは数銘柄のみ、世界でも著名なフレーバード・ウオッカをご紹介します。

 

■ズブロッカ

ポーランド産のフレーバード・ウオッカで、おそらくは世界で最も有名で、また最も個性的なフレーバード・ウオッカだと思われます。

ボトルの中には1本の草が入っていて、この草は「ズブロッカ草(別名バイソングラス)」と呼ばれています。

その名の通り「ズブラ」と呼ばれる牛、「ヨーロッパバイソン」が好んで食べる薬草として知られていて、このヨーロッパバイソンは、現在ではわずか数百頭しか生息していないと言われています。

ヨーロッパバイソンが生息しているのは、ポーランド北東部に広がる「ヴィアウォヴィエジャ」という神秘的な森で、ヨーロッパで唯一太古の姿を残している森だと言われています。

手つかずの自然が残されたこの森は、1979年には世界自然遺産に登録され、一切の狩猟や殺虫剤の使用も禁止されていて、今でもこの森に足を踏み入れることが出来るのは、許可を得た者のみです。

この「バイソングラス」が自生しているのは、「ヴィアウォヴィエジャの森」の中でも限られたエリアだけでかつ栽培も困難なことから、「ポルモス・ビャウィストク社」というメーカーのみが唯一バイソングラスの使用を許されています。

原料は厳選されたライ麦を使用して3回の蒸留を行い、これに貴重なバイソングラスを漬け込んで「ズブロッカ」は作られます。

その味わいはまろやかで甘い香りがあり、よく「桜餅のような味」だと例えられます。

そのためなのか、日本人の味覚とは相性がよく、女性からの人気も高いフレーバード・ウオッカです。

またバイソングラスの効用からか、滋養強壮や精力増強にも効果があると言われ、ポーランドはもちろん、ヨーロッパ諸国で古くからこの説が信じられています。

英国の文豪、サマセット・モームが絶賛したお酒としても有名ですね。

日本でも簡単に入手可能で、値段的にも非常にお求めになりやすいウオッカです。

まだ飲まれたことがない方は、ぜひ一度チャレンジしてみてください!

因みに、ポーランド語の発音に近い表記は、「ジュブルフカ」だそうです。

 


■アブソルートウオッカ

スウェーデン産のウオッカで、こちらはラインナップが豊富なことでも知られていて、バニラ・カシス・シトロン・ペッパー・マンダリンなどのフレーバード・ウオッカを販売しています(通常のピュア・ウオッカもあります)。

良質の小麦と清冽な井戸水から造られるこのウオッカ、連続式蒸留機により不純物が一切感じられず、名前の通り「アブソルート(究極の)」に相応しい味わいです。

そのクリアな酒質から、特にアメリカで絶大な人気を誇っていて、各種のフレーバード・ウオッカにも、副材料由来の香りやエッセンスが感じられます。

上述の「ズブロッカ」に比べると幾分お値段は高めですが、それだけに「プレミアム・ウオッカ」※としての風格が感じられる1本となっています。

※「プレミアム・ウオッカ」については後述します。

 


 

プレミアム・ウォッカについて

 

近年、特に人気が高まっているのが「プレミアム・ウオッカ」です。

「プレミアム・ウオッカ」に明確な定義がある訳ではありませんが、原料と水にとことんこだわり、蒸留回数を増すことでよりピュアな味わいを追求したウオッカのことを一般的にそう呼びます。

当然、その品質へのこだわりの分だけ値段は高くなりますが、身体を温めることに主眼を置いたようなウオッカとは一線を画していて、ウオッカそのものの味わいをじっくりと楽しみたいウオッカファンから高い人気を博しています。

 


以下に世界各国の有名なプレミアム・ウオッカを列挙します。

・グレイグースフランス

「スーパー・プレミアム・ウオッカ」と銘打って、1997年に発売されたフランス産ウオッカです。

最高級の小麦と、コニャック地方やシャンパーニュ地方の「ライムストーン」から湧き出る天然水「ナチュラル・スプリング・ウォーター」のみを使用、蒸留は5段階に分けて行なわれます。

香り豊かでクリーミーな味わいで、1998年のビバレッジ・インスティテュート主催のブラインド・テイスティング・コンテストでは最高得点を獲得しました。

 


・ヴェルヴェデールポーランド

1996年に登場したポーランド産のウオッカで、こちらも「ラグジュアリー・ウオッカ」という位置づけです。

「ヴェルヴェデール」とはラテン語源で「美しい」という意味を持ち、その名の通り絹のように滑らかで洗練された味わいが楽しめます。

ポーランド産のライ麦を100%使用し、4回蒸留を行なうことでその純度が高められています。

 


・フィンランディアフィンランド

原料はフィンランド産の六条大麦を100%使用し、水は1万年以上の大昔から積み重なった「氷堆石」が天然のフィルターとなって染み出す天然氷河水で仕込まれるという贅沢なウオッカです。

200以上の工程を経て伝統的な蒸留法で丁寧に作られるフィンランディアは、清冽でピュアな酒質が持ち味です。

本格的なバーで、カクテルのベースとして使われることでも人気の高い商品です。

 


・アブソルートウオッカスウェーデン

こちらもプレミアム・ウオッカに位置づけられるウオッカですが、フレーバード・ウオッカの項目でご紹介しましたので、詳細は割愛させていただきます。

 


・42ビロウ・ウオッカニュージーランド

商品名の「42ビロウ」は、ニュージーランド北東部に位置するメーカーの所在地の緯度「南緯42度」と、このお酒のアルコール度数「42度」から付けられています。

2004年にはモンドセレクションで金賞を受賞したスーパー・プレミアム・ウオッカで、穏やかな香りの中にも微かにバニラや薬草などのエキスが感じられます。

 


・オルデスローエ・パーフェクト・ウオッカドイツ

商品名にもなっている「オルデスローエ」は、ドイツでフルーツ・ブランデーの生産者として有名な「A・エルンスト社」の一部門である「オルデスローエ社」からきています。

この会社はドイツ北部のオルデスローエで操業していて、原料はバルト海と北海に挟まれたドイツ北部産の小麦だけを使用し、その中でも選りすぐりの小麦のみを使って造られるプレミアム・ウオッカです。

原料の小麦由来の深いコクと香りがあり、贅沢な味わいのウオッカです。蒸留後、樽で熟成させることでも知られています。

 


・セブンサムライ・ウオッカカラチャイ・チェルケス共和国

「カラチャイ・チェルケス共和国」と聞いてピンとくる人は少ないと思いますが、ロシア連邦の西側、コーカサス山脈の北側に位置する7つの共和国のうちの一つが、カラチャイ・チェルケス共和国です。

商品名の「セブンサムライ」は、巨匠黒澤明監督作品の「7人の侍」からきています。

1987年の旧ソビエト連邦時代、このコーカサス地方で「7人の侍」が上映され、大変な人気を呼んだそうです。コーカサス地方はもともとコサック騎兵の故郷でもあり、この映画で描かれた侍魂に絶大な共感が寄せられたのだとか・・・。

カラチャイ・チェルケス共和国は、小国ながら新鮮な農作物と清涼な水で有名です。

この地方で生産された小麦を原料として、丁寧に濾過を行いスイカエキスを添加して作られることで、まろやかな口当たりとスムーズな喉ごし、ほんのりと甘い香りを兼ね備えたプレミアム・ウオッカが誕生しました。

 


・クレセント・ウオッカスイス

実は意外に思われる方も多いのではないかと思いますが、スイスでは第二次世界大戦時に政府によってウオッカの製造・販売が禁止され、これが1999年まで続いていました。

当時は原料の穀物を食料として確保するために始まりましたが、健康上の理由などからこれが現代まで継続されていたそうです。

けれど1999年、欧州連合(EU)の規定に合わせる形でスイス国内法の改定を実施、これにより2000年からスイス国内でのウオッカ製造が解禁されました。

こうして2000年に、スイス最大の酒造会社「ディヴィサ社」により法改正後スイスで初めて誕生したウオッカがこの「クレセント・ウオッカ」です。

原料は、スイスで伝統的に有機栽培されてきた山ライ麦を使用、使う水はアルプス山脈の氷河から流れ出る雪解け水で、蒸留はポットスチルとコラムスチル※の双方を組み合わせて複数回行なうという、非常に手間暇を掛けて造られるプレミアム・ウオッカです。

こうして作られた「クレセント・ウオッカ」の味わいは、自然な甘さとフルーティな飲み口を持ち、「目からうろこが落ちるような美味しさ」だと評されています。

「ポットスチル」「コラムスチル」の詳細については、「お酒基本」のページをご参照ください。

 


・スカイ・ウオッカアメリカ

アメリカ産のプレミアム・ウオッカ、「スカイ・ウオッカ」です。

ネーミングの「スカイ」とボトルの鮮やかなブルーは、アメリカ西海岸・カリフォルニアの澄んだ青空をイメージしてデザイン・つけられた名前だと言われています。

その製法は独特で、温度を調整しながら4回蒸留を行い、さらに3回もの濾過を実施します。

この製法により生み出されたスカイ・ウオッカは、ピュアでスムーズな味わいが特長で、地元のアメリカで特に人気の高いプレミアム・ウオッカです。

 


・サイレント・サムカナダ

カナダ産のウオッカで、プレミアム・ウオッカが人気となるかなり以前の、1990年代初頭に、「ウオッカの最高峰」と評判を呼んだのがこの「サイレント・サム」です。

原料はカナダ産の厳選された穀物と清らかな水を使用し、「パーキュレーター・フィルター」と呼ばれる独自技術のフィルターによって磨かれたウオッカは、透明感に満ちた傑作だと言われています。

そのスムーズな味わいからなのか、ボトルには「THEINVISIBLEVODKA=インヴィジブル・ウオッカ」の文字が刻まれていて、「見えないウオッカ」との異名も持っています。

その品質の高さを証明するように、あの有名な国際的食品コンクール、「モンド・セレクション」で5回の金賞を受賞していて、元祖「プレミアム・ウオッカ」と呼んでも過言ではありません。

商品名の「サイレント・サム」ですが、直訳すれば「静かなサム」ですが、BARのイメージに相応しいように意訳すれば、「寡黙な男」といったところでしょうか。

残念ながら現在日本では入手が困難で、ネット上では非常に高額で取引されている「コレクターズ・アイテム」※となってしまいました。

もし、古い酒屋さんなどで見かける機会があれば、ぜひ購入をオススメします!

※「コレクターズ・アイテム」については、「お酒基本」のページをご参照ください。

 


・シロックフランス

「ウオッカの原料」の欄でご説明したように、ウオッカの原料には何を使ってもいいものの、実際にはほとんどのメーカーでは穀物を原料として使うのが一般的です。

しかしながらこの「シロック」は、原料の全てをぶどうから作っているという変わり種のプレミアム・ウオッカです。

原料となるぶどう品種は2種類で、「ユニ・ブラン」と「モーザック・ブラン」です。

これらのぶどうは完熟に近い状態で収穫するために、ギリギリまで樹上に残されます。

さらにぶどうの純粋な鮮度と自然の芳香を残すために、低い気温の中で収穫(これを「霜摘み」といいます)されます。

こうして得られた貴重なぶどうは、ワイン製造技術者により確立された「低温製法(低温抽出・低温発酵・低温貯蔵)」により発酵液(もろみ)となります。

ここから蒸留工程に進むのですが、蒸留は合計で5回行なわれます。

最初の4回は、「モーザック・ブラン」と「ユニ・ブラン」をそれぞれ別の連続式蒸留機に入れて蒸留します。

その後これらのアルコールをブレンドし、最後に単式蒸留器(アルマニャック式半連続式蒸留器)で仕上げの蒸留を行ないます。

このようにしてこだわりの製法により造られる「シロック」は、口当たりは見事なまでに滑らかで、柑橘系の果実の風味や香りが漂う、すっきりとしたウオッカに仕上っています。

カクテルのベースに使ってももちろん美味しいですが、このウオッカの真の実力を味わうには、ストレートやロックがオススメです。

因みに商品名の「シロック」ですが、フランス語で「山の頂」を意味する「シーム」と、「岩」を意味する「ロッシェ」を合わせて造られた造語だと言われています。

ぶどうを原料にしたウオッカは非常に珍しいことは上述した通りですが、1980年代後半、アメリカでぶどう100%原料のウオッカ、「シルヴァラード」という銘柄が作られていました。

こちらも現在日本には輸入されておらず、上記の「サイレント・サム」同様、コレクターズ・アイテム※のウオッカとなっています。

 


以上主要なプレミアム・ウオッカの銘柄をご紹介してきましたが、上述の通りウオッカは世界各国で生産されているのが現状です。

しかもこれらの「プレミアム・ウオッカ」もそれぞれに個性や違いがあり、その違いを飲み比べるのもウオッカの醍醐味の一つです。世界各国のウオッカを飲みながら、その国々に思いを馳せる・・・。

かなり贅沢な飲み比べではありますが、一度は試してみたいですね。

また上記のようなプレミアム・ウオッカの一方で、穀物由来の味わいをダイレクトに感じたい、どちらかというと昔ながらのクセの強いウオッカを飲んでみたい、というファンも根強くいて、ウオッカのトレンドは二極化しているように思います。

こちらの古いタイプのウオッカは、プレミアム・ウオッカの対極に位置していて、敢えて単式蒸留器を使い、ウオッカの特徴である活性炭濾過をほとんど行なわず、素材の持ち味を活かす造り方をしているウオッカもあります。

ウオッカをいろいろ試してみたい人には、双方のウオッカを味わってみることをオススメします!

 


 

強いウォッカについて

 

前述したように、ウオッカと言えば「極寒の地で暖を取るために煽るように飲むお酒」のイメージが強い人も多いと思います。

それはそれで間違っていないのですが、実は意外とウオッカで世の中に出回っている商品は、それほどアルコール度数が高くなく、大体40度前後のものが主流です。

一方で、ものすごくアルコール度数が高いウオッカがあるのも事実で、80度から90度近いものもあります。

中でも「世界で最も強いお酒」として有名なのが、下記に説明する「スピリタス」です。

 


■スピリタスポーランド

ポーランド産のこのウオッカ、アルコール度数はなんと96度!もあります。

1985年前後までは、世界最強のお酒といえば、レモンハートやロンリコなどのラム(151プルーフ※バージョン、75.5度)でしたが、「スピリタス」が発売されてからは世界一強いお酒の座は入れ替わりました。

※「プルーフ」については、「お酒基本」のページをご参照ください。

厳選されたポーランド産のライ麦を主体とした穀物類を原料として、蒸留回数はなんと70数回にも及び、これによりアルコール度数は96度にまで引き上げられます。

地元のポーランドでは、このスピリタスはお酒として飲むという習慣はなく、古くから家庭でスピリタスに薬草や野生の果実などを漬け込み、自家製のフレーバード・ウオッカを作って楽しんだと言われています。

日本で言えば自家製の梅酒を作る感覚に近いかもしれないですね。

 


 

自家製フレーバード・ウオッカの造り方について

 

例えばこのスピリタスにレモンの皮と砂糖を加えると、南イタリアで食後酒として盛んに飲まれているリキュール「レモンチェッロ」が作れます。

その際の比率ですが、スピリタス1に対し、水やソーダなどが4、これにレモンの皮と砂糖を漬け込んでおけば、アルコール度数が高いため10日から1ヶ月程度で出来上がります。

他にもお好みの素材を使って、オリジナルのリキュールを楽しむことも可能です。

 


(ストレートで飲むときの注意点)

基本的にストレートはお勧めできません。

よくお酒の強さを競い合うような場で、このスピリタスをストレートで交互に飲むことがありますが、非常に危険です。あまりにもアルコール度数が強いため、グラスに口を近づけただけでむせかえり、舐めた瞬間に唇にシビレがきます。

あまりにもアルコール度数が高いため、グラスにスピリタスを放置したまま置いておいても、徐々に揮発してお酒は減っていきます。

96度もあると簡単に火がつくため、スピリタスの周辺は火気厳禁です。

物騒な話ですが簡単に火炎瓶になります。飲み方も含めて、用途には要注意のお酒がスピリタスです。

 


(スピリタスの上手な使い方)

上記で触れましたが、スピリタスを飲む際の注意点として「火気厳禁」が挙げられます。

火炎瓶としての使用などもっての外ですが、スピリタスの特性を活かして、下記のような平和な利用法もあります。

ブルースなどの演奏の際、一時期盛んに用いられていた「ボトルネック奏法」、空き瓶の首の部分を切り取って、これを小指にはめてアコースティックギターの弦を押さえながら、小指をスライドさせて弾く奏法が「ボトルネック奏法」です。

この奏法でギターを弾くと、いかにもブルースらしい郷愁を帯びた音色が広がります。

BARには空き瓶は事欠きませんが、これを切り取るとなると大掛かりな作業になってしまいます。

そんな時にスピリタスが置いてあれば、下記のような方法で簡単にボトルネックが作れます。

 


1.空き瓶の首の下(根元)の部分にタコ糸を巻く

2.寝かせた(横にした)ボトルのタコ糸にスピリタスを染み込ませる

3.火をつける

4.火が燃え尽きたらすぐにボトルを冷たい水の中に入れる

5.アイスピック※の柄の部分でボトルネックを軽く叩く

6.ボトルネックがポキンと折れて、出来上がり!

※「アイスピック」

BARで、氷を砕く道具。握り手の部分が太くて重くなっています。

 

 

上記のように、タコ糸以外の道具はほぼ確実にBARに置いてあるもので、必要があればいつでもボトルネックは作れます。

とても火がつきやすいスピリタスをタコ糸に染み込ませて火をつけ、燃え尽きると同時に冷たい水の中に入れるます。すると急激に冷やされたボトルネックにひびが入り、アイスピックで軽く叩くだけで簡単にボトルネックが折れるという理屈です。

なかなか賢いスピリタスの活用術ですね。


 

ウォッカの飲み方について

 

他のスピリッツ類同様、お酒の飲み方に決まりはありません。

自由に、自分の好きな飲み方で飲むのが一番なのですが、近年の傾向を見ていると、一番よく飲まれているウオッカの飲み方は、カクテルのベースとしての使われ方が多いように思います。

ウオッカベースのカクテルといえば、スタンダードカクテル※だけでも非常に多いです。

その中でも特にどのカクテルがというのは難しいですが、ハイボールブームにも触発される形で、最近は「炭酸割り」などが比較的多いようにも感じます。

ウオッカは他のスピリッツ類と比べてもクセが少なく、カクテルベースとして使うには相性のいいスピリッツです。

※「スタンダードカクテル」の詳細については、「お酒基本」のページをご参照ください。

一方で、ウオッカ発祥の地であるロシア(ポーランド説もありますが)で伝統的に飲まれてきた飲み方は「ストレート」ですね。

しかもロシア人の飲み方は、ウオッカをボトル毎冷凍庫に入れてとろみがついた状態で小さなグラスに注ぎ、これを一気に飲み干すというものです(いわるゆ「パーシャル」※ですね)。

このときグラスも一緒に冷凍庫に入れ、ウオッカとグラスをキンキンに冷えた状態にしておいて、グラスについた霜が消えないうちに飲み干すのがロシア流だそうです。

もともとロシアや東欧圏では、ウオッカを何かで割る(割り材)ことを「邪道」とする気質があることも影響しているのかもしれません。

※「パーシャル」の詳細については、「お酒基本」のページをご参照ください。

上記のような飲み方は、ウオッカそのものの風味や香り、味わいを楽しむには適している飲み方ですが、お酒に強い人でなければちょっとキツイかもしれませんね。

そういった方には、ちょっと大きめのグラスに大きな氷を一つ入れてロックスタイルで楽しむのもお勧めです。

ゆっくりと時間をかけてウオッカを飲むことで氷から水分が溶け出し、ウオッカのアルコールは薄められます。

この飲り方ならウオッカそのものの味わいを楽しみながら、心地よいほろ酔い気分を感じることが出来ます。

こうした飲み方は、上述したような「プレミアム・ウオッカ」に適しています。

ただ気をつけなければならない点は、「パーシャル」は飲みやすい反面、ウオッカの香りや風味が感じにくくなることもあるということです。

常温で飲むほうが香りや風味が立ちやすいこともあり、ウオッカの個性に応じて飲み方を変えたほうがいい場合もあります。

 


 

ウォッカの定義

 

これまで述べてきたように、ウオッカの原料や製法などに関して明確な定義はありません。

しかしながら国によっては明確な定義を持っているところもあり、従って国によって「ウオッカ」の定義が異なってくる場合もあります。

例えば、アメリカの場合のウオッカの定義はかなり細かく規定されていて、以下のように定められています。

「ウオッカは中性スピリッツである。原料はどのような種類のものでもよく、この原料を蒸留してアルコール分を95%以上にして、これを薄めて40~55%にする。これを規定の方法に従って香り・味わい・特殊性状をなくしたもの。」

また欧州連合(EU)でもウオッカの定義があり、以下のようなものです。

「農産物から得たエチルアルコールを活性炭濾過して、可能的刺激物を取り除いたもの。」

ちなみに日本はどうかというと、日本の酒税法上は「ウオッカ」という酒の分類は存在していません。

酒税法上の区分は「スピリッツ」がそれにあたりますが、世界的には蒸留酒を「スピリッツ」と呼ぶことを考えると、当然と言えば当然ですね。

日本の酒税法では、「単式蒸留焼酎・連続式蒸留焼酎・ウィスキー・ブランデー・原料用アルコールなどの製造条件を満たしていない蒸留酒がスピリッツ」ということになります。

酒税法上の区分として日本ではウオッカは存在しないのですが、他の国々と同様日本でもウオッカは生産されています。

従って敢えて定義を定めるとしたらグローバルスタンダード同様の定義で、「ライ麦や大麦、小麦やジャガイモなどの様々な素材を原料とした蒸留酒で、この原酒を白樺などの活性炭で濾過した、無色透明でほぼ無味無臭のスピリッツ」という感じになると思われます。

※酒税法上はウオッカの明確な定義はないと書きましたが、「焼酎」の製法を定める文言の中に、ウオッカやジンとの区別をするために「活性炭濾過」や「杜松の実の漬け込み」を禁止しているくだりがあります。

これらの詳細については、「焼酎」のページをご参照ください。

 


■「ウオッカ戦争」について

「戦争」というと悲惨な響きを与えてしまいますが、実際に血を流した戦争ではありません。

前述したEUのウオッカの定義に関する論争を「ウオッカ戦争」と呼び、この論争は2002年から2007年まで5年間続きました。

争点はまさに「ウオッカの定義」であり、「何をもってウオッカと呼ぶか」でした。ポーランドやスウェーデンなどは「穀物かジャガイモを原料として造られたスピリッツをウオッカと規定すべき」と主張しました。

これに対しイギリスやオランダなどは、「サトウキビやぶどうを原料とした蒸留酒もウオッカと認めるべき」として、両者の意見が対立しました。

5年にわたる議論の末にでた結論が上述のウオッカの定義です。

従ってEUの規定では、「穀物とジャガイモ以外の原料から造られたスピリッツでも、原料名を明記すればウオッカと呼んで構わない」となっています。

 


 

その他ウォッカについて

 

以下は、上述の項目で触れられなかったウオッカに関するもろもろの項目について、列挙していきたいと思います。

 

●ブレンヴィーン(ブレンヴィン)

広義の意味では、北欧諸国(スウェーデン、フィンランド、ノルウェーなど)でジャガイモや穀物類から造られる蒸留酒を指し、かつては木のセルロース(多糖類の炭水化物)から造られたものもあったそうです。

この分類方法に従えば、ウオッカや北欧の「アクアヴィット」※などもブレンヴィーンに含まれます。

※「アクアヴィット」については、別の項目でご紹介します。

「ブレンヴィーン」の名称ですが「焼いたワイン」を意味し、「ブランデー」の語源となったオランダ語「ブランデウェイン」と同様です。(ドイツ語では「ブラントヴァイン」と呼んでいました。)

上記で「広義の意味では」と記しましたが、もう少し詳しく見ると北欧諸国の中でも微妙に定義が異なっていて、下記にみていきます。

 


・EUの規定

EUの規定でウオッカを名乗るには、「アルコール度数の最高は95%まで、最低でもアルコール度数は37.5%なくてはならない」ことになっています。

これ以外のウオッカ様飲料、アルコール度数30%~38%で風味がついていない蒸留酒については、通常「ブレンヴィーン」あるいは「ヴィーナ」という商標になります。

 


・スウェーデン

スウェーデンでは15世紀ころから(現在でいうところの)ウオッカが生産されていました。

ただその当時は生産量も少なく、原材料が不足した際にはたびたび生産を中心していたこともあり、1950年代まではウオッカとして指定されておらず、その頃には代わりに「ブレンヴィーン」と呼ばれていたそうです。

1960年代に入って、現代のような無香料のスウェーデン産ブレンヴィーンを「ウオッカ」と呼ぶようになった経緯があります。

 


・フィンランド

フィンランドでは昔から、「ウオッカ」は他国産ウオッカであることを意味していて、国産のウオッカは「ヴィーナ」「ブレンヴィーン」と呼んでいました。

ただ前述したような国際的にも有名なプレミアム・ウオッカなどは、ウオッカとして輸出をしています。

 


・アイスランド

アイスランドでも上記のような「ブレンヴィーン」は作られていて、現地では「ブレニヴィーン」と呼ばれているそうです。

味わいや製法はデンマークやスウェーデンで造られる「アクアヴィット」※に似ているようですが、こちらはウオッカとは呼び表しません。

※「アクアヴィット」については、別の項目でご紹介します。

 


●スタルカ

主にロシアやポーランドで造られるフレーバード・ウオッカの一種です。

原料の主体となるのはライ麦などの穀物類で、これにリンゴやライム・梨の葉などを漬け込んで、これにポートワインやブランデーなどをブレンドします。

更には、これを木の樽に入れて熟成させ、5年間から長いものでは50年熟成という超熟ものもあります。(「スタルカ」というのは英語で「オールド」と同じ意味です。)

造り方にも由来するのですが、ウオッカらしいスッキリとした味わいとブランデーの深いコクや香りが同時に楽しめます。

造り方だけをみるとほぼリキュールそのものと言ってもいいのですが、慣例的にウオッカとして紹介されることが多いのでここで挙げさせてもらいました。

ソビエト連邦の時代から日本でも人気のある商品でしたが、ロシアからの対日輸出がストップしていた時期が長く続き、近年になってようやく入手可能になりました。

 


●スミノフ

ウオッカの発展にも大きく貢献した創業者、「ピョートル・アルセニエヴィチ・スミノフ(スミルノフとも)」が1815年に立ち上げたメーカーです。

1886年にはロシア皇室御用達の栄養を受け、現在でも世界ナンバーワンの販売量を誇っています。

創業者の子孫「ウラジーミル・スミノフ」がロシア革命によりフランスに亡命、ここからウオッカは世界的に知られていったのは前述した通りです。「世界で最も有名なウオッカ」といっても差し支えないでしょう。

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■ 原産国

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